21.学生時代の記憶。
ミズナは小さい箱の中身を取り出そうとする。
い、いよいよ、装着されるのか、俺の...。
「あっ!その前に大事なの忘れてたのよっ!
はいっ!ヘルメット装着っ!」
ミズナがそう言うと、こっちの頭に被せられた。
ヘルメットを。
そして、箱の中身も取り出して見せてくれた。
「...って、え?なんだその瓶は。」
「これね〜!高級マッサージオイルなのよ!
やっと使う時が来たのよっ!」
「え?ミズナ...さん。気持ちよくしてくれるってのは、もしかして...?」
「日頃から疲れてるコウにマッサージしてあげるのよっ!
背中のツボとか勉強してたんだけど、コウが前からって言うから仰向けでも頑張るのよっ!」
そういう事だったのかよぉぉぉ!!!
まあ、オイルマッサージもエロいのでOKです♡
「せっかく勉強してくれたんなら背中のツボお願いするよ。」
「了解なのよっ!
じゃあお客様、うつ伏せでお願いしま〜す!」
「あぁ、分かった。」
アレがバレないようにくの字になって体勢を変えた。
「では、お背中にオイル失礼するのよ〜!
わ、思ったよりコウの背中ガッチリしてる...。
けど、筋肉がスゴく凝ってるのよ。」
「そうか? 確かに最近は常に力入ってたかもな。
...ああっ、そこ、気持ちい♡」
「きっと人間界に来たばっかりの頃の警戒心みたいのが身体に残ってるのよ。
コウ、ちょっと深呼吸してみて欲しいのよっ。」
「こうか?すー...、はー。」
「いい感じ!ドーパミンがドバドバなのよっ!
だんだん身体から力が抜けてくの分かる?」
「ぁ、あぁ...、だんだん眠く...なってきたよ...。」
「あは、眠くなっちゃった?
きっと身体が正直に喜んでくれてるって事なのよ。
...夢の世界、楽しんできてね。おやすみ...。」
・・・・・・・・・・・・・・・
...はっ!いかん!俺、寝ちまってたのか...。
んんっ、ここは...、学校...?
「なんだでコイツ!
なんで休み時間ずっと机で寝てんだで!
アッアッアッ!」
「笑ったら可哀想だでよゼロ様っ!
コイツ友達いねぇんだからコレしかする事ねぇんだで。」
周りで子供が何やら盛り上がってる声が聞こえる。
...が、俺は何故か顔を上げられない。
キーンコーンカーンコーン
この音をどれだけ待ち侘びたか、休み時間が一番の地獄だ。
授業中は規則正しく並んだ席で座っていればいい。
ただ、休み時間は気体分子の自由運動みたいに動き回る子供の中で、俺一人が静止している異物だった。
俺だけが冷たい固体分子だった。
「「「先生さよーなら!」」」
同級生が先生に帰りの挨拶をしているが、俺は脇目も振らずにその場を立ち去る。
...やっと、帰れる。
面倒ごとに巻き込まれる前に走って帰るのが俺のルーティンだ。
しっかしこのランドセル、キィキィうるさい。
随分と派手に壊されたもんだな。
「ただいま...。」
「おかえり!おにぃちゃん!
おやつのプリン、テーブルにあるよ!
ヒカリのは先に食べちゃったけどね〜!」
「たまにはプッチンの方のプリンも食べたいよな。
寒天で作った安っぽい味の方が俺好みなんだよ。」
「なぁに通ぶってんのよ〜!
それより早く一緒にアニメ見よ!ヒカリ、お絵描きしておにぃちゃんが帰ってくるの待ってたんだから!
今日はいよいよエスポワール号が爆発する回だよ!」
なんだかんだ妹との仲は良かった。
けど、こんな明るくて暖かい妹の側にいると、俺は溶けてしまいそうで怖い。
その後は父さんも仕事から帰ってきて、一緒に夕飯を食べた。
俺の家は3人暮らしだ。母さんは毎日泊まり込みの仕事らしくて、ほとんど帰ってこない。
食べ終わると父さんが楽しそうに話しかけてくる。
「コウ〜!お母さんとビデオ通話繋がってるぞ〜!
