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【書籍化決定!】【R15版】変態リケジョちゃんは追放魔族の“珍(ちん)”な部分に興味があるようです。  作者: 真星 紗夜


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05.賞金首のコウと魔王軍の没落。


 俺がこの家から逃げようとしたその時、ミズナがふと顔を上げ、俺と目が合った。


 ...!


「コウ、今の話聞いてたの⁉︎」


 ミズナは急いで俺の方へ駆け寄ってくる。


 くそ...、捕まってたまるか...!


 俺は玄関へ向かい飛び出そうとしたが、涙ぐむミズナに強く抱きしめられた。

 

「魔界ではそんなに辛い事があったのね...。

 けど安心して、アタシたちはそんな事絶対にしないのよ。

 昨日の作戦はアタシたちがコウを信じていたからこそ成功したと思うの。

 だから、コウも信じて。」


 俺もつられて涙が出てきた。


「...ありがとうミズナ。

 一瞬でも疑ってしまった俺を許してくれ...。」


「本当はアタシ、...コウの能力が羨ましいのよ。

 アタシの心の中も、全部コウに覗いて欲しいのよ...。」


 潤んだ瞳を輝かせ、俺を見つめるミズナ。


「そんな能力なくたって、ミズナの気持ちは伝わってるさ...。

 ミズナ。俺、ミズナの事...、...す...。」


 ガチャッッ!!

 またも玄関が勢い良く開く。


「わっりぃ!寝坊しちまった!!

 置いて行くんじゃねぇよ姉貴ィ!」


 スパコーーーーンッッ!!!


 ユータンに殴られ、ヒルクが宙を舞う。


「弟がすまんね、コウ...。」


 最高のムードが一気に崩壊した。


 きっと俺の気持ちは、ミズナに伝わってしまっただろう。

 だけど、いつか必ず言葉で伝えるんだ。

 そう誓った。

 


 ヒルクはユータンに正座させられていた。

 昨日は俺が正座させられてたっけ...。


「それと、ウチもごめんさね。コウ。

 ウチが懸賞金の話なんかしちゃったから、コウは驚いたんだよね?

 ウチは仲間を売るような真似は絶対にしないさね!」


 ユータンは決意の表情をしている。

 その様子を見て、正座をしているヒルクも続ける。


「なぁんだ、その話か!

 俺も今朝聞いてビビったけどよ、出会ったばかりだが俺らはパーティを組んだ仲間だ!

 最強の盾ヒルクだぜ?絶対にお前の事は守ってやる...!」


「俺...、みんなの事まだ全然分かってなかったんだな...。

 すまんっ!頼りにしてるぞ!みんな!」


「なんでも頼って欲しいのよ!それに、コウは心の中を覗けないんだもの、まだ分からなくて当然なのよ!

 時間をかけてアタシたちの事、分かってくれたら嬉しいのよ...!」


 ミズナは涙を拭いて頼もしい表情をしている。


「にしても兵士たち、俺が急いでここに来るまでに10人は見たぞ!

 随分と嗅ぎ回ってるみたいだったぜ?」

 

「そうなのよ。さっき紙を届けてくれた兵士さんも、軽くだけど部屋の中を見回して行ったのよ。

 コウも今まで以上に気を付けないと危ないのよ。」


「あぁ、気をつけるよ。

 ...ん?この紙、裏もあるみたいだけど?」


 みんなハッとした表情だ。


「ありゃりゃ、気付かなかったのよ...。

 なになに?生きたゴブリンの引き渡しで、十万ゼニー⁉︎」


「なぁんだ!殺すのがダメなだけで捕獲には報酬が出るのか!

 じゃあ、昨晩俺が考えた作戦で大丈夫そうだな!」


 双子の表情が曇る。

 そっか、この二人は仇撃ちだもんな...。


 ヒルクがこちらを見る。


「すまねぇコウ!少し面食らっただけだ!

