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ラブロマンスはほどほどに  作者: れんじょう
ラブロマンスはほどほどに
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自主製作 第四話

 「……え?」



 リビングの戸を開けたら、そこには信じられない光景が広がっていた。


 どっ……どうして、千紗の前にライ(リエン国王のはず)が跪いてるの?


 「あ、瞳子。 話は終わった?」

 

 笑顔を浮かべながら瞳子のほうを見た千紗だが、その顔色は冴えなかった。


 「う……うん。 終わったけど……。 千紗、やっぱり顔色悪いよ?」

 「ほらみろ。 そう言っただろう?」

 「うるさいわね。 大丈夫だってば」


 へ?

 たった数分の間に、すっごく気安くなっていませんか?

 千紗が初めて会った人にここまでくだけるなんて、めずらしい。


 「魔法具が合わなかったか……?」

 「合わない? 合わないってどういうこと?」


 後ろから遅れてやってきた黒綺(こっき)が、千紗の状態をみてそうつぶやいた。


 「魔法具には本来使うものの名前を術に織り込むんだが、千紗のものにはそれがない。 もちろん十全に作ったのだが、『名』があるとないとでは違うからな」

 「え? それじゃあ千紗がこうなるかもしれないってことがある程度わかっていたの?」

 「まさか。 わかっていたのなら、瞳子の友人に渡すわけがないだろう?」 

 「そうだ……よね。 うん。ごめんね」

 

 さきほどの千紗との会話を思い出して、自分が恥ずかしくなった瞳子だった。

 

 「ではどうすれば?」

 「作るだけだ。 ライ、お前のその額飾りを寄越せ」 

 

 あっさりと言い切った黒綺はライの額飾りを受け取るとそのまま手のひらに包み込んだ。そしてなにやら呪文を唱えだすと手の中から四方に光が漏れ輝き、そうしてその光が手の中に戻っていく。

 ライの額飾りは、こうして魔法具となった。


 「瞳子。 これを千紗の手首に」

 「額飾りだよね? 額に付けなくていいの?」

 「これはもう魔法具だからどこに付けても問題はない。 けれど瞳子の世界で額飾りをしている者を見たことはないから額よりは手首のほうがいいのではないか?」

 「たしかにそうだけど。 よく知ってるね」


 「……よく散歩に行ったからな」そういって懐かしそうに姿見のその向こうを見た。


 「義姉上。 はやく」


 少し苛だった声でライに魔法具である額飾りを付けるように急かされて、「ごめんね、千紗」と謝りながら千紗の右手首に首飾りをブレスレットのように付けた。

 たったそれだけしかしていないのに、千紗の顔色が元に戻り、苦しそうだった息遣いが聞こえなくなって、瞳子どころか千紗自身も驚きを隠せないでいた。


 「……なんともないわ」

 「「よかった!」」

 

 瞳子とライは、ほっと胸をなでおろした。

 

 自分の身に起きたことが信じられない様に頭を何度も振ってから、苦しかったはずの胸を抑えつつ起き上がった千紗は、そのまま黒綺の前にきて頭を下げた。


 「ありがとうございました。 それとお詫びを」

 「何を詫びることがある?」

 「本当に異世界を渡ったんですね? ……実は今の今まで信じていませんでした。奇術でも『鏡抜け』がありますし。 けれどこの額飾りの効果が、私の疑いを晴らしました。 疑って申し訳ございません」

 「……かまわない。 疑って当然だしな。 千紗は状況把握が早い。 瞳子は時間、というか日数がかなりかかったぞ」

 「え? そこでそれを持ちだす?」


 ぽかぽかと、子供のように黒綺の背中を叩き、瞳子は千紗の具合が良くなった安堵と黒綺を疑ってしまった後悔を誤魔化した。


 「瞳子。 千紗の反対側の魔法具をはずしてくれ。 同じ効力のある魔法具を一度に付けておくのは良くないからな」

 「わかった。 千紗、左手出して」


 瞳子とお揃いだった首輪(まほうぐ)を外し黒綺に渡すと、それをまた両手にはさみこんで呪文を唱えだし、首輪を魔法具として作り直した。

 

 「ライ。 受け取れ」

 「どうしてだ?」

 「いらんのか? せっかく兄らしいことをしたつもりなのだがな」

 「……!」


 ライの反応はものすごくわかりやすかった。

 赤くなった顔を背けながら黒綺から差し出された首輪を受け取ると、そのまま失くさないようにベルトに付けていた。

 国王さま、なんだけどなあ。

 すっごく純情なんですけど。


 かやた千紗のほうはというと、そんなライからやはり目を背けて所在無げに立っていた。


 えーっと。

 これってまさかの『お互い一目ぼれ』ってやつですか?

 現在進行形のラブロマンス、ですよね?

 

 うわーっ。

 なんだか羨ましくて叫びたくなるんですけど!


 「馬鹿だな。 何を羨ましがるのだ?」

 

 後ろから抱きついてきた黒綺にそう問われるまで、声に出して願望をしゃべっていたことに瞳子は全く気付かなかった。


 うひゃっ


 「……もしかして声にでてた?」

 「でてたな」

 「でてたわねー、『羨ましくて叫びたくなるんですけど!』って、力いっぱい。 かなり恥ずかしいわよー?」


 あは。 あははは。

 そうですか。 声に出ていましたか。 がっくり。


 「義姉上は、その……かなり面白い方だな?」

 「……まあ、そうだな。 私の瞳子は退屈しないだろう?」


 背後から抱きしめる腕がぎゅっと強くなって黒綺の顔が降りてくる気配を感じた瞳子は、「あ!」と大きな声を出して黒綺をけん制した。


 「……なんだ?」 

 「ほら! ……ケーキ! ケーキ、持ってきたでしょ!?」

 「瞳子……。『羨ましくて叫びたくなる』雰囲気、まるつぶししたよ、今」

 「え? そんな雰囲気なんて、ないよっ!」


 あはははは。

 

 「でもケーキは美味しいうちに食べなくちゃ!」


 必死で何かを取り繕うとする瞳子に「まあそれはそうなんだけどねー」と千紗がため息交じりに呟いた。





 「黒綺って、本当はかわいそうな人だったのね」


 あとから千紗は瞳子にそう言ったとか言わないとか。


 

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