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ラブロマンスはほどほどに  作者: れんじょう
ラブロマンスはほどほどに
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自主製作 第十七話

 リビングの姿見が瞳子の世界への道であったように、黒綺の世界への道がつながるのは寝室の姿見だった。


 ライはそこの前に立ち手をかざすと、そこには瞳子にとってどこか懐かしいような覚えのある部屋が映し出された。



 ―――――この部屋……?



 なにか瞳子の脳裏に閃きかけたものがあったが、「早く」と急かすライに促されその閃きを奥へと押しやった。


 そして二人は『リエン』に渡った。




 にゅるり




 いつもの感覚が瞳子を襲う。

 この感覚は何度しても慣れることは決してないだろう。

 硬くてやわらかくて、それでいて包み込まれる感覚。

 それでも何度か界渡りをしているせいか、不愉快な気持ちを押し隠すことはできるようになった瞳子だった。


 ライはといえば、不快そうに下を向いている瞳子を凝視していた。


 ――――――どうして義姉上はなんともないのだ?


 たしかに不快そうにはしている。

 義姉上は、リエンという国に渡ったのは初めてのはずなのに、その程度が少なすぎる。

 この国でカイの次に魔力が強い私ですら、義姉上の世界にはいったときは体中の節々が痛み悲鳴を上げ、胃からは胃酸が上ってきて吐気を絶えず催したのに。

 まさか、これが半神の力なのか?


 「あれ?」


 瞳子の目の中にゴミでも入ったのか、ぱちぱちと何度も瞬きをしていたが、それでもとれなかったようで、今度は手の甲を使ってごしごしと目を擦り始めた。


 「義姉上? 大丈夫か?」

 「うーん。 目に何かはいったのかな? 痛痒いんだけど……。 ライ、目を見てくれる?」


 そういって瞳子がライに顔を向けたとたん、瞳子の顔の印象ががらっと変わっていることにカイは目を見張った。


 「……義姉上!! その瞳の色は?!」

 「ん? 瞳? 充血してる??」

 「違う! 瞳の色が、変化しているぞ?!」

 「……はあ?」


 私の瞳は生まれつき茶色です!と瞳子が言いかけたその時、


 どおぉぉぉぉぉんっっっ!!!


 瞳子の頭上に膨大な光が落ち、身体のまわりに煙が渦巻いた。

 長い黒髪がゆっくりと逆立ち、髪を銀色に染めていく。

 肌の色も、薄く透明になっていく。

 そこに開かれた紫紺色の美しい瞳。


 たしかに瞳子であった者がまるで別人のような色彩を纏っていた。


 「……あ……義姉上……?」

 

 急速に光が引いていき、瞳子はその場に崩れ落ちた。


 「義姉上?!」

 「何事だっ!?」


 ばんっと部屋の続きドアが開いたかと思うと、そこにはやせ細って眼光が鋭くなった黒綺がライの腕の中で意識を失っている瞳子であるものを凝視していた。


 「……瞳子っ?!」

 

 黒綺はライの腕の中に瞳子がいることが信じられないといわんばかりに駆け寄り、ライの腕から瞳子をもぎ取った。

 

 こんなに変わってしまった義姉上を見ても、すぐに本人だとわかるものなのか?

 それほど半神というものは、惹きつけ合うものなのか。


 ライであればここまで色彩が変わった人間を同じ人だと見分けるのには印象が違いすぎて難しいのだが、黒綺はたやすく瞳子だと認識をした。

 そのことがライには衝撃だった。 


 「……どういうことだ、ライ?」

 「いや。 私にもわからん。 今しがた義姉上をここまでお連れしたんだが、界渡りが終わったとたん瞳の色が変わって、そして衝撃とともに光が義姉上を包み込んだかと思ったら、髪の色と肌の色も変化して倒れ込んだのだ」

 「そうか……。 隣の部屋で強い魔力を感知したと思ったとたんに強い波動が押し寄せたのでたどってきたんだが。 あの波動には覚えがあるぞ?」


 もうとうの昔に鬼籍に入った魔法使いの波動だが―――――


 数十年前に亡くなった先々代の塔の長を懐かしく思いだした黒綺だった。


 「とりあえず瞳子を私の私室へ運び込むぞ」

 「いや待ってくれ。 それはまずいだろう? 義姉上とはいえ未だ結婚しておらぬ女人を部屋に連れ込むことになるではないか」

 「かまわん。 私の半神を私の部屋に連れて行って何が悪い?」

 「あとで困るのは義姉上だぞ? 城の皆に示しがつかんわ!」

 「……仕方がない。 では私の部屋から一番近い客間に運び込む」

 「譲歩しよう」


 黒綺はライを顧みることもなく、瞳子を抱きかかえたまますたすたとその部屋を後にした。

 残されたライはすぐに従者と侍女を呼び、瞳子が運び込まれた睡蓮の間にカイの賓客を通したことを伝え、そこに向かって使えるように指示を出した。


 界渡りの姿見のある部屋から執務室に向かう途中の、回廊から眺めることのできる中庭に、カイの負の感情により枯れ果てた樹々や花々が生命を取り戻し青々と生い茂りまた色とりどりに咲き乱れているのを見て、ライはくすりとほほ笑んで、その中で一番に咲き誇っていた瞳子の瞳を思わせる紫色の一輪の花を手折った。


 ―――――この花を生涯忘れることはなさそうだ。


 あれほどまでに全てのものを拒んで、結界を張り巡らし、押さえきれないほどの負の感情を持っていたとは思えないほどの、カイの素早い行動。

 そして、義姉上の不可思議な変化。

 それに、あの界渡りのときの耐久力?


 義姉上は、カイの半神という立場だけではない『何か』があるようだ。


 紫の花をくるくると回し、執務室の山積みにされた書類を前にして、ライは一人思い耽た。

 

自主製作で意識が飛ぶのって何回あったかな(爆)

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