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28.やってる感を

「あそこのはしご型の攻城兵器の右側のあたりを狙えるかしら?」


「ハッ!聞こえたな?放て!」


「うん。それでは、もう一家お願いできるかしら?その後、今度はその左斜め奥もお願い」


もう敵があまりにも多すぎるから、私の指示も割と適当になり始めている。もちろん攻撃を止めさせたりはせずひたすら矢を放たせているわけだけど、正直に言って違いが感じられないの。

どこを狙っても当たるしだいたいその近くに攻城兵器がある。

ある意味どこを狙っても結果は帰ってくるし、逆に狙ってもあまり他と大きな差を得ることはできない。


では、そんなとき私がどういう風に指示を出すのか。

それはもちろん一定ラインを超える攻城兵器があればそれを優先して狙わせて火などをつけさせるようにもしているけど、そうでない時には、



・調略 67

・突撃 72

・奇襲 78

・破壊 65



こうして見えている物を指標にしている。

どうでもいい物ではあるんだけど、こうして明確な狙うべき相手がいない時にはいい判断基準になる。

適当に戦いの系統の才能を持っていることになっている人間を狙わせて処理することで、なんとなく役に立ってる感を味わうことができるのよ。完全なる自己満足でしかないけど、焦って狙う場所を見つけられなくなるよりはよほどましでしょう。


ちなみに、最初は数字が大きい時にそれに合わせて文字のサイズも大きくなるような設定をしていたんだけど、この数が多い相手だと文字を大きくすると相手が良く見えなくなったりして逆に邪魔になってしまう。

特に、私の視界の隅でまだ残っているのが、



・太鼓持ち 91

・腹太鼓 89

・大食い 94



あまりお目にかかれない大きな数字の持ち主たち。

あまりにも戦いに関係ないのに大きく見えてしまうと本当に邪魔でしかないの。だから、一旦全部同じサイズにするように切り替えて判断させてもらってるわ。

この見えているものが本当だったとしたら、私は全力で帝国を怒鳴りつけていたでしょうね。内容は兎も角、たぐいまれなる才能の持ち主なんですもの。戦場で使いつぶすなんてあまりにももったいない才能だわ。


ただ、そういう風なやり方をしていてもいつかはだんだんと限界が近づいて来る。

あまりにも戦闘関連の才能を持っていることになっている相手を集中して狙い過ぎたせいで、私たちの狙える範囲にはそれ以外の才能の持ち主が増えすぎてしまった。

目的の相手を見つけるのも一苦労よ。

こうなると探す時間がもったいないし、別の指標を考えた方がよさそう。もうちょっと戦闘関連の才能と判断する基準を緩くするかいっそのこと戦闘関連以外でも面倒そうな才能を持っている相手は排除するくらいの気持ちでいた方が良いかもしれないわ。


「思っていたよりは保たせられておりますね」


「そうね。帝国もかなり統制は取っているんでしょうけど、さすがにいくら何でもこの矢の雨の中を進もうとすると足がすくんでしまう兵士も多いのではないかしら?この大軍だとまだ戦いに慣れていないものも多いでしょうし、精神的に限界が来ている者も多くてそれに後ろが併せた結果とかなのだと思うわ」


「なるほど」


相変わらず言葉遣いが硬いエルグと敵動きについて話したりもする。

新しい弓などの射程からこちらの射程まで入ってくるのはかなり早かったけど、その後は思っていた以上に時間を稼げている。

シッカリと詰めて来られてはいるんだけど、まだもう少し時間を稼いで敵の数は減らせそう。


特に今回は、予想外なことに攻城兵器が来るペースが遅い。

どうにか持って来ようとはしているんだけど人が多すぎるがゆえに逆に移動させてくるのが大変らしく、破壊もそこまで難しくなくなってしまっている。

人が多い時の弊害はこういうところにも出るのだと思い知らされたわ。


「ただ人が多くないと攻撃の分散もさせられないし、バランスが難しいんでしょうね」


「ただ、油断はできませんよ。いくつか木材部分は燃やせていますけど金属部分が残って倒れていない兵器も見えます。もしかすると、あれらは燃えて使えなくなったように見せるだけで発動できるものであるという可能性も」


