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ラブロマンスはほどほどに  作者: れんじょう
ラブロマンスはほどほどに
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自主製作 第一話

 リリリリリリリリリ


 ―――――目覚まし時計の音がする。


 カチッ


 「う、うーーん」


 いつものベッドで大きく伸びをして。

 そしていつものようにベッドヘッドでしこたま手を打ちつけました。


 ……痛い。


 いい加減やめようねー、慣れようね、私。


 痛めた手をさすると、そこに見えたものは左手首にある黒綺(こっき)の首輪。

 その首輪をまるで光にかざすように上にあげてじっと見た。


 やっぱり夢じゃなかったんだなぁって、改めて思う。

 でもね。 ありえないでしょ、普通。

 漫画や小説じゃないんだし。

 毎晩夜這い(?)掛けてくる男は、じつは異世界の魔法使いでした!……なーんて誰が信じる?って話だよね。



 「無理」

 「……ですよねー」


 同僚の千紗に捉まって一緒にランチを楽しむことにしたのはいいけれど、金曜日の、入社以来初めての病欠欠勤に疑問を持ちまくった千紗が嘘を暴こうと涎を垂らして待っていたなんて思ってもみなかった。

そういえばその日の朝は千紗にランチをご馳走しようって思ってたんだって思い出したから、ランチの誘いに乗ったんだけれど。 大失敗。


私が休むと連絡した時点で、千紗は前に見つけたキスマークを思い出したらしい……凄い記憶力です、はい。


 「でもさあ、瞳子はSFとかファンタジーをいくら勧めても読まなかったでしょ。 どうしてそんな話、思いついちゃいますかねー?」

 

 さては隠れて読んでいたか?と突っ込みを受けてしまいましたが、そんなわけはない。


「誰が思いつくか! っていうか、知っているでしょ? 私がどれだけロマンス小説を愛しているか。 もうね、ほんと我ながら呆れるほどのロマンス小説まみれですよ」

 「そうなんだよねえ。 おっかしいなあ」


 そういうことが本当に起こるのなら自分のほうになぜ起こらん!と超絶美形の顔に皺を寄せてぶりぶり怒っているけれど、逆に私にどうして本当に起こっているのか知りたいわ。


 「ねえねえ? それって本当にあるのかな?」

 「一応、馬鹿みたいだけど、本当のことだと思ってる。 だって、ほら」


 そう言って左手首にはめた黒綺の首輪を見せる。


 「真実味、ないよ? だってどこでも買えそうな首輪だもんね」

 「……そうなんだよね」


 何を言っても嘘っぽく聞こえるのは、私だって重々承知ですけど。

 でも、本当にあったんだと思えることがたくさんあるの!


 「ふーん。 じゃあ、瞳子の家、泊まってもいい?」

 「へっ?」

 「だってさあ、そんな夢物語聞かされて『はいそうですか』なんて言えますか、ってか言えませんよ?」

 「だーかーらー。 嘘だと思うなら嘘でもいいから! ちょっと誰かに言ってみたかっただけだし」


 馬鹿馬鹿しくなって、というか、自分がどんどん信じられなくなっていきそうで、千紗の顔を見ることが出来ずに横を向いてしまった。

こういうのって余計に嘘っぽく見えるのでは?なんて思う余裕は全くなくて。


 「ふーん。 泊まられるの、嫌なんだ……?」

 「べっ……べつにっ! 嫌じゃないけど」

 「じゃあ、今日は瞳子の家にお泊まりね!」


 くっ……嵌められた。

 にっこりほほ笑むその恐ろしいほどに美しい顔に、私は悪魔を見た―――――尻尾はないのか?


 「まあまあ。 ちゃーんと手土産、持っていくし。ね?」

 「……じゃあ、ミルクレープを所望する!」

 「結構足元、みたよね?」


 それから女子の会話を楽しんだ後、昼休み時間の残りが少なくなったことに気づくのが遅れて、慌てて二人で職場に駆けこんだ。

 


 **********



 「ここから出てくるの?」


 約束通りケーキを携えて千紗がやってきたのは、夜8時を少し回ったころ。

 部屋にあげた途端、ずかずかと奥まで入ってきて、指をさしながら言った言葉がそれだった。


 「千紗……、いきなり?」

 「だってさぁ、気になるでしょ」


 クスクス笑って「はい、所望品」といわれて手渡されたケーキの箱は、私が大好きなお店のものだった。


 「会社から結構遠い店なのに、わざわざ買いに行ってくれたんだ。 ありがと」

 「ん~? どっちかと言えば私の家の近所だし? 荷物取りに帰るついでだからねー。それに、今から根掘り葉掘りと聞かせていただきますから、このくらいは譲歩して差し上げますわよ?」


 はー、そうだったぁ。 こいつはこういう奴だった。

 

 あはははと意味不明な笑いをしながら、千紗にソファを勧めつつ、テーブルの上に夕食のパスタをセットしていく。


 「うーん。 美味しそう! 瞳子って料理が本当に得意だよねー。 そのほかはなんですけど」

 「ちょっと。 その『なん』っていうのはまさか漢字?!」

 「そういう風に勝手に捉えないでくさだいねー」


 おほほほ。


 わざとらしく手を口に添え、高らかに笑う千紗を前に、食事が始まる前から撃沈していると思えるのはどうしてなんだー!

 ……やっぱり悪魔だ。 絶対しっぽがあるはず。


 「あ、さすが瞳子。 おいしい!」

 「そ……そう?」

 「そうそう。 瞳子の作るご飯はねー、私の味覚にものすごく合っているんだー」


 そういいながら千紗に出したカルボナーラを速攻で平らげ、私のめんたいこスパまで侵略しようとしているところが信じられない。 見かけによらない大喰らいめ。


 「こんなに料理上手なのに、なーんで今まで男が釣れなかったかなー。 すっごい不思議だわ」

 「ごふっ」

 「わ。 もったいないなあ。 食べ物を粗末にしたら、もったいないお化けがくるわよ」

 「誰のせいで吹いたと思ってるんだー!」

 「ん? 瞳子のせいでしょ、当然」


 そうこうしている間に、瞳子のパスタがきれいさっぱりとなくなってしまったことにため息をつきながら、残されたスープだけは侵略の魔の手から阻止しようと囲い込んだ瞳子だった。



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