23.禁忌の実験と新たなる装備。
母さんは千年前に行っていた禁忌の実験について語り始めた。
「前に動物の能力継承の注射をすると被験体が発熱で亡くなってしまうってのは話したじゃない?
ただ、亡くなった後でも、身体の一部の細胞は生き続けていたのよ。」
「それ、母さんは何に活かそうとしたんだよ?」
「当時は争いとかない時代だったから、暖房や調理器具への応用を目指していたわ。
まあ、もちろん倫理観に欠けてるし実現はしなかったけどね。」
「なるほど。
でも今ならこの戦争に役立てられるって母さんは考えてるわけだな?」
「そうよ。実はね、もう夜のうちに作ってあるの。
一つはミズナちゃんのアクアタンクよ!
お母さんの細胞を使って、エスポワール号の垂直離陸機構を小型化させたジェットパックを追加したの。」
「それ、かなりいいと思うぜ。ミズナの狙撃位置が立体的になれば戦略の幅が広がるしな...。」
「二つ目はね、もうユータンちゃんに付けてもらってたの。ほら見て!」
それを聞いて、ユータンの方に目をやると、なんとスマートでメカメカしいグローブを左手に装着していた。
「見なよ、コウ。ウチの手、カッコいいだろ?」
「なんだよそれっ!めちゃくちゃイカすじゃんか!」
「これはね、手首のとこにある小さなタンクで、アンタの細胞を培養してるのさね!
手をこんな形にするとね...、」
ブォォォォオ!!!
「うおっ!冷てぇ!吹雪みたいじゃねぇか!
てか、家の中めちゃくちゃになっちまったぞ!
母さん、機械音痴のユータンでも使えるように直しておいてくれ...。」
「す、すまんさねぇ...。二人とも...。」
家の中はあらゆるものがカチンコチンに凍結していた。
「まったく...。寒ぃから外出るぞ!俺。」
外へ飛び出すと、そろそろヒルクの髪は整いそうだった。
ミズナはこういう作業が好きなのか、楽しそうにしている。
「ヒルク〜。
かゆいところはございませんか〜?なのよ。」
「あ〜、足の裏が...。」
「ちょっと!普通は顔の周辺で言うのよ!」
ミズナと楽しそうにしているヒルクに少しヤキモチを妬いた。
「あっと、クシが落ちちゃったのよ。よいしょと。」
...///
ミズナがクシを拾う時に胸元から綺麗な白い肌が見えてしまった...。
気まずさを誤魔化すために、とりあえずミズナに話しかけた。
「んっ、ミズナ。ヒルクの髪、いい感じじゃないか。」
「そうなのよ!もうそろそろ仕上がるのよっ!」
そう言うと、ミズナは慣れた手つきで髪を整えていく。
「ふぅ。完成なのよ...!」
「サンキューな!ミズナ!
どうよ相棒!ちょっと、感想言ってみ?」
「あぁ。ビシッと決まっててカッコいいと思うぜ。」
「だろぉ?」
そう言ってヒルクが後ろを振り返ると俺は気づいた。
「...あれ、若干ナナメってないか...?」
「...ちょっと失敗しちゃったのよ...。」
「ん?お前らぁ、何コソコソ話してんだぁ?」
ヒルクの後ろ髪の事は話さないように、後で残りの四人で誓いを交わそう...。
とりあえず、今は無理やり話題を変えるか...。
「あ、あのさ!なんか今度は勝てそうな気しないか?
人間組の戦力がかなり強化されたと思うぜ!」
「そ、そうなのよっ!
ヒルクはスタンガン、ユータンはアイスグローブ、アタシはジェットパックが使えるようになったのよ!
後でみんなで練習するのよ〜!」
「確かにな!俺もスタンガンの練習してぇぜ!」
なんとか髪の話題をそらし、みんなで練習する事になった。
「あらあら、みんな楽しそうね!
私も魔力の扱いに慣れてきたし、新技の練習でもしようかしら〜。」
「おいおい、新技って何だよ、母さん。」
「ふふ。見せてあげる。ほらっ!」
すると、母さんの手の上に弓が現れた。
「え?今どっから出したんだよそれ!」
「ふふ。これは炎の弓よ。
昨日、試しにやってみたら、イメージしたものを炎で具現化できたのよ!
かなり正確にイメージしないとダメみたいだけど。」
「確か母さんって学生の頃は弓道やってたんだっけ?」
「そう!それでイメージできたのよっ!
あと、そもそもこの能力はヒカリのものだと思う...。
あの子、お絵描き大好きだったでしょ?」
「なるほどな。ヒカリは想像力豊かだったからな。
いつも俺が帰ると絵ばっかり描いてたよ。」
「ヒカリがくれたこの能力。
必ず使いこなしてみせるわ...!」
しばらく練習をしていると、気づいたら夕方になっていた。
目的地まではおよそ十二時間といったところなので、みんなに提案した。
「なぁ、みんな。今のうちに出発して因縁の湿地帯へ向けて夜のうちに移動しないか?
オート操縦機能もあって俺も寝れるから、そこら辺は気にしないでくれ。」
「アタシも同じ事考えてたのよ!
