11.新たなメンバーは母さん⁉︎
無慈悲にも国王の宮殿を追い出された俺たち。
いや、本当は無慈悲とは正反対の感情から国王は俺たちを突き放したのだろう。
偉大なる国王の真の姿は、きっと不器用な父親なのだ。
「母さん、俺たち今からミズナの家に戻ってからゴブリン捕獲、いや討伐に行くんだけど、本当についてきてくれるのか?」
「あの場では国王にそう言ったけど、みんながダメって言うなら、お母さんは個人で動くつもりですよ。
それに、コウもお母さんと一緒じゃ恥ずかしいでしょ?ふふ。」
「バカ!そんな歳じゃねぇって!」
「アタシたちはコウのお母さんにも、是非とも協力して欲しいって思っているのよ!
ね!ヒルク!ユータン!」
「そうだぜ!パーティに魔族が二人もいればゴブリンなんか相手じゃないぜ!」
「逆にウチらが足引っ張んないように頑張らなきゃだねぇ!
しかも、これからは自分らの手でゴブリンの息の根を止められるんだ。
ますます気合いが入ってきたさね!」
「頼もしくてユニークな仲間を持ったわね。コウ。
じゃあ改めまして、私はコウの母のサヤカよ。あまり気を遣わないで接してくれると嬉しいわ〜。
それと、いつもウチの息子と仲良くしてくれてありがとうね〜!」
「あ!アタシたちも自己紹介しなきゃなのよ!
アタシはゴブリンの研究をしてるミズナ!
けど、戦闘ではあんまり役に立たないのよ...。」
「ウチはユータン!
戦闘では愛用のソードでの近距離戦が得意さね!」
「俺はヒルク!パーティ最強の盾だ!
お美しいサヤカ様を守るためなら、どんな攻撃だって受け止めてやるぜ!」
「あらあら、お美しいなんて!
私もうオバさんよ〜?ふふ。」
ユータンがヒルクの頭にチョップする。
「ちょっとバカ弟、アンタもしかしてサヤカさんの事、誘惑しようとしてるわけぇ?」
おいおい、ヒルクが俺の新しい父親なんて展開は勘弁してくれよ...。
「弟...?もしかしてユータンちゃんとヒルク君は姉弟なのかしら?」
「あぁ、言い忘れたけど、ウチらこう見えて双子なんさ!」
「あらあらそうだったの!最初見た時からそっくりだなぁって見てたわよ。ふふ。」
「ウチをこんなアホ弟と一緒にしないでくださいよ...。
そういえば、サヤカさんは魔力を使えるのかい?」
「もちろん使えるけど、その聞き方、もしかしてコウは使えないの?」
「ああ。俺は他の魔族やゴブリンみたいに熱波を放出する事はできない...。
だが、何故か逆に冷気なら放出できるようになったんだ。」
「そうだったの...。ごめんねコウ、きっとそれは私のミスよ。
私は研究者だったけどドジだから、きっとコウの注射をする時に、本当は動脈に注射するところを、間違えて静脈にしてしまったかもしれない。
それじゃきっと、能力の発現も遅かったんじゃない?
千年間、それが気になって眠りが浅かったわ...。」
「オイィぃぃ!!研究者×ドジっ子って一番アカンやろっ!!
ってか、眠りが浅いとかそういう次元の話じゃねぇだろォォォ!!」
俺の母さんは明るくて強くて、たまに冗談を言う人みたいだ。
まるでどこかのリケジョちゃんみたいだな。
と言うか、リケジョはみんなこうなのか?
「なんだかコウが楽しそうで、アタシ嬉しいのよ!」
ミズナもニコニコしている。
新しいパーティメンバー(母親)が加わって、今まで以上に活気が溢れていた。
お互いの事をたくさん話し合った。
まるでクラスに転校生が来た時みたいな、そんな感じだ。
...テンコーセー?なんだっけそれ。
俺たちはミズナの家へ向かった。
・・・・・・・・・・・・・・・
「ふぅ。やっと着いたのよ〜!」
「ここがミズナちゃんのお家?立派じゃない!
コウと二人で住んでるのよね?」
「はい!そうですよ〜!
