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ラブロマンスはほどほどに  作者: れんじょう
ラブロマンスはほどほどに
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三冊目 第三話

 『濃厚な色気が漂う容姿をひけらかすこともなく、逆に落ち着いた印象を与えようと必死になっていた面接時以来、彼女のことがどうも気にかかる。 自分の仕事の邪魔になるかもしれないと感じたが秘書能力が高かったので雇ってしまった。 それ以降彼女の魅力に参らないようにするためにほかの女性に走ったがそれでもとうとう自分が彼女に参っていることを認めた。 そこから彼女をできるだけ自分の手元に置いておこうといろいろと画策したが、彼女はなかなか引っかからない。 その上幼馴染だとかいう男性を連れて会社主催のパーティに来た。 もうがまんがならない。 この気持ちをぶつけて彼女をじぶんのものにしてやる。 けれど彼女は家庭を持つタイプ。 下手に深入りすると指輪を求められるかも……』




 まあこんなもの?

 最後まで読もうか悩むなあ。


 

 いつもなら一冊の本を二日で読み終えるのが瞳子のペースだったが、今回はあまり乗り気がしない。


 だーーーっ!

 

 ばさっと本をソファの上に投げて、近くにあるクッションを抱きしめた。

 ちらっとテーブルの上にあるモノに目を向ける。

 このことがどうしても気になって悶々としているうちに会社に行きそびれてしまい、瞳子は入社して初めてずる休みをした。 


 だって……だって。 おかしすぎるよ……。


 あの出来事はすべて夢なのに。

 どうして昨日見た夢そのまんま、珈琲を入れた跡があるの?

 綺麗に飲み干したアレッシオのマグカップと、ほとんど飲むことが出来なかった私のマグカップ。

 サーバーの中にはお代わり用にあと2杯分入っている。

 使われたミルクポットと、用がなかった砂糖。

 どれもあの夢のままにそこに―――――。


 わからない。

 あれは絶対に、夢。

 だって、そうじゃなければガラス戸からにゅって出てこれないし、顔だって。 小説読むたびにその主人公そっくりの顔で家にこれるわけないじゃない!


 ―――――あ!

 そういえば、アレッシオが言っていた国。

 確か……『りえん』?

 ネットで調べなくちゃ!


 クッションを横に置いて、チェストの上に置いてあるノートパソコンを取り出して、検索をかける。

 

 おかしい。

 どんなにくぐっても、『梨園』か『離縁』、あとは人の名前か店の名前しか出てこない。


 どうして?

 どうしてどうしてどうしてどうして?


 ぐるぐると頭の中で呪文のように『?』が巡る。


 夢の中だから、奇術同然で部屋に入ってきてもさほど驚かなかったし、私に迫って(?)きてもある程度割り切れた。

 コンスタンスだったりシャルルだったり、そして昨日のアレッシオ。

 ロマンス小説の主人公の顔にころころ変わるのも夢だから出来るわけで。

 アレッシオ(代表)がキスを何度もしてきても、恥ずかしいけれど夢だからってある程度割り切っていたのに-----。


 けれど……けれどこれがもし。

 これがもし本当のことで。

 

 ……本当のことだったら?



 ワタシハイッタイナニヲシテイルンダロウ?



 見知らぬ男を(自分がそのつもりが全くなくても)連れ込んだ、碌でもない女。

 毎夜、違う顔の男にキスをされて。

 (不可抗力でも)裸を見られて。

 ……自分からキスもした。


 

 ワタシハイッタイドウナッタンダロウ?



 瞳子はそのまま倒れこむようにソファに横になった。





 コンコンコンコン


 ―――――ガラス戸を叩く音


 コンコンコンコン


 ―――――やっぱり来た-----!


 がばっとソファから起き上がって、抱いていたクッションをガラス戸に投げつける。


 「瞳子?」

 「……うるさい……」

 「どうした?!」

 「……うるさい!うるさいうるさいうるさいうるさいっ!」

 「!? 瞳子、大丈夫か!?」

 「大丈夫じゃなぁいっ―――――!」

 「!? 入るぞ!」


 ゆっくりと盛り上がるガラス。

 そして人型になってガラスが破れ、アレッシオが中から出てきた。


 「瞳子?!」

 「うるさい! こっちに来るな!」


 手当たりしだいものを投げられて、アレッシオは戸惑った。

 瞳子の顔が恐怖に引き攣っている。


 「変態変態変態! 不法侵入してるんじゃない! どうして毎日うちに来るの?!」

 

 アレッシオが一歩、瞳子に近づくたびに、瞳子の口から悲鳴が上がる。


 「いやあぁぁぁっ! こっちに来ないでぇぇっ!」


 恐怖の色を帯びた声色で、瞳子は叫び続けた。

 声は出せても身体は怖くて固まってしまっている瞳子を悲痛な目で見たアレッシオだったが、このまま瞳子に叫び続けさせるわけにはいかず、瞳子の腕を掴んでその腕に黒綺(こっき)の首輪をはめた。

 そしてその悲鳴を上げる口を無理やり自分の口で閉じて悲鳴を抑えた。

 瞳子の身体が呪縛から解けたように動き始める。

 アレッシオから逃れようと、両手をアレッシオの硬い胸板にバンバンと精一杯の力を込めて殴りつける。

 アレッシオは瞳子を怖がらせない様に努力をしたが、恐慌状態の瞳子はそんなアレッシオの気遣いを理解せず、自分を襲うレイプ魔から逃れようと必死になっていた。

 

 ぱしんっ!


 アレッシオの口づけから逃れようと瞳子は胸を叩きつける手をそのままアレッシオの頬に伸ばし、力いっぱい叩いた。


 「やめて!」


 泣きながら叫ぶ瞳子を見下ろして、アレッシオは行動に出た。


 

 瞳子を抱きかかえ、そのままガラス戸に向かい、飛び込んだ―――――!


ボキャブラリが少ないです……(大爆)

ちなみに、瞳子が会社を休んだ時に上司に連絡を入れたら「鬼のかく乱?!」と笑われたそうです。「まあずっと休まず仕事してたんだから、ゆっくりと身体を休めてね」とさすが皆勤しているだけあって初めての休みに上司はやさしかったということで。

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