昨日も一昨日も顔出さなかったんだから、今日こそは話しなさい。
お母さん最近は仕事の合間に海外のウマいフルーツを食べるのに凝ってるんだとさ〜。」
「いや、いいよ。風呂入ってくる。」
子供の頃から毎日決まった時間に母さんとビデオ通話するのが日課だった。
だけど最近、仕事ばかりで家に帰ってこない母さんが嫌いになっていた。
「ふぅ...、あったまる...。
っつ!今日の傷口は染みるな...。」
俺の身体はボロボロだ。
クラスのイケてる男子にイジメられ、ほとんど追放状態だ。
風呂から上がると、寝返りをうつだけで痛む身体をほんの少しだけ休めさせた...。
翌朝、俺は嫌々学校へと向かう。
最近は妹とは別で登校するようになっていた。
朝のホームルームになると、担任の気の抜けた声と共に、教壇には初めて見る顔の男子が立っていた。
「うん。みんな、はじめまして。マオって言います。
前の学校では特設の陸上部に入ってたから、体力にはそこそこ自信があるんだ。
今日からよろしく。」
パチパチパチと拍手が鳴る。
俺も転校初日はこんな風にみんなに迎えられたっけ。
そんなこんなで午前中が終わり、また今日も地獄の昼休みになった。
みんな転校生のマオ君に興味津々で、盛り上がっているように聞こえた。
聞こえたってのは、もちろん俺は得意技の寝たフリで机に突っ伏していて見えないからだ。
「うん。さっきから気になってたんだけど、あそこの席でずっと寝てる子、大丈夫なのかい?」
マオ君は悪気なく本当に気になって聞いてるだけみたいだ。
「アイツ、転校してきていきなりゼロ様の彼女に手ぇ出したんだで!」
「そうだよ、しかも体育のテニスの時に完封勝利してゼロ様を馬鹿にして恥かかせたんだで!」
コイツらが言っているゼロ様ってのは、もちろんアダ名だ。
何ごっこか知らんが、強さ順にナンバーで呼び合っているらしい。
そして一人だけ桁違いに強いから、ナンバーはゼロってわけだ。
クラスメイトは口々にコウが気に食わない理由を言った。
それを聞いたマオ君が俺に近寄ってくる。
「やぁ、コウ君。
ひどい傷だね。アイツらにやられたのかい?」
「まあ、普通に生活してたら身体中こんなに怪我する事はないと思うぜ。」
「うん。そうだね。
ところで、君はゼロ様って奴の彼女のどこを好きになったんだい?」
「...知らねぇよ。別に好きじゃねぇし。
向こうが勝手に俺に告白してきただけだよ。」
「うん。テニスは?」
「それだって俺は普通にプレーしただけだ。」
「うん、そうかい。分かったよ。
それが本当なら、ゼロ様はコウ君よりもブサイクで、運動音痴ってだけじゃないかい?」
それを聞いたゼロ様がマオ君に激怒する。
「おい転校生!オメェも俺を馬鹿にするんかヨォ!
ほらなね、コウと同じ目に合わせてやるだで!」
「うん。どんな目に合わせてくれるんだい?」
「ほならぁ、まずはオメェのランドセルを...、」
バゴォ!
一瞬の出来事だった。マオ君がゼロ様をぶん殴った。
ゼロ様は見事なトリプルアクセルを決めかけたが、着地で転倒して減点が入る。
「コウ君。今まで辛かっただろ?でも大丈夫。
これからは俺がついてるから、心配いらないよ。」
その光景を見たクラスの女子が一斉に騒ぎ立てた。
「ギャー!先生!ゼロ様とマオ君が喧嘩してますっ!」
「うん。これは喧嘩じゃないよ。
立場の弱い者をイジメた罰だよ。制裁さ。
ゼロ様だけじゃない、君たち男子も同罪だよ。」
「ヒィッ!や、やめるだで!」
「コウ君がやめれくれと言ったとして、君たちはそれを聞いていただろうか?どう思う?」
「いやっ...、そ、それはっ...。」
バコォ!ボカッ!
「うん。コウ君が受けた身体と心の痛みは、そんなんじゃ済まないはずだよ。」
それから程なくして、先生が走って教室に来た。
「何やってんだでっ!お前たちっ!」
マオ君は大人しく職員室へ連れて行かれ、ゼロ様たちは保健室へ行った。
教室に残った男子は俺だけだった。
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