 俺らは別に、ゴブリンを苦しませて殺したいなんて、そんなつもりはねぇんだ...!」


「そうさね。捕獲して引き渡したゴブリンはきっと王国が適切な処分をしてくれるはずさ。

 ウチらはそこの判断に任せるよ。」


 この双子は心身ともに本当に強いんだな。


「コウ!アタシが昨日作ったマント、ちょっと着てみて欲しいのよ!」


 ミズナの手には黒いマントが握られていた。

 よく見ると青い刺繍がしてある。

 名前と...、なんだ俺の顔か?俺こんなに可愛くないけどなぁ。


 自然と笑みが溢れるが恥ずかしくて顔を隠す。

 頬を伝う涙は隠せなかったかもしれない。


「...ありがとう。ミズナ。

 こんなに嬉しい気持ちになったのは初めてだ。

 一生大切にするよ...。」


「エヘヘ!どういたしましてなのよ!

 こんなに喜んでくれるなんて思ってなかったから、アタシまで嬉しいのよ!」


 マントだけじゃなく、ミズナの事も一生大切にしたい。

 ミズナの笑顔に元気をもらい、俺は自分の頬を叩いて気合を入れた。


「よし!結局今日やる事は変わらないな!

 今からゴブリンの森へ向かって捕獲作戦開始だ!

 行くぞ!ミズナ!ヒルク!ユータン!」


「「おー!!」」


・・・・・・・・・・・・・・・


 一方その頃、魔王軍ゴブリン討伐兵団は...。


「クソッタレ!何でゴブリン連れてこっち来んだよ!ゲイル!

 火炎熱波ァ!」


「団長!んなこと言ったって、オラ必死で攻撃受けてんだす!無茶言わんでください!」


「アネモネ君。こちらにもヒールくださいよ。

 鈍臭いですね。ほんと。」


「うっさいわね!ジェイ。あんた声小さいのよ!」


「姉御!ワシの守備範囲から出ないでくれよ!」


「んもう!!アンタがついてきなさいよ!ヒュー!」


「おい!ヒュー!俺のアネモネに怪我させてみろ?テメェも追放だぞ!!

 クソッ!このゴブリン、攻撃が効いてねぇのかよ!火炎熱波!火炎熱波ァァ!」


「アッっっつぅぅ!団長の火炎熱波、オラに当たってるだす!

 あっ、ビックリして屁こいちゃっただす...。」


「うるせぇゲイル!テメェがんなとこに居っからだろ!

 ぬ...ぁ、くっせぇぇえ!!

 次邪魔したら本気で狙うぞ!ザコが!」


 コンビネーションは最悪。

 魔王軍最強兵団が数体のゴブリンに手を焼いていた。


・・・・・・・・・・・・・・・


 話は人間界へ戻る。

 

 俺たちパーティはゴブリンの森へ向かっていた。

 目撃情報があった場所まで、あと一時間といったところだ。


「そういや、ミズナが背負ってる缶とホースだけど、それって何なんだ?」


「これはアクアタンクって言ってね、空気中の分子から水を作って発射できるのよ!

 ゴブリンって両手から熱波を出すじゃない?

 対抗手段として今朝思いついて、倉庫から引っ張り出してきたのよ!」


「そんなのがあったのか!かなり使えそうだぜ!」


 俺はアクアタンクをどんな風に使ってやろうか考えながら歩いていた。


 ガサガサ...!


 茂みが動く。こんな場所にゴブリンがいる訳がない。

 まだもう少し先なはずだ。


 ガサッッッ!


 現れたのは、俺が知ってるゴブリンよりも、一回り大きな個体だった。


 パーティに緊張感が走る。

 ミズナはかなり驚いている様子だ。

 無理もない、初めて見る生のゴブリンなんだ。

 

 しかしそれとは裏腹に、臨戦態勢で身構えるヒルクとユータン。

 ユータンはさておき、ヒルクもこんなに真剣な表情をするんだな...。

 男の俺でも惚れてしまいそうなギャップだ。


 ...俺も改めて気を引き締める。

 いよいよ、俺たちの戦いが始まるんだ...!

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