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ラブロマンスはほどほどに  作者: れんじょう
ラブロマンスはほどほどに
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三冊目 第五話

 

 

 ちょっと待って。


 えーっと……えーっとえーっと?

 ……落ち着け、私。


 衝撃でふらふらする頭を整理するために、ぱしぱしと頬を軽く叩いた。


 一目見て、瞳子のマンションとは比べ物にならないほどの豪華な造りである部屋だとわかる。

 珪藻土の壁、落ち着いた色のフローリング、手すき楮を使った雪見障子。 そして高い天井には瞳子が見たこともないほどの太さの梁。

 これが瞳子のマンションの寝室であれば、LDKを分けるために仕切られる可動式の薄い合板に窓には北欧風の手作りカーテン、ベッドもスプリングが怪しい安物で、もちろん蒲団も掛け敷きセットの安物。

 瞳子はぐるっと部屋を見渡して、ため息をついた。

 

 ―――――願望、出すぎ。


 もともと建築物を見るのが好きだった瞳子は、むくむくと好奇心が湧いてきて、さわり心地がとても素敵な蒲団から抜け出した。


 この引き戸も、素敵。 木で綺麗に細工しているけれど……なんていうんだろう?


 見たこともない装飾に感動しつつも引き戸を開けると、そこには廊下があり、その廊下を挟んで今度はガラスをはめ込んだ引き戸があったので、それをこわごわ開けてみる。

 するとそこには、昨日の夢で見た場所だった。


 ―――――夢の続きをみているの?


 中に入ってあたりを見回しても、やはり覚えているままの部屋で。

 ただ違うことは、あの(ひと)がここにいないだけ。


 ふと思い出したように手首を見ると、やはりそこには黒綺(こっき)の首輪―魔法具―がはめられたままだった。


 『ここにいるときはこれを外さないように。 瞳子を守るものだから』


 あの男は確かにそう言っていた。


 『ここは、瞳子のために作った場所だからな』


 そうも言っていた。


 「―――――ねえ。 ねえ? ねえ?!」


 名前も知らない男をどうやって呼んだらいいのかわからないから叫んでみても、誰の反応もない。

 仕方がないから屋敷の中を手当たり次第探してみた。


 最新設備が整ったキッチン。

 最新設備が整ったトイレ。

 最新設備が整ったお風呂。

 そして主寝室だろう部屋も開けてみたけれど、あの男はどこにもいなかった。


 リビングに戻ってソファに座り縁側をじっと見る。


 『あそこでゆったりと日差しの中を微睡むのは、本当に気持ちがいい』


 男の言葉が思い出された。


 あのときはおじいさんみたいと言ったけれど、どちらかというと、猫、みたいだよね。 黒い服装がまるで黒毛の猫みたいに見えるんだろうな。


 ―――――キーワード。


 あれ? 今、私何を思っていた?


 猫みたい―――――? キーワード。

 黒毛の猫―――――? キーワード?


 そしてたぶん、黒綺の首輪(魔法具)。 これもキーなんだよね?

 だって、平日の私の部屋には絶対ないものがあったもの。


 つぎつぎと思いだされる男との会話と、その時に自分が感じた全て。


 私が名付けたといいきる男。

 でも私が名前を付けたことのあるのは、唯一、黒綺だけ。

 そして黒綺の首輪を魔法具だといって私にはめた……男。


 ―――――まさか。


 でも、今の私にはそれしか考え付かない。


 「―――――黒綺?」

 「なんだ?」


 ひゃっ


 背後から両手が伸びて、ソファ越しにぎゅっと抱きしめられた―――――黒綺……?


 「とうとう名前がわかったんだな……瞳子」


 背後から抱きしめたままの私の左肩に顔を埋めた黒綺は、嬉しそうにため息をついて、そのまま首筋にキスをした。


 「!」

 「やっとわかってもらえて、これ程嬉しいことはない」

 「え……? 本当に『黒綺』なの……?」


 自分で言っていながらも、まさか猫に付けた名前がこの男の名前だということが理解できない―――――。

 

 「そう。 あの猫は私だ」


 猫!

 猫が人?

 かわいい、私の癒しの黒綺が……本当は人間なの?

 まさか、猫人間?!

 ありえなーい!


 「魔法で姿をかえていたからな。 本来の姿はこの姿だぞ?」


 えええええええ????っと!?

 それはそれで恥ずかしいんですけど!

 だって……だって、私。

 黒綺に何度もキス、してたもの!

 ってか、顔も変われば猫にもなるの?!


 かーっと熱くなる顔に、黒綺は頬を寄せてきた。


 「何を思い出してそこまで赤くなる?」 

 「え? あ! ……何もないです」

 「うそつけ」


 そういって黒綺は立ちあがり、頭の中が爆発しそうなくらいパニックな私の手をとって縁側にでた。


 「ほら。 暖かい天気で、気持ちいいだろう?」

 

 じっと私を見つめる黒綺。

 

 「瞳子が機嫌がいいとここの天気も暖かになる」

 「え?」

 「ここは瞳子のための場所だといっただろう? ここの天気は瞳子の感情で左右されるから……今は良い方向なのだな」


 ……はい? 今なんと言いました?

 『ここの天気は瞳子の感情で左右される』??


 えええええ???


 「昨日の夜ここに来た時は、荒れ狂っていただろう?」

 「え?……ああ、そういえば凄い雷雨……」

 「瞳子が凄く……まあなんだ。 そういう状態だったから、ということにしておこう。 今は穏やかな状態なのでここもよい天気に恵まれる」


 なんですかそれは!


 っていうか、やはりファンタジーの夢なんでしょうか……。





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