07.混濁する幼き記憶。
「ただいまなのよ!
コウ見て〜!お金がこんなに!...って。」
干してあったミズナのパンツを手に持つ俺。
「...ちょ!コレは違...!」
「せりゃぁぁぁあ!」
神速のユータンに掴まれ、庭へ向かって投げ飛ばされる。
視界が上下反転、左右反転、とにかくグルグルしている。
「グェぇ!」
しばらく宙を舞い、視界はついに真っ暗になった。
俺の頭は地面に埋まっていた。
俺はユータンに引っこ抜かれて正座させられた。
砂利の上に。
「ちょ、話せば分かるって!
一言で言うと、実験をしてたんだ!」
今にもキレそうなヒルクも詰め寄ってくる。
「どぉんなイカがわしい実験だぁ?おい。」
「とにかく!今やるから信じてくれって!
ミズナ、昨日のアクアタンクを持ってきてくれ。」
ゴミを見るような目で俺を見るミズナ。
無言でアクアタンクを取りに行く。
「すまない。じゃあ、空に向かって水を撒いてくれ!」
「...分かったのよ...。じゃあいくね。」
プシャァァ!
勢い良く空へ舞う水の粒。
俺はそれに向かって両手を振りかざす。
「冷気寒波ァ!」
すると、水の粒がみるみるうちに氷の粒に変化する。
氷の粒が降ってくるが、すかさずヒルクが盾で受け止める。
カンッコンッ!
「何すんだ相棒っ!盾がなかったら怪我してたぞ!」
「すまんすまん。
けど、ヒルクなら防いでくれるって信じてたぜ。」
他の二人は口をあんぐりさせて、まだ空を見上げている。
「...驚いたねぇ。コウにこんな魔力があったのかい!」
「...スゴいのよ!コウ!
もしかして昨日手が冷たかったのって!」
「ああ、俺は他の魔族やゴブリンみたく放熱ができない代わりに、冷気を放てるみたいなんだ。
ミズナが噛まれたのを見て感情が高ぶって、それで使えるようになってたんだ。」
だが、ヒルクは納得していないような表情で俺を問い詰める。
「スゲぇのは分かったけどよ、相棒。
ミズナのパンツと何の関係があるんだァ⁉︎」
「今から説明するから落ち着けって!
俺はとにかく濡れた布が欲しかったんだ!
ほら、家の中にあるミズナのパンツ、明らかに変だろ?」
そう。パンツはまるで凍っているように直立していた。
というか、事実凍っているのだ。
「冷たっ!カチコチに凍ってるのよ...。」
ミズナが恥ずかしそうに自分のパンツを回収した。
「で、俺は鎖よりも楽で確実に捕えられる方法を思いついた。
濡れた長い布をゴブリンに巻きつけ、それを一気に凍らせるんだ!」
「んなるほどぉ、考えやがったな。相棒。」
「俺の鎖のせいでミズナには痛い思いさせたからな。
みんながいない間に必死に考えたんだ。」
感激したミズナが俺に抱きつく。
「疑ってごめんね〜。コウ。
アタシの下着ならいつでも使って大丈夫なのよ〜!」
「「それは違うだろっ!」」
双子のツッコミが炸裂した。
・・・・・・・・・・・・・・・
俺たちは家で昼食を取る事にした。
もちろん、迷惑をかけたレストランのテイクアウトだ。
俺はゴブリンの行方が気になって、みんなに質問した。
「そういや、引き渡しはどんな感じだったんだ?」
「それがね!案外すんなり〜って言うか、ゴブリン引き渡してお金もらって、はいサヨナラーって感じだったのよ。」
「しかも、王国も一通り尋問したら処刑するって話だぜ?
てか、ゴブリンなんてほとんど言葉話さねぇし、何を尋問すんだって感じだけどよぉ。」
「ウチらとしては野生に返されるよりかは嬉しいけど、そうなると一体何のために生け捕りにさせるのか分かんないわよねぇ?」
ピロロリッ!
