【プロローグ】無能魔族、魔界を追放される。
「コウ、お前さぁ、魔力も使えねぇクセしていつも後ろからウゼェ指揮ばっかしてくんじゃねぇよ。」
ついにそう言い放ったのは、俺が所属している魔王軍ゴブリン討伐兵団のトップ団長だった。
まぁ、兵団とは名ばかりで六人編成のパーティのような集まりだが...。
「......なっ...!
俺の指揮が無かったら団長は今頃ゴブリンの腹の中だぞっ!」
最近、邪険に扱われているのは感じていた。
だが、いざ口に出されると声を荒げてしまった。
テントを設営していた手が止まる。
「だいたい!今の戦闘だって団長は背後のゴブリンに気づいてなかったじゃないかっ!」
「んなのお前が勝手にそう思って、勝手に仕事した気になってるだけだろうが!」
トップ団長も声を荒げ、他の団員の方を見る。
いつものキレ芸かと半分期待もしたが、どうやらマジっぽいな...。
ここぞとばかりに口を開いたのは団長と恋仲ってウワサのヒーラー、アネモネだ。
まあまあのオバさん。
「コウ君。私たち別にアナタの指揮とかなくても全然ヤれてますけど〜?っていつも思ってたのよねぇ。」
ガードの大男二人組、ゲイルとヒューも続く。
「なぁ?逆にオラたちがお前を守ってやってる負担は考えてんだすか?
しかも魔力が使えないって!ブハハハッ!」
「ほんとだぜゲイル。無能は魔界の本島で家畜でも育ててスローライフしてろっての!ガハハハッ!」
二人が俺を威圧するように囲んでくる。
クソッ...、兵団に選ばれてゴブリン巣食う大陸に渡った時には、こうなることは覚悟していたが...!
さっきまでは虚勢を張っていられたが、今はなんかオシッコが漏れそうな気分だ。
「俺は...!」
反論しようとした弱々しい俺の声は団員の笑い声でかき消された。
ひとしきり盛り上がった後、無口なアタッカー、ジェイがつぶやく。
「アナタが来る前から私たちの兵団は完成形だったんです。
はっきり言って、アナタ必要ないんですよ。コウ君。」
こういう時のジェイには、もはや誰も意見できない。
団長ですらも。
終わった...。
団員は俺を残し日課のウマいフルーツ探しに出かけてしまった。
いつもなら俺もついて行くが、惨めに残りのテントの設営を急ぐ。
ウマいフルーツ探しだって、俺がみんなと仲良くなろうと思って提案したことなんだ...!
くそ...!
俺だって...、本気でみんなを守ろうと指揮していたんだぞ...!
そんな事を考えていると、つい独り言が漏れる。
「ふぅ...、一旦冷静にならなきゃな...。
どうせ俺ここ以外の居場所ないし。」
短い時間だけど、共に命をかけて戦った仲間だ...。
あんなこと言われたが、戻ってくる前に最高のゴブリンスープを作って食べてもらおう...!
そして、もう一度みんなと話そう...!
・・・・・・・・・・・・・・・
いつもの倍くらい経ってみんなが戻ってくる。
自信作のゴブリンスープはすっかり冷めていた。
スープをチラリと見たトップ団長が俺に聞こえるようにニヤニヤして言う。
「あー、ゴブリンの丸焼きウマかったなぁ。
つーか“指揮”とかなくても余裕で生け捕りにできたわ。」
「ほんとよねぇ。私のヒールも要らないくらいだったわよねぇ?トップ団長♡」
「なぁに言ってんだアネモネ。
お前のヒールがあってこそ、俺らは落ち着いて戦えてんだよ。なぁジェイ。」
「...そうですね団長。
やはりヒールは安心感がありますので助かりますよ。
ヒュー君も先程は見事な守りでした。」
「おうよ!当たり前だぜ!守ってやればゴブリンを倒してくれるんだ、守りがいがあるってもんよ!」
ゲイルはヨダレを垂らして俺のスープを見ていた。
それに気付いた団長がゲイルを睨むと、
「な、なんだこのマズそうなスープァ!オェェェ!」
そう言いながらゲイルは急いで鍋を蹴り飛ばした。
ニッコリする団長。
「じゃあお前ら今日はお疲れさんっ!
また明日もよろしくな!」
「「お疲れ様でしたー!おやすみなさい!」」
俺を無視して各テントに入る団員。
ほんと、何やってんだろ俺...。
土で汚れた冷たいゴブリン肉を口に入れ、自分のテントに入る。
自慢の味付けはなんの味もしなかった。
テントには破られた新しい傷跡。
俺はもう疲れきっていた。
・・・・・・・・・・・・・・・
「キャー!!!!!」
翌朝、アネモネの悲鳴で目が覚める。
勘弁してくれ。
「ど、どうしたぁっ!アネモネェ!」
団長がアネモネのテントへ駆け寄る足音が聞こえる。
俺もテントから出ると既にみんなは起きていた。
「私のっ...!私の下着がないのよぉっ!
いつもは脱いで枕元に置いて寝るのに、起きたら下着がないのよぉっ!」
「誰だぁ?俺のアネモネの下着を盗むクソ野郎は!」
そう言いつつも俺の方しか見ない団長。ニヤニヤと。
団長だけじゃない。みんなが俺を見ていた。
「俺がやったって言うのかよ!
そんなババァの下着なんて何ゼニーもらったって要らねぇっての!」
「俺のアネモネがババァだと...?
もっぺん言ってみろクソガキィ!
もしオメェのテントからアネモネの下着が出てきたら、分かってんだろうなぁ⁉︎」
団長ニヤニヤ。
すかさず俺のテントを物色するヒュー。
ふっ、素晴らしい段取りだ。
この調子なら俺の指揮もいらないか?
俺は呆れたし、もうこの先の展開は読めていた。
どいつもこいつも演技が下手。ド下手。
ケツが痒くなってくる。
「団長ー!ありやしたぜ!姉御の下着!
ついでにこんなのも!」
ヒューの手には臭そうな汚パンツと、
...⁉︎
......⁉︎
人間の女の子⁉︎
酷く衰弱しているが、こんな子どこから⁉︎
なんの悪意もない澄んだ瞳がこちらを見る。
直感的に、この子を助けて育てたいと強く思った。
しかし、人間界は魔界の外側にあるゴブリン地帯のさらに外側のはずだ。
俺の脳では処理が追いつかない。
だいたい、そんな禁忌がもし魔王の耳に入ったら...!
ついにオシッコが漏れた俺に団長がにじり寄る。
「...お前は“終わり”だ、コウ。
証人は五人。どんな処刑になるか楽しみだぜ。」
耳元で低いささやき声が反響する。
その瞬間、俺はゲイルに殴られて気絶した。
・・・・・・・・・・・・・・・
目を覚ますと、法廷。
頭がボーッとして話が入ってこないが、これだけはハッキリ聞こえた。
「判決。魔王軍ゴブリン討伐兵団員コウを
魔界追放とする。」
“また”冤罪かよ...。
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