27.モグラの魔族との再会。
俺とミズナとユータンは懐中電灯を持って、急いでエスポワールから出た。
「母さんは服着たらヒルクを起こして来てくれ!」
明かりを照らして機体を見ると、後方が完全に地面に埋もれている。
「やっぱり陥没したのか...。
もしかして、ヒルクが落ちたって言ってた穴と何か関係があるんじゃないか?
なぁ、ユータン。その穴の周辺に土が盛り上がってた場所とかなかったのかよ?」
「あー、確かにあったさね...。
あの土の盛り上がり方、まるで地中にトンネルが掘ってあるみたいだったねぇ。」
「やっぱりな...。
もしかしたらモグラを継承した魔族が近くにいるのかもしれないな...。」
ネコの次はモグラの魔族か。
さて、今回はどんな作戦で行こうか...。
「モグラってあのモグラ?
アタシ、十年くらい生物の研究をしてるけど、ツチノコと同じで図鑑でしか見たことないのよっ!
昔はたくさんいたの?」
「いやツチノコは本当にいない生き物だぞっ!どこで買わされたんだよその図鑑...。
んー、でもそう言われると俺もモグラの生きてる姿は見たことないな...。
モグラの穴とかは畑で見たことはあるけど。」
そんな話をしていると、母さんがヒルクを連れて外に出てきた。
「ヒルク君、無事だったみたいよ〜!」
「あ、あひっ、まだクラクラするぜ...。」
「おいおい、大丈夫かよお前...。
めまいしてんのに出てきてもらって悪いけど、陥没は確認できたし、着陸し直すから中に入るぞ。
あと、この辺りにはモグラの魔族がいるかも知れないから、また明日戻ってこよう。」
「...モ、モグラぁ?」
「あぁ。ヒルクはモグラ知ってるのか?」
その時だった。
急に暗闇から大男の影がヌッと現れ、野太い声で話しかけてきた。
「モグラモグラって、俺のことかいな?」
...⁉︎
コイツ...モグラの魔族だ...!
俺たちは驚きのあまり、言葉を失った。
「お前らもしかして、人間捕まえたんか?
人間の匂いがするだで。」
モグラ男は手にゴブリンの死体を持っていた。
「俺は今から穴ぐらに戻ってメシにするだで。
ほいじゃ、まったの〜。」
そう言い残し、モグラ男が真っ直ぐ歩くとエスポワールにぶつかった。
そして、地面の陥没に気がついた。
「だでーっ!!お前ら俺の穴ぐら壊したんか!」
俺は一旦落ち着き、みんなにテレパシーで伝えた。
(この魔族、目がよく見えてないみたいだ。
俺の合図で一気に畳み掛けたい。
いつでも動けるようにしつつ静かに待機だ!)
「わりぃわりぃモグラさん、人間から奪ったその乗り物運んでたら潰しちまったみたいだ。
けど安心しな。魔王さまから命令の出てた人間のパーティは仕留めといたぜ。」
「ほんまかいな?
俺んとこには、まだ連絡来てないだで。」
「連絡って...?」
「まさか、スマホ配られてないんか?
んー、さっきからお前なんか怪しいだで。」
モグラの魔族はクンクンと鼻を動かし、俺のそばに近寄ってくる。
「...ん?
おい!お前ってよ!裏切り者の魔族じゃんか?」
モグラ男は俺の頭を掴みにかかったが、回避してその腕を握り返した。
「く...、砕いてやるっ!お前の腕っ!」
「...正体現したね。」
グギュゥゥゥ
全開の握力を込めてモグラ男の腕を握り潰す。
「おいモグラ野郎、子供の頃ゼロってアダ名で呼ばれてたよな?お前。」
「子供の頃? 何の話か知らんけど、俺は今も手下にしたゴブリンどもにはゼロって名乗ってるんだで。
お前、何でそれを知ってるんだで?」
「やっぱお前も忘れちまってるか...。
にしても随分老けたな。
おっさんになってから何やらかしたんだよ?