「ふむ。もしそうなら面倒ね。それに兵士が近づいて動くようだったら報告してもらえるかしら?燃やすだけでは安心できないという事で公国の人達に報告する必要があるわ」


「分かりました。警戒しておきます」


私は安心していたけど、エルグが危険な要素を見つけてしまった。

どうやら向こうの兵器が近づけないというのはブラフである可能性があるみたい。確かに燃やすことができたら破壊できたと考えてしまうし、それを想定したうえでまだ使える兵器を敵が近い位置で待機させているという可能性もあるわね。

こちらが使えないものだと思って油断しているところでそれらをすべて動かしてこっちに守れなくする、とか言う作戦なら甚大な被害を受けることになるのは予想できる。


警戒は必要なように思える。

ついでに、そうして警戒しなければならないそれが本当に想定通りの動きをするものなのであれば、


「あの動かなくなった兵器の近くを狙ってもらえるかしら?エルグはその周囲の兵士の様子を見て置いて」


「かしこまりました」


きっと近くにそれを動かすための兵士が配置されているはず。

そう考えて攻撃させてみたところ、実に怪しい動きが始まった。


警戒した様子で一部の兵士が下がり、そして数人の兵士が今まで見たことのない伝令としてどこかへ走っていくという光景が見られた。

これはほぼ私たちの見た目通りで間違いないと考えて良いはず。


「エルグ。伝えてきて。全体に警戒をしてもらいましょう」


「分かりました!すぐに!」


事の緊急性はよく理解しているようで、エルグが私の指示を聞くや否や駆け出していき、この防衛で全体の指揮を執っている公国の指揮官のもとへと向かっていく。

その直後、


「子爵!敵が動き出しました!!」


「そろってはいないけど、行けるところから順次行くべきとでも考えたのかしら?とりあえず近くの近づいて来る兵器を集中して狙いなさい」


ここまでただ全体がまとまって近づいて来るだけだった帝国の動きが初めて変わる。

そうした兵器の近くにいる兵士が次々に兵器を前に押し出しこちらへと接近してくる。

もちろんすぐに私たちなどは見ていたからそれに対応して処理していくけど、エルグの話が通って全体にそれらの指示がいきわたるころには、


「あ~。あそこ抜けられたわね。突破されるかもしれないから準備をしておいて」


「かしこまりました。離脱の用意を勧めます」


どうにかその指示が間に合ったり指揮官が敵の動きを察知して処理できたりしたものもあった。

しかしそれは残念ながらすべてではない。

いくつか壁へと接近を許してしまい、少し離れた場所で壁が崩れていく様子が見える。


崩れる時は一瞬ね。

完全に油断してたわ。


「敵の波が来るまでもう少し削るぞ!まだ矢を放て!!」


これでもうここの防衛が苦しくなったことは間違いないけど、それでもまだ敵の数を減らすという目的は忘れずに攻撃を続けるという判断が下された。

破壊した場所はまだ小さいから、そこに敵が群がってきても侵入できる数は少ない。

逆にそこに対して攻撃を集中させればそれなりの敵を削れるという事らしい。


私たちはそれも一緒に行ないつつ、敵がしれっと攻城兵器を近づけようとしたところを狙ったりしながら時間を更に稼いでいく。

もちろんそんな時間はそう長くは続かず、ある程度敵が侵入する穴が大きくなり侵入する数が増えてきたおところで撤退準備の指示が私たちにも出される。


「間違いなく敵の数は減らせたと思うけど、次がないようにするという事までできたかしら?」


「さて。どうでしょうな。恐らくこの後市街戦もするでしょうし、その結果次第と言ったところなのでは?」


「そういえば市街戦をすると兵器の数を大きく減らすことができるという話だったし、期待してもいいかもしれないわね」

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― 新着の感想 ―
あけましておめでとうございます。 帝国、これもう面子か危機感で無理矢理突撃して来てるけど、内情的には責任問題に発展するレベルの大損害を被ってるんじゃ無いかなあ、コレ⋯⋯()
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