「あっ!コウの遺伝子の解析が終わったみたいなのよ!
アタシの残りのスープ、コウにあげるのよ!」
そう言うと、急いで自分の部屋へ向かうミズナ。
残された三人はミズナの熱心さに感心しながら、昼飯を食べた。
食べ終わるとしばらくして、ミズナが結果を持ってきた。
「ちょっと!これ見て欲しいのよっ!
ほら!コウの遺伝子も人間と完全に一致って結果なのよ!」
...⁉︎
俺が元々は人間だった?
いやいや!そんな訳ない。何かの間違いだろ。
俺の目を見つめるミズナ。
「コウ、大丈夫?
かなりショックを受けてるみたいなのよ...。」
「ああ。すまない。
けど正直、かなり混乱してる...。」
「無理もないのよ...。横になって休んで。
落ち着いたら、一つずつ質問してもいい?」
「ありがとう。けど寝るほどでもないさ。
ミズナの考え、聞かせてくれ。」
ミズナは少し目を瞑って頭を整理したようだ。
「じゃあ、聞いていくのよ。
まずは、コウの一番古い記憶って何歳の頃?」
「そうだな...、3歳頃に父親の経営してる会社に一緒についてって、ミニスカOLさんにチヤホヤされた記憶かな...?」
「...、ミニスカOLさんって何なのよ...?
てか、魔界には今も会社なんてあるの?
人間界では200年くらい前に会社っていう形態は廃止されてるのよ。」
「...んん?
言われてみれば今の魔界には会社なんてなかったな。」
なんだ...?
記憶が混濁している感じだ...。
「じゃあ、次に行くのよ。
子供の頃の記憶を順番に話して欲しいのよ。」
「そうだなぁ...、子供の頃は勉強ばっかだったな。
大学受験は一浪したんだけど、予備校の先生が毎日ミニスカで...、」
「え...、ちょ、ちょっと待つのよ!コウ。
さっきから分からない単語ばっかりなのよ!
ダイガクジュ...? イチロー? ヨビコ...ウ?
そして...、またミニスカ...?
コウはミニスカが好きなの?」
「...俺も話しててサッパリ訳が分からねぇ!
ミニスカが何なのか分かんないけど、とにかく俺は好きだった記憶がある...。」
話を聞いていたヒルクが割って入ってくる。
「俺、ミニスカって聞いた事あるぞ!大昔の言葉だ。
確か、女性が腰に巻く丈の短い服...だった気がするぞ。
動くたびにパンツが見えるとかって話だ。」
ユータンにもゴミを見るような目で見られた。
俺は恥ずかしくなって反論する。
「いや...!ヒルク、その情報ホントかそれっ!
俺は確かにミニスカは好きだったけど、ミニスカってのはきっと、もっとこう素晴らしい物なんだよ...!」
焦る俺をジト目で見るミズナ。
「んまあ、真相は分からないから、いいのよ...。
それよりもコウの記憶の混濁が重症なのよ。」
...そうだ。
今はフザけていたが、本当はそんな事してられない程に動揺している。
「俺さ、今思い出して確信したんだが、この記憶は間違いなく夢でも幻でもない。
大人になってからは魔王軍ゴブリン討伐兵団に選ばれて、魔王城のある本島へのゴブリン侵攻を食い止めてた。
そして、そこから追放されたのも事実だ。」
「コウ、嘘は吐いてないと思うのよ。
話を整理するけど、コウは元々人間で、大昔の記憶を持っている...。
だけど、大人になってからは今の魔界で過ごした記憶がある。
そして、その境目がゴチャゴチャになってるのよ。」
頭がグワングワンする。
「すまんみんな、今日はもう休ませてくれ。
明日には良くなると思うから、またゴブリン捕まえるの手伝わせてくれ...。」
心配そうに見つめるみんな。
俺は自室へ戻り、ベッドに入った。
理由の分からない涙が止まらなかった。
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