殺人か?強盗か?」
「さっきから何言ってんだで...?
まぁ、俺は殺すよりは痛ぶって半殺しの方が楽しいけど...、いい加減にその手を離すんだでっ!」
「まあ、何も覚えていないってだけ分かれば用はねぇよ。消えろクズ野郎...!」
トドメに冷気も込めようと集中すると、握る力が弱くなったのか、スルリと抜けられてしまった。
「しまった...!」
ゼロは後方確認して地中へと姿を消した。
いつの間にか日も完全に暮れていて、姿を見失ってしまった。
(ミズナ!ジェットパックで飛んで上空から周囲を照らすんだ!)
「了解なのよっ!Vジェットシステム起動ッ!」
うーむ...、せっかくミニスカで飛んでもらってるのに、暗くて残念だぜ。
っと、そんな事考えてる場合じゃない。
(みんなは周囲の地面に全力警戒っ!
あと、間違っても味方に攻撃するなよ!)
ゴゴゴッと地鳴りがするが、どこから聞こえてくるのか分からない。
「キャァァ!コウっ!敵はこっちにいるわっ!」
暗闇の中から母さんの声だけ聞こえた。
声に少し遅れてミズナがライトを照らす。
「...おいっ!母さん大丈夫かよっ!」
見ると、母さんの右脚は完全に地面の中で、ゼロに引き摺り込まれているようだった。
「サヤカ様をッ...離しやがれぇぇ!!」
近くにいたヒルクが叫び、大盾を地面に打ち立てた。
その振動は地中を伝わり、ゼロに大きなダメージを与えた。
「エッハァァァ!!」
エッハァァ...エッハァァェッァァ...!
ゼロのうめき声は地中のトンネルにこだました。
と思ったら今度は地上に姿を現し、石を空中にいるミズナに向かって投げた。
「ミズナッ!避けろッ!!」
カコンッ!という音と同時に、光源が自由落下を始めた。
石がミズナの懐中電灯に当たって落としてしまったのだ。
身体に当たらなくて良かったが、これじゃ本当に何も見えないぞ...。
光源として母さんに火炎を使わせてもいいが、無闇に放射して仲間に当たったら危険だ...。
(全員散開してモグラ男の位置を掴んだら声を出して知らせてくれ!)
...どこだ...、どこから来る...?
「うぐぁぁぁぁ!!」
そんな指示を伝えていると、すぐに暗闇の中からヒルクの悲鳴が、立て続けにユータンの悲鳴も上がった。
...クソッ!ゼロのやつ体格の割に素早いな...。
助けに行く隙すらないぞ...。
自分の無力さを痛感している暇はなく、新雪を踏むギュッギュッという足音がこちらに向かってくる。
この足音は...、重みがあるな...!
「お前かっ!ゼロッ!」
俺は足音に向かって拳を振るったが空を切る。
...アイツはどこだ...?
バゴッ!
「目の前におるじゃん。」
俺は顔面を殴られ、ゼロは冷静な声で挑発してくる。
口から溢れ出た血を左手で拭った。
にしても、昔コイツに殴られた時の事を思い出しちまうな...。
ゼロは余裕があるのか、うぬぼれのセリフを吐いた。
「んー改めて考えると凄いなって思うな、俺はやっぱ。
目は見えないけど鼻は効くからこうやって暗くても動けるんだで? アッアッアッ!
なかなかいないと思うよ。こういう魔族は。」
「ふっ、昔から変わんねぇよな。
お前のその気持ち悪ぃ笑い方はよ。」
「強がりを言ってられるのも今のうちだで。」
再びゼロは顔面に殴りかかってくる。
しかし、今度は打撃が飛んでくる方向は分かっていた。
俺は簡単に左手で受け止めた。
「ゼロ、お前昔から頭も悪ぃよな。
せっかく闇に乗じてるのに、ペラペラ喋ったら場所が分かっちまうだろ。」
俺は掴んだゼロの拳を血に染まった左手もろとも凍結させ、絶対に逃げられない状況を作った。
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