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ラブロマンスはほどほどに  作者: れんじょう
ラブロマンスはほどほどに
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自主製作 第二十話

 「ここっ! ここ、覚えてる!」


 アオイの部屋に入るとすぐに見つけた姿見を背に立ち、じっくりと周りを見渡した瞳子は、子供時代に祖父母の家に行くたびに足を運んだ納戸の大きな絵の中にいることに感動を覚えた。


 「すご……い……すごい、すごいっ、すごいっっ!!」


 まるでロンドを踊っているかのようにくるくると回りながら、黒綺に抱きついた。


 「すごいよ、黒綺! ここはおじいちゃんの家で見た絵と同じなんだよ!」


 何が書いているかさっぱりわからない背表紙が並んだ本棚、不思議な形の窓、そしてあの大きな椅子。

 何もかもが祖父の家の納戸にあった、大きな絵と全く同じ配置でそこにあった。


 「あっ! じゃあ、あの絵は界渡りの姿見と同じだったってことかな?」


 「でもなんで絵が見えたんだろう?」と疑問がわいてきた。


 「絵が見えた?」

 

 不思議そうに黒綺が問うた。


 「うーん。 ……まあ、あれは絵ではなくて本当は鏡なんだってあとからおじいちゃんが言っていたけれど、でも小さかった私には絵だとしか思わなかったんだよ? だって鏡だったら自分がうつるけれど、全然違う場所がうつっていたからね」

 「それがここだと?」

 「そう! 本当に昔見たまんま。 全く同じ配置だし。 それがどうかした?」


 抱きついたまま黒綺を見上げると、難しい顔をして瞳子を見ていた。


 あれ?なんかそんなに変なこと言ったかな?


 「瞳子。 ちょっとここにいてくれるか」

 「え? うん、いいけど」

 「すまん。 すぐ戻る」


 黒綺は部屋の外に控えていた侍女に一言声をかけてから、何処かへといってしまった。

 手に何か携えてきた侍女は瞳子に話かけたが、瞳子の知る日本語でもかろうじてわかる英語でもないので、何を言っているかさっぱり分からない。

 侍女が何か言うたびに「?」と顔を傾げてしまっていてはさすがに侍女も言葉が通じないことを理解したようで、身振り手振りで続き部屋の寝室へと案内されて、手に持っていたものを渡された。


 「服?」


 じっと侍女を見ると、着替えてくださいと身振りで知らされたけれど、瞳子には今着ている会社の制服で不自由ないから「いらない」と顔を振って断ろうとした。

 それに祖父の寝室だったところで着替えるというのも、何か変な感じがした。

 すると、侍女は自分の長いスカート(らしいもの)を持ちあげて『足を見せるのはよくない』とジェスチャーで必死に訴えてきた。


 「スカートが短いから駄目ってことなんだろうなあ。 『郷に入れば郷に従え』だし、ま、いっか」


 にっこり笑って着替えることを伝えると、侍女は明らかにホッとした様子でそのまま着替えを手伝い始めた。


 ええっ?!

 なんでお手伝いされちゃうかなっ……って。 あ、着替え方知らないもんね、私。

 人に着替えを手伝ってもらうなんて、成人式の振袖を着つけてもらうとき以来かも。


 そう考えると羞恥が薄れて、どういう風に着るのかと興味も湧いてくる。

 けれど、慣れた手付きで次々と着つけていく侍女の手を見ながら、一人では絶対着れないと確信する。


 うわー、振袖よりも難しいんじゃ……?

 こっちの女の人ってこんなに幾重にも服を着てるんだ。

 洋服っていうよりは、着物とか韓国のチョゴリのような感じの派手やかな衣裳で好みなんだけど。

 冬場ならいいけど夏場にこれは絶対ダウンするよ。

 ってか、ここって四季があるのかも疑問だし。


 着つけが終わり、髪も結い上げられたころには、へとへとになっていた。

 

 うー。

 耐えれないかも。

 中世のヨーロッパみたくコルセットでぎゅうぎゅう、みたいなものはない分いいんだろうけれど、こう何枚も服を重ねられると……いったい何キロ?!って思う。

 こっちの人って実は鉄人かも。


 手をひかれて元の部屋に戻ると、納戸の絵の王子様が座っていた椅子に案内された。


 王子様の椅子。

 あれが絵じゃなくて現実なら、王子様も現実ってことなんだよねー。

 って???


 じゃああの王子様は一体……誰?


 「瞳子。 ……綺麗だ」


 リエンの王族が着る民族衣装を着つけている瞳子を嬉しそうに目を細めてみていた。

 その横で、ライが瞳子をなぜか値踏みしている。


 「ライ? 私の顔に何かついてる?」

 「いや。 そうじゃなくて……。 カイの予想通り、だな」


 予想?


 何のことを言われているのかさっぱり分からなかったが教えてくれるつもりもなさそうなので、自分の疑問をぶつけてみた。


 「あのね? 前にこの椅子で寝ていた小さい男の子がいたんだけど……知ってるわけないよね?」

 「前とはいつのことだ?」

 「ん~、おじいちゃんが亡くなるちょっと前なんだけど」

 「ああ。 それならカイしかいないだろう」


 へ? 黒綺??


 「カイ以外は掃除する者たちしかこの部屋ははいらないからな」

 

 へ? 黒綺???


 「寝ていた? 私がか?」

 

 黒綺しかいない???


 「あー、小さな男の子がこの椅子に凭れかかって寝ていたのをミタコトガアリマス」


 黒綺があの王子様……?

 私の……??


 「ええーーーーーーーーーっっっ!!?」


 私の理想の王子様が、実は目の前にいるってこと!?


  

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