一応アタシも操縦できるから、コウは安心して休んでても大丈夫なのよ!」
「お母さんもいつでもいいわよ〜!」
「あぁ!ウチもアイスグローブの確認は出来たし、いつでも行けるさね!」
「俺も早く実践でスタンガンビリビリっとさせてぇぜ!」
「みんな準備バッチリだな!さぁ、乗ってくれ!」
トントントンッとみんな勢いよくエスポワールに乗り込むが、その中に一つ聞き慣れない足音が聞こえた。
「ん?誰か靴でも新しく変えたか?」
「どうしたの?コウ。
誰も靴なんて変えてないと思うのよ。」
「そうか?それならいいが...。とにかく、次に帰ってくるのはきっと魔王を倒してからだ...!
希望の船エスポワール号!再出航だっ!」
「「「「おー!」」」」
エスポワールの目的地を設定し、俺たちは眠りについた。
・・・・・・・・・・・・・・・
ー目的地周辺まで、およそ十五分です。ー
エスポワールの機械音声で俺は目が覚めた。
「お〜い。みんな、起きてるか〜?」
眠気でしなしなの声しか出ないが、なんとかみんなを起こさなきゃな。
「お!やっとお目覚めか、相棒!」
元気そうなヒルクの声が聞こえて後ろを見ると、みんな地上の監視をしていた。
「なんだ、みんな早起きだな。
ゴブリンの群れは見つかったか?」
「いや、それが全くいないのよ!
もしかしてだけど、魔族もゴブリン狩りを本格化させてるのかもしれないのよ!」
「いや、俺はおそらく副産物的にゴブリンの個体数が減っただけだと思うな。」
「どういうことなのよ?」
「俺が前に所属していた魔王軍ゴブリン討伐兵団は魔界で唯一のゴブリン狩りの部隊だったんだけど、こないだのネコ女は当時メンバーじゃなかったんだよ。」
「相棒、じゃああのネコ女は新メンバーってわけか?」
「いや、どうも単体で動いてるみたいだし、魔王からの命令で俺を殺そうとしてたんだ。
そして、この湿地帯は魔界までかなりの距離がある。とても食糧なしで移動できるとは思えない。」
「お母さん分かったわ!
つまり、魔族たちが裏切り者をやっつけに人間界近くまで来てるけど、食糧がないと活動を継続できないからこの辺りのゴブリンを食べてるってわけね!」
「そういうことだと思う。
これからは魔族よりゴブリンの方が珍しくなるかもな。」
その時、ヒルクが大声を上げた。
「おい!見ろよ!
あの時のネコ女、まだあんな所にいやがったぜ!
...てか、俺らに気づいたみてぇだな...。
こっちに来るぞ!」
「よし!エスポワール、着陸だ!全力で迎え撃つぞ!」
全員エスポワールから降り、陣形を整えた。
「来たのよっ!」
森の中からネコの如く四足で駆けてくるネコ女、ミィ。
姿を現して、ものの十秒ほどで接敵した。
「ざぁこ♡見つけたにゃん♡
全員ミィの爪で引き裂いてやるにゃぁぁあ!」
(ヒルクッ!しっかり受け止めろよ!
ゼロ距離で電撃をお見舞いしてやれ!)
「任せろっ!」
「お前が出てくる事は分かってるにゃ!
作戦通りに行くと思うにゃよっ!」
ミィは盾に付き合わず、そのままヒルクの肩を足場にして高く飛び上がった。
「すまねぇ、相棒!そっちに行かせちまったっ!」
(くそっ!俺は距離を取りながら防戦をする!
ミズナはその隙に巨大な水溜まりを作るんだ!
それ以外のみんなは俺を追いかけるネコ女を追いかけてくれ!)
...チッ、考えていた作戦が台無しだ...。
けど今はとにかく、あのネコ女の攻めを防ぐしか...!
「にゃはっ!まぁた逃げてばっかりにゃん?♡
わざわざ戻ってきたから少しは考えがあるのかと思ってたのに、残念にゃん...。」
「お前こそ、相変わらず隙だらけの大振りじゃねぇか。
いつになったら引き裂いてくれるんだ?」
「う、うるさいにゃん!
逃げてるだけのザコに言われたくないにゃ!」
...そろそろ水溜まりが出来たな。行くかっ!
俺は後方へ宙返りし、着地点にある水溜まりに向かって思い切り拳を振り下ろした。
バッシャァァァ!
巨大な水の柱が目の前に現れる。
「凍りつけっ!冷気寒波っ!!」
それは一瞬で氷の防壁となり、ミィは激突した。
「に、にゃぁぁぁぁ...!!」
ミィは後方へ吹き飛んだ。
かろうじて受け身を取ったが、後ろをついてきていた三人はミィを取り囲み、ジリジリと間合いを詰める。
「俺を踏み台にしたんだ、高くつくぜ?」
「ザコに興味はないにゃ...!」
ミィは三人を順番に見ると、母さんに目を付けた。
「にゃ?お前も魔族かにゃぁぁぁ!
裏切り者は...、死ねっ!!」
ミィは一直線に母さんに突っ込んだ。
爆速の突進に体重を乗せた渾身の一突きは...、
母さんの心臓を貫いていた...。
...!
「...母さぁぁぁぁぁん!!!!!!」
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