31.長期計画を立てよう
結局、帝国はもう一度流れで公国へと攻めてきた。
さすがに今回ばかりは攻城兵器をすべて破壊するという事もかなわなかったようで、以前までであれば街の陥落は覚悟しなければならない状況に陥る。
しかし、現在の防衛能力は今までの比ではない。
帝国式の兵器の技術を取り入れた公国側は敵の兵数も考えて防衛を成功して見せると意気込んでいた。
という事で私もここは支援すべきだと考えて穴掘りを提案。
数分でも時間を稼げるなら御の字と言ったところではあるけど、敵の攻めてくる街の周囲に凸凹を追加して攻城兵器を進みにくくさせておく。
「できることは全部やる、っていうくらいの気持ちでないと今回は耐えられそうにないのよねぇ」
「ですな。穴を掘るという行為は毎度やると手間となり効果も見合わないものになるでしょうが、今回は別。2つ連続で奪われるとならぬよう帝国の勢いを落とすためにもという気持ちなのでしょうな」
準備は万端に。
バリスタの知識なども増えたらしいのでそうした兵器が配備される様子を確認しつつ、私たちも帝国を睨む。
そのまま数時間の激闘の末、
「むぅ!突破されましたぞ!」
「そう。なら、手はず通りに進めるわよ」
壁の一部がものの見事に粉砕された。
最初は守り切れそうな雰囲気だったんだけど、途中で敵の増援が来て流れが変わってしまったわね。
しかし、こうなるのはさすがに増援が来た時に予想済み。この後の行動も公国側の指揮官と話し合って決めてあり、
「予想以上に、我々には突撃の機会がありますな」
「そうね。もしかすると部隊の二つ名が『大穴』とかになるかもしれないわよ」
「それはあまりうれしくありませんな。なんというか、かけ事の対象のようで」
私たちは突撃する。
軍のほとんどを街に投入させているにもかかわらず、安全のために街の外で指揮を執っている帝国の指揮官たちに。
今回、できるだけ壁の破壊がないようにはしていたけどそれでも破壊されるときには決めてある地点になるように工夫をしていた。
結果としてそこだけに穴ができてそこに全軍が集まり入り込んだため、穴の大きさの関係もあってすぐに中にいる兵士が外に出てくるという事が不可能。
それが私たちの狙い。
「なっ!?お、おのれ!兵たちのいない隙をついたつもりか!」
「1人は内部に入っておくべきだったか!」
「散開しろ!1人でも多く生き残れ!」
敵もバカではない。指揮官を任されるだけのことはあるようで、判断も早くどうにか生き残ろうとあがいている。
しかし甘い。
散開して狙われる人数を少なくしようとすることなんてこちらも予想済みで、
「この距離はすでに射程内。周囲に立てもない今、逃げても無駄よ」
私たちの側から飛んだ矢が、的確に狙い通りの指揮官の頭を貫いて行く。
後はこの首を手際よく回収させてもらって、私たちは退散。
散開の判断は決して間違いではなかったけど、遅すぎたわね。
もうちょっと早くこちらに気づき指示が出ていれば1人2人取り逃がしていた可能性はあるわ。もちろん、たらればの話でしかないけどね。
「さて。私たちはもう少しここに残って復興完了まで待機していればいいかしら?」
「いい加減争いも落ち着くでしょうしそれが良いかもしれませんな」
今回で公国側も小さくはない被害を受けた。
ただ帝国側も動員した人数から考えて損失は大きかったはずで、お互い今は動くことが難しい。小康状態になると予想できるため、私たちは残りの派遣されている時間を待機して過ごすことになるだろうかと考えていた。
けど、現在私の連絡役になっている公国兵はそれ以外の事を考えているようで、
「どうせならば子爵様に今後の防衛プランなどで意見をいただきたいという上の方の考えもあるのですが」
「あら。そうなんですか?さすがに今後の長期の防衛プランとなると他国の人間が関わっていい話ではないような気がするのですけど」
「ハハハッ!いまさら子爵が何をおっしゃる!子爵が我が国に無益なことを言うはずがないと皆確信しておりますとも!もちろん国内でお立場の関係上どうしても内容を口にする機会はあるとは思われますが、逆にそれを利用して帝国に圧力がかけられるようなプランが出るのではないかと皆期待しておるのです」
「それは期待が重いですね。私は何でもできるというわけではないのですが」
「ええ。存じておりますとも。しかし、我々にできないことを子爵はできるという事も理解しておりますから」
ある程度貢献したことは認めるけど、あまりにも私に期待しすぎではないか。と言う気持ちと、この人が忖度も兼ねてこうしたことを言っているのかもしれないと思えばそこまで私が本気で考えることはない。
しかし、数日後。そうして私に賭けられた言葉通りに私に期待が寄せられていたことを理解する。
公国の重要拠点に呼び出されたかと思えば、そこに待ち受けているのはお偉いさんたち。
本気で私に意見を求めて搾り取れるものはすべて取っていくつもりらしい。
「時間はこちらの見方ではありますが、帝国と同等の装備を得たとしても向こうと数が同じになるわけではありませんからね」
「やはりそこは問題ですか。課題は多いですね」
私たちはとりあえず片っ端から案を出していく。
帝国式の装備も配備するのだからそれに合わせて防衛の配置も変える必要があるし、帝国に奪われた領土をどう奪還するのかも問題になる。
「短期的な作戦ですと、あえて敵の街と街の間に拠点のような場所を作って、帝国兵がそこに攻め込んできたら拠点をすべて燃やして敵を丸ごと焼いてしまうとか」
「ほうほう。今やるのは悪い選択ではないでしょうな。お互いすぐには正面から戦って良いだけの戦力は出せませんし、新しい目立つ動きをしても潰されにくい」
私たちの話し合いは続き、なかなか長期的な作戦をまとめることは難しいけどそれでも一度は敵に大きな損害を与えられそうな策が色々と出てくる。
こうして帝国は何とかこのまま踏ん張り続けられそうな状況になり私もそれを手助けしていける。
はずだった。




