09.国王の宮殿へ侵入。
次の日、俺たちパーティは昨日捕まえたゴブリン二体を引き渡しに、国王宮殿を訪れた。
「おはようございます。ミズナ様御一行ですね?
毎日ゴブリンの捕獲、感謝しております。
...と⁉︎ なんと、本日は二体ですか⁉︎」
毎日来ているミズナたちは、衛兵にとっては常連扱いみたいだな。
「そうなのよ!昨日は二体同時に捕まえたのよ!」
「いやはや、感服いたします。
...おや?この方は...?」
衛兵が俺のことを気にしている様子だった。
いつもいない男がいるんだ、無理もない。
それだけじゃなくて、黒いマントにフードも被っている。
怪しさ満点だろう。
すると、ヒルクが衛兵に説明し始めた。
「いやぁ!コイツは俺たちパーティに憧れてたらしくて、昨日から参加させてやったんだ。
戦闘の腕は確かだったがよ、とにかく無口なヤツなんすよっ!
あんまり気にしないでくれっ!」
衛兵は、的を得ない表情をしているが、
常連パーティという事もあり、中へ通してくれた。
いよいよゴブリンの引き渡しを行う建物内に侵入する。
前に聞いた話の通り、本当にすんなりと取り引きは終わった。
「うっし!じゃあ帰っか!」
ヒルクがそう言い、建物から出ようとすると。
ベテラン風の兵士に声をかけられた。
「あー、ミズナ様御一行。少しお時間いいですかな?
実は、国王が最近のあなた方の活躍を聞いてぇ、是非とも会いたいとねぇ、仰られているんですよぉ。
こちらに来て頂いてもよろしいですかな?」
俺は危険を察知し、ミズナへ向かって能力を発動する。
(ミズナ、これ以上は長居できない。
バレるのも時間の問題だぞ。)
「そうね、コウを国王に近づけるのはマズいと思うのよ...!」コソコソ
それを聞いたユータンが兵士に話す。
「兵士さん、すまないねぇ。
ウチらこれからゴブリンの捕獲に行きますので、また後日って事にできないかい?」
「あー?いえいえ、こちらこそ伝わってなくて申し訳ないですねぇ。」
この兵士...、何を言い出すんだ⁉︎
「あー、つまりねぇ。
...あなた方に拒否権はないんですよ。」
その瞬間、近くの衛兵がゾロゾロとやってくる。
俺たちは、なす術なく連行されてしまった。
・・・・・・・・・・・・・・・
俺たちは軍事裁判所のような建物に連れてこられた。
そこに立っていたのは紛れもない国王その人だった。
後ろには数人の取り巻きがいる。
場の空気が張り詰め、国王は独特のペースで話し始めた。
「あなた方がミズナ様御一行ですね。
お噂はかねがね伺っております。
王国を代表して感謝申し上げたく、お呼びいたしました。」
本当にそれだけのためか?
ずいぶんと手荒な歓迎だったが...。
国王にはミズナが代表して答えるが、いつになく緊張しているようだ。
「あ、ありがとうござますなのですよ!
アタシたちは自分のためにゴブリンを捕まえていただけ、なのですので...、
お役に立てていたのなら、こ、光栄なのですよ!」
「はっはっは。ずいぶんと緊張されているみたいですね。落ち着いてください。
実は私があなた方にお会いしたかったのは、もう一つ理由があるんですよ。」
「そ、その理由って、何なのですか...?」
「そこの黒いマントを羽織っている者。
貴方、魔族ですね...?
私たちは貴方にお話ししたい事があるのです。」
...⁉︎
バレ...てたのか...?
俺は視界が狭くなるような感覚に襲われた。
「...と言っても、お話ししたいのは私ではなく、こちらの者なのですが。」
国王が指し示したのは赤いフードを被った取り巻きの女性だった。
確かにこの人は最初から違和感があった。
その女性はフードを取りながら前に出て話し始めた。
「では、失礼したしますわ。」
フードを完全に取ると、その女性は肌が青かった。
...魔族だ。
国王の取り巻きの中にも魔族がいたのだ。
だが、俺はその魔族の女性に見覚えがあった。
「コウ。私の事を覚えていますか...?」
「...もしかして、母さん、なのか...?」
魔族の女性は泣きながら俺の方へ駆け寄ってきた。
俺は強く抱き締められた。
「コウっっ!!生きていたのね...!
ずっと...ずーっと会いたかった!!
辛い思いさせてごめんなさい。くうっ...く...ううぅ...ううぅぅぅ。」
「でも俺、何故か貴女の事は直感で母さんだと思ったけど、それ以外は何も思い出せないんだ!」
「そう...よね...。
私の事が分かっただけでも、奇跡に近いのです。」
その瞬間、母さんの目が輝く。
俺が昨日使えるようになった能力と同じみたいだ。
(今この場にいる人たち全員に、私しか知らないこの世界の真実、そして私の罪を伝えるわ。)
すると、俺の脳に映像が流れ込んできた。
俺やパーティメンバーだけじゃない、国王やその取り巻きも同じ映像を見ているようだった。
(私は今から千年ほど前、コールドスリープの研究をしていたわ。
実験動物では何度も成功させる事ができていた。
そしてついに初めての人体実験を行った。
その被験者は世界各地で極刑に処された者たち。
でも、人体への実験はうまく行かなかったわ。
つまり、私は何人もの人間を自分の手で殺し続けてきたって事なの。
苦悩していたその時、私が若い頃に破棄した実験を思い出したわ。
ある動物に他の動物の脳で作った液体を注射する事で、その能力を継承させる実験。
破棄した理由は、注射後すぐに被験体の体温が上がって死んでしまうから。
でも、その死体は能力を手にしている事は確認できていたの。
体の発熱の問題がどうしてもクリアできなかった。
そこで、私はその二つの実験を組み合わせたわ。
注射してすぐにコールドスリープ...。
その初めての被験体は、息子のコウだった。
信じられなかったけど、コウはとある凶悪事件を起こして、死刑判決が出ていたの。
しかも、執行まで異例の早さで。)
俺が...、死刑囚だった...?
(私は成功するかも分からない、いや、ほとんど失敗するであろう人体実験に息子を使った。
心が耐えられなかったわ。
二体目の被験体も息子と同じ国籍の若い男性だった。
今は国は統一されてるけど、昔は二百近くあったわ。
三体目は年齢も国籍も全く違う人間だった。
実はこの頃に注射を改良できたの。
私の設計では、最初の二人の旧型注射は千年コールドスリープさせないと、動物の能力を得られない。
だけど改良型は五年もすれば身体に能力が定着する。
五年後に三体目を解凍させると、なんと被験体は生きていた。
ついに人体のコールドスリープ実験は成功したの。
注射の熱暴走を冷却によって食い止めてたみたい。
しかも、身体の解凍後は動物の能力を手に入れるどころか、両手から自在に熱波を放出できた。)
俺がふと周りを見ると、みんな真剣に母さんの想いを受け取っている様子だった。
(そもそも、何で私がコールドスリープの研究なんかさせられてたと思う?
表向きは長寿とか不死のためとかそんなだけど、完成したコールドスリープ技術に利用者はほとんどいなかったわ。
でね、コールドスリープが何に使われるかと言うと、
倫理観、人権の観点から殺すことのできない無期懲役囚の処分に使われる事になるのよ...。
事実、凍結しながら生きているんですから。)
俺はその話を聞いて、魔族やゴブリンの正体について疑念が確信に変わっていた。
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