26.ホワイトクリスマス。
ここからは目にも止まらぬ二人の連携が炸裂する。
あの二人の間には長年の経験で培った独自の感覚が共有されているのだ。
「姉貴、アレやるぞ!」
「ああ、いつでもいいさね...!」
ヒルクとユータンは並んでジリジリとゴブリンの目の前に詰め寄る。
「ナ...、何ヲスル気ダ...!」
ゴブリンが身構えた瞬間、二人は神速のステップで左右に同時に分かれた!
ゴブリンからしたらどちらを見ても、もう片方にやられる。いわゆる詰みの状態が出来上がっていた。
「うおらぁっ!」「せりゃぁっ!」
ヒルクは盾でゴブリンの右足を薙ぎ払い、浮き上がったゴブリンの左足はユータンの剣によって切断された。
ヒルクのやつ、盾を攻めに使うのか...。
さっき盾で殴りかかろうとしてたのは、案外ヤケクソでもなかったってわけか。
「マダダ...マダ終ワランッ...!」
ゴブリンは片足で立ち上がるが、ヒルクとユータンに挟まれたままだ。
「アンタ、もう詰んでるさね...。」
「あぁ、俺たちの恨みを買った時からな...。」
ユータンは剣をゴブリンの心臓に突き立てた。
ヒルクは後ろから盾でゴブリンの身体を押し込んだ。
当然、ゴブリンの心臓は盾と剣に挟まれ、血しぶきを吹き上げた。
「グッ...ガァァァァッ!!!」
「すまんね、そのスカーフはウチらの母ちゃんのものなんだ。
返してくれんかい...?」
そう言って、ユータンはゴブリンからスカーフを奪った。
「オレ...モ、ママ...欲シカッ...タ。」
ゴブリンは最後にそう言い残し、荒波が立つ海に飲み込まれた。
「母ちゃん、俺は最高の指揮官に出会えた...。
まだまだそっちにゃ行かせてもらえそうにないぜ。」
しばらく静寂の時が流れた。
(ヒルク、ユータン。ここから北に行ったところに平地があったから、そこで待ってるぞ。
二人でゆっくり話しながら来いよ...。)
俺はテレパシーで二人にそう伝えた。
「あの二人、いいコンビネーションだったわね...。」
「...天国のお母さん、見てるかな...?
背中を見て育った二人も、立派な戦士になったのよ...。」
・・・・・・・・・・・・・・・
俺は平地にエスポワールを着陸させ、ヒルクとユータンを待っていた。
辺りは少し薄暗くなっていた。
「にしてもヒルクのやつ、ドアのロック壊しやがってよぉ。これから高速飛行できっかな...。」
「んー...、多分だけど、この壊し方なら時間が経てば自動修復機能で直りそうなのよ!」
「本当か?ミズナ。
でも、直るまではドア閉まらないみたいだな...。
まあ、雪が降るほど寒くはないからいいけどよ。」
「それにしても、私たちの時代じゃ想像もつかなかったわよね、機械の自動修復機能なんて凄い技術。
まるで生き物みたいだわ。」
「確かに千年前じゃ考えつかないよな、母さん。
あ、今の話で思い出したけど、俺たちの時代じゃ今くらいの時期はどこも雪が積もってたんだぜ。
今は一番寒い時期でも雪って降らないのか?」
「そうなのよ。アタシ、雪って見たことないのよ。」
「そっか、この世界から雪は消えちゃったんだな...。
あ!待てよ。俺とミズナでなら降らせられるぜ。」
「確かにっ!アタシ、やってみたいのよ!
ヒルクとユータンのこと、驚かせてやるのよっ!」
俺たちは外へ出て早速準備を始めた。
「コウ、行くのよ!アクアタンク霧吹きモーードッ!」
「冷気寒波!」
プシャァァ!と勢いよく上空に放たれた霧を冷却した。
...すると、チラチラと雪が降ってきた。
雪...というよりは、細かい氷の粒なのだが。
「わぁ...、綺麗なのよ...。」
「あぁ、そうだな。
けど本物の雪はもっとふわふわなんだぜ。」
しばらく待つと、辺り一面が真っ白になった。
少し暗くて見えにくかったが、正真正銘のホワイトクリスマスだ。
そう。今日は暦の上では十二月二十四日なのだ。
「コウッ!ミニスカだとちょっと寒いのよっ!」
ミズナはそう言って俺にくっついてきた。
それが本当に愛おしくて、俺は肩を抱き寄せた。
無言で抱き合ってどれくらい経っただろう...。
そ、そろそろキスの流れか...?
