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ラブロマンスはほどほどに  作者: れんじょう
ラブロマンスはほどほどに
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自主製作 第十九話

 いや、もう十分ファンタジーだってことは分かっていますとも。

 すでに『異世界に渡る』なんて王道、こなしまくっていますし。

 千紗がうらやむシュチュエーションの塊ですよ。


 でもね?


 どうして髪や瞳の色が、違っちゃいますかね???

 おまけに、肌も違っていますけれども!?

 てか、別人!



 髪の長さは変わらないものの、それ以外は色と言いつやと言い癖といい、全く別の次元の髪に変身しているわ、瞳も紫とも紺ともとれるような、知っている限り人間の瞳の色では聞いたことのない色の不思議な色になっているわ、肌ももっちりとしつつも透き通るような白い肌になっている。


 わたしじゃなーーーーーーいっっ!!


 「私も知りたいくらいだな。 どうしてそんな色になったのか」


 いつのまにかベッドを椅子代わりにして腰掛けていた黒綺が、瞳子の驚く様を楽しそうに見ていた。



 「自分じゃないからって、楽しんでるでしょ? 絶対」


 ぷくっと頬を膨らませて黒綺を睨んだが頬笑み返されてしまっただけで、自分が如何に子供っぽいことをしているか思い知らされてしまった。


 「むう。 いつからこんな風になったのかなあ」


 手で梳いてはさらさらと流れおちる長い銀髪を玩びつつ問うと、「こちらの世界に来た直後だ」と即答された。

 

 ああ、痒かったもんねえ、眼が。

 それとも眼がこうなったから痒かったのかな。

 あの白い光を浴びたせいで、髪の色が抜けたりして?


 「その瞳の色は私の知る限り一人しかいない。 鬼籍に入った人だが、先々代の塔の長であったアオイさまと同じ色だ。 なつかしいな」 

 「アオイ? おじいちゃんと同じ名前……」


 大好きだった母方の祖父の名前をこんなところで聞くなんて思ってもみなかったと、瞳子は懐かしく思った。

 瞳子が小学校に上がる時に亡くなった大好きだった祖父。

 秘密を一緒に共有して、祖父の家に行くたびに秘密が増えていった。


 そういえば、あの絵はどうなったんだろう?

 祖父の家の納戸に置いてあった大きな絵。

 王子様がいた、あの大きな鏡。


 「瞳子の祖父はアオイという名なのか?」

 「うん。 そうだけど?」

 「まさか……」


 「そんな偶然があるわけない」、そう呟く黒綺は瞳子の手を取ってそのままある場所に連れ出した。


 「どこいくの?」


 何かを急くように大股で歩く黒綺の歩調に合わせることが出来ずに少しつんのめりながらなんとかついて行くと、大きなドアの前で立ち止まった。

 まるで家紋のような装飾を施された大きな一枚扉が、どことなく見覚えがあるようなないような、記憶の片隅に覚えているような、そんな懐かしい雰囲気を出していた。


 「この部屋は、先ほど言ったアオイさまの私室だ。 わけあって未だに亡くなったときそのままに保存しているのだが。 私が異次元に造った瞳子の家の姿見はここの姿見と繋いである。 さきほど瞳子はこの部屋の姿見に現れたのだが…覚えてはいるまい」

 「へ? そうなの? 申し訳ないけども、覚えてないんだけど……」


 でもすごく懐かしいんですけど。

 単なる扉一枚が懐かしいなんておかしいかも。


 ぼうっと扉を見ていたら、ちょいちょいと黒綺に服の袖をひっぱられた。

 何かと思って黒綺が見ているものを目で追うと、そこには一枚の大きな絵が壁に掛けられていた。


 ―――――おじいちゃんっ?!


 「どうして……どうしておじいちゃんの絵がここに……?!」


 その肖像画の祖父の服装は黒綺が着ている服と全く同じものだったけれど、たしかこれは魔法使いの長のみが着る服装だと聞いたことがある……ってことは?


 「おじいちゃんって、黒綺がさっき言っていた人と同一人物ってことぉーーーーーっ?!」

 「やはりそうか」

 「ええっ?! なにそれ。 黒綺ってば、知っていたんだ!?」

 「まさか。 ただ、瞳子の瞳の色は特殊だからな。 それに纏っている魔力の色がアオイさまと酷似しているし。 そう考えると血縁としか思えんだろう?」


 少し暗がりの中にあったから分からなかったけれど、肖像画をよく見るとおじいちゃんの瞳の色がたしかに今の私の瞳の色と同じ紫紺色だった。


 「でもっ。 私の茶色の瞳はおじいちゃんゆずりだってお母さんが言っていたのに……?」

 「これはあくまでも推測だが、アオイさまが魔法をかけたのではないか? 瞳子の世界でもこの瞳の色はないのだろう? 生涯にわたる変化の魔法をかけ、この世界に瞳子が来ることを予測して、界渡りしたときに魔法が解けるように設定していたのではないだろうか? そうすると界渡りし終わったときの魔力の破動の大きさに納得ができるのだが」


 いやいやいやいや、ちょっとまて。

 どうしておじいちゃんが、私が黒綺と会ってこの世界に来るってことを予測しちゃうですかね?

 てか、私、おじいちゃんがこの世界の魔法使いだってことを受け入れていますよね??


 「道理で私の半神がこの世界におらず、向こう側にいたはずだ」


 ちょっとまてーーーいっ!

 一人で納得しないでくださいっ!!

 そんな優しい顔して私をみるなあっ!


 ………あれ?


 ばんっ!


 勢いよく懐かしい扉を開けて、瞳子はアオイさまの部屋にずかずかと入って行った。

 そこで見たものは予想にたがわず、昔よく絵に描いた、あの不思議な部屋とそっくり同じ部屋だった。


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