コウと一緒に寝たこともあるのよっ!」
それを聞くと、母さんがイヤらしい目つきで俺を見てくる。
「...ふぅん?コウも大人になったねぇ?」
「う、うるせぇ!別に何もしちゃいねぇって!」
「でね!せっかくこれから一緒に戦う仲間になったんだから、今日からコウのお母さんにもここに住んで欲しいのよっ!」
「あら、いいの?ミズナちゃん。
私、二人のお邪魔にならないかしら?」
と、言葉では言いつつも、お邪魔したそうな風だ。
俺としてもミズナとの二人っきりの生活が終わってしまうのは寂しいので、なんとか母さんを追い出そうとする。
「母さんは国王に頼めば、立派な豪邸用意してもらえるんじゃないか?」
「そ、そんな事できないわよっ!私だって国王の前ではめちゃくちゃ緊張してたんだからっ!」
「まあ、確かに母さん、今思えば国王の前では別人のようにお淑やかだったよな。
あれ、緊張してたのか。」
母さんは青い耳が真っ赤になっていた。
ミズナはどうしても母さんに住んで欲しいのか、提案を続ける。
「それに、実はアタシの家、もう一つお部屋余ってるのよ〜。
だからその部屋を有効活用してもらおうと思ったのよ!
ほらっ!...って、あれ??」
と言い、ミズナは部屋の扉を開けようとするが、なかなか開かない。
見かねた俺は、ミズナを手伝う。
「この扉、建て付けが悪いのか?よしミズナ、ちょっと貸してみろ。
...ふんっ!」
俺が扉に体重をかけると、バタンッと勢いよく扉が開いた。
すると、埃まみれのガラクタ部屋が姿を現した。
「エヘヘっ。お家買ってから一度も使ってないからこの有様なのよ...。
前に住んでた人が使ってたままみたい...。」
リビングにいたヒルクが扉の音を聞いて駆けつける。
「だっ、大丈夫ですかっ!サヤカ様っ!
今の音は何ですかっ!」
「ありがとうヒルク君。大丈夫よ。
ミズナちゃんに私のお部屋を用意してもらったんだけど、なかなか開かなくて、コウが力技でこじ開けたのよ。」
なるほどと言わんばかりに、ガラクタ部屋の中を見るヒルク。
「こりゃぁ...、俺が掃除するしかありませんね。
よっし!今からこの部屋の大掃除だ!
俺はサヤカ様のために、ミズナはこの家の主として全力で片付けに取り掛かるぞ!」
「まっかせるのよっ!
じゃあ、コウはお母さんと一緒にいつものレストランでお昼ご飯のテイクアウトをお願いするのよ!」
「俺と母さんの魔族二人で大丈夫かな...?
また前みたいに追いかけられたりしたら面倒だぞ。」
「パパ...、いや国王の宣言で街の人たちの魔族への誤解は解けてるから、安心して外に出れると思うのよ!
やっぱり気分転換に堂々と街を歩けると気持ちいいのよ!」
それを聞いたユータンが任せろと言わんばかりの表情で話始める。
「いざと言う時のために、ウチがついて行くさね!
コウは初めてのんびり散策できるだろうし、サヤカさんも安心して街の雰囲気を感じて欲しいし。」
「ありがとうユータンちゃん。」
「助かるぜ、ユータン。
じゃあ、レストランに行く前に少し散歩でもするか!」
俺は椅子に掛けてあったマントを羽織った。
外へ出る準備を終えると、ミズナが言う。
「コウ、もうそのマントはいらないと思うのよ。」
「いや、これは俺の宝物だ。一生使い続けるよ。
まあ、フードまでは深く被らなくてもいいかもだけど、背中を包み込んでくれるだけで安心するんだ。」
そう言って俺は母さんとユータンと街へ出た。
ミズナは嬉しそうな顔をしている。
ヒルクはどこから手をつけようかと頭を悩ませているようだった。
・・・・・・・・・・・・・・・
俺は初めてマントのフードを被らずに人間界を歩く。
母さんと二人で並び、それをユータンが尾行するようなスタイルだ。
街へ出るための街道を歩きながら、俺は母さんに疑問をぶつけた。
全てが衝撃過ぎて、あの場では話せなかったからな。
「なぁ母さん、俺って昔はどんな人だったんだ?」
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