母さんもエスポワールに戻ったみたいだし...、い、いけるか...。いくぞ...!
ミズナの顔を見ると、いつもの大きな瞳は閉じられていた。
あっ、危なかった!もし今ミズナが目を開けてたら、俺のヨコシマな考えが漏れてしまっていた...!
と、とにかくっ、お...、俺も目を閉じて...、えっと、顔を近づけてみるか...。
やばい...、ミズナの息がかかるっ。いいニオ...じゃなくて、てことは俺の息もかかってるのか...!
んんん、それでもミズナは目を閉じ続けてるってことは...、い、いいんだよな...?
...キス、するぞ...。するぞ...。
「お〜い!相棒〜!」
雰囲気ブチ壊しの元気のいい声と共にヒルクとユータンが歩いてやってきた。
俺たちは気恥ずかしくなって、ふいと腕を離した。
...が! 許さんっ、ヒルク!!
「やぁ、二人とも、遅かったじゃないか。」
うーん、なんともぎこちない入りになってしまった。
「すまんね。ヒルクがデカい穴に落ちちまってさ。」
「あぁ、かなりビビッたぜ。
暗くて気づかなかったんだけどよ、人間が入るサイズの穴が掘ってあったんだよ。」
「なんだよそれ、ウソくさいなぁ。」
「ウソじゃねぇっての!ほら、俺のズボン、見てみ?」
「まあ、確かに泥だらけだな...。
じゃあ今晩はここで休んで、明日の朝調べるか。
てか、母親のスカーフはユータンが持つことになったのか?」
「だってよぉ、このスカーフは女物だろ?
だから姉貴に大事に持っててくれって頼んだんだ。」
「どうだい?似合ってるかい?
ヒルクにはさっき、母ちゃんに似てるって言われたところさねぇ。」
「確かに!面影あるのよっ!」
「そうかい?なんだか嬉しいさねぇ。
それより気になるんだけど、この地面のは雪かい?」
「さっきね!雪見たことないねって話をしてたのよ!
それで、コウと二人で降らせよ〜ってなって、ちょっと遊んでたのよ!」
「能力使うの結構疲れたけどな...。
でも綺麗だろ?俺が昔生きてた時は、冬って言ったらこの景色だったんだぜ?」
「あぁ、最高だぜ!これがずーっと先まで真っ白になってたら、すんげぇ絶景だろうな。
なんかこう、恋人と抱き合いたくなるような、そんな気持ちになっちまうな。ムハハハ!」
俺とミズナは恥ずかしさで顔を背けた...。
まぁ、なんだかんだでヒルクとユータンは元気だった。
なんなら気持ちの整理がついたのか、いつもより自然に笑えてるようにも感じた。
「アタシ、そろそろ脚の寒さの限界なのよ!」
「そうだな。母さんも待ってるし、そろそろ戻るか。」
俺たちは雪の上をギュッギュッと音を鳴らし、小走りでエスポワールに駆け込んだ。
しかし、全員乗り込んだところで、
ーガクンッ!
な、なんだっ⁉︎
「ど...、どうしたんだい⁉︎
エスポワールが傾いちまったさね!」
「これ...多分、地面が陥没したのよっ!」
ガラガラッとシャワールームが開き、薄手のハンドタオルを前に掛けた母さんが飛び出てきた。
「キャッ!ごめんなさいっ!
みんないつの間に戻ってたの...⁉︎」
「サッ⁉︎サヤカさ...ま...。」
バタンッ!
ヒルクは鼻血を噴き出してぶっ倒れた。
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※作者は特級の声優ヲタです。キャラクターの脳内再生CVなど、お気軽に自由なコメント待ってます!




