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ラブロマンスはほどほどに  作者: れんじょう
ラブロマンスはほどほどに
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自主製作 第十八話

  姿見から黒綺の世界に入った途端、眼が痒くなって掻いていた。

その時にライが変なことを言っていたことも覚えている。

ただ、そのあとに白い光に包まれたかと思ったら、私はなぜか黒綺の腕の中にいた。


 「……っん……? 黒綺?」

 「瞳子。 気が付いたか」


 明らかにほっとした表情の黒綺を見ると、数か月会っていなかったことを忘れてしまいそうになった。

 会っていない間に、ものすごく痩せてない?

 

 「本当に……黒綺?」


 何度も繰り返す問いに、黒綺は怪訝な顔をしている。


 「どうした」

 むに。


 思わず黒綺の頬を両手でむにっと掴んでしまったのは、仕方がないというものです。


 「ほおほっっ!」

 「本当に黒綺?」


 むにむにむにむに


 この数カ月の腹いせに、ついついむにむにとする指に力がこもる。

 だいたい黒綺はライ曰く『ひきこもり』じゃなかったのか?

 おまけにそのせいで、周りに影響が出てるとも言っていたような気がする。

 それなのにどうして引きこもりな黒綺がここで私を抱っこしているのかな。


 「ほおほっ?! いいはへんにしあはいっ!」

 「ん~。 だって本当に黒綺かどうかわかんないじゃない?」


 むにむにむいにむに


 黒綺の制止もなんのその、瞳子はその指の力を緩めることなくむにむにと頬をつねり続ける。

 その間に黒綺は瞳子を抱きかかえたまま部屋を横切っていき、ベッドにどさっと放り出した。


 「なにするの!?」

 「こちらが聞きたい」

 

 真っ赤に腫れあがった頬をさすりながら身体ごと近づけてくる黒綺から逃げようと、瞳子はじりじりと後ろのほうに下がっていった。


 「なぜ逃げる?」

 「え? ……いやー、ほら。 ね? ちょっと手が滑って?」


 支離滅裂な回答をしていた瞳子に覆いかぶさるように身体をのりだした黒綺は、『会えなかった分』といってそのまま唇をあわせてきた。


 会えなかったというのは、一体誰のせいなのか?

 そんな言い分が通じるとでも思っているのか。

 私が悩みに悩んで、落ち込み倒した数カ月がそれで帳消しになるとでも思ってるのか。

 

 それでも嬉しいと思ってしまう自分は一体何なのか。


 「これくらいは、許されるだろう?」


 そんな瞳子の気持ちなどお構いなしに、瞳子の顔を両手に包み込んで何度も何度も口づけを交わす。

 初めはされるがままになっていた瞳子だったが、繰り返される口づけに段々と深さを増していき、気がつけば熱い舌が瞳子の口内をまさぐっていた。


 「んんっ……!」

 

 驚く瞳子がいつの間にか閉じていた眼を開けると、欲情に煙る瞳が瞳子を捉えていた。


 くらくらする。

 そんな瞳で見られると切なくてたまらなくなる。

 会えなかった時が、黒綺にとっても辛かったんだと勘違いしそうになる。


 「会いたかった」

 「それはうそ、でしょ」

 「嘘ではない。 どうしてそんなことを言う?」

 「だって……」


 いきなり来なくなった。

 それまでは嫌だと言っても聞く耳持たずで押し掛けてきたくせに。

 来てほしいと願うようになった途端、ガラス戸を叩く音が響かなくなった。

 ずっとずっと待っていたのに。


 「会いたかったんだ、瞳子」


 瞳子の華奢な身体をベッドに押し倒し、身動きもせずただ身体を重ねていただけの黒綺の鼓動が、瞳子の胸に直接響いた。

 その鼓動は黒綺の想いが真実であるとわかるほど力強く早く響き、瞳子の疑念を一蹴した。


 「黒綺……」

 「黙って、じっとして、今は私だけを感じてくれ」


 会えなかった分の隙間を埋めるかのように、黒綺は身体を一部の隙間もないように瞳子の身体に密着させる。

 ゆっくりと髪を撫でつけていた手がそのまま頬に、首筋に、鎖骨にと下りていく。


 瞳子は両手を黒綺の身体に回して抱きしめようとした、その時


 「なんですかこれはーーっ!!」


 眼の端に入ってきた光る物体を見つけて、抱きしめられているということをきれいさっぱり忘れていたように瞳子は力いっぱい叫んでしまっていた。


 「うおっ?!」


 耳元でいきなり大声で叫ばれてしまった黒綺は、耳鳴りを起こしたか、耳を手で押さえつけて突っ伏した。


 「なになになになにーーーっ!? これは一体どういうことよーーっっ!!!」


 光る物体を手で持ち上げ、その長い紐をひっぱると、やっぱり自分の頭皮から生えている髪のようだと理解したものの、さっきまで確かに黒かった髪の毛がいつのまに銀色になっているのか訳が分からず叫び続ける瞳子だった。


 「瞳子……。 叫ぶのはやめてくれないか」


 ベッドの隣でちょっぴり涙目になっている黒綺を見て、自分がしたことにやっと気がついたようで「ごめん、黒綺」と愁傷に謝っては見たものの、やっぱり気になるのは髪の毛のようで。


 「ちょっと黒綺?! いつの間に私の髪を染めたの?」

 「染めてなどいない」

 「染めないと色は変わらないよっ?!」

 「……瞳子。 そこに鏡があるから覗いてごらん」

 

 今は髪の話をしているのに、どうして鏡を見なくちゃいけないんだとぷりぷりしながら鏡を覗いた瞳子は、その瞬間ピキッと固まってしまった。


「……これって何かのファンタジー?」


 瞳子、現実逃避に入りました。


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