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26.狙うべきもの

まさかの味方殺しを見た私たちは戦慄したけど、それで行動を止めている場合ではない。

追加の穴掘りだって必要だし、負けて帰って処分された敵の代わりに追加で出てきた敵兵の観察も重要。今度は数が段違いだから、さすがに戦っても簡単には崩せないでしょううね。

穴の中に通れるところがあると伝わってしまった以上向こうも警戒するでしょうし、先ほどのような奇襲は上手くはいかないと思うわ。


「出て来られたら厄介ね」


「そうですなぁ。特に先ほど味方が帰ってきたら処分されてしまったところを見てしまったでしょうし、心を追って撤退させるというのは無理な話。こちらが引くくらいしか向こうを帰らせる方法はありませんな」


「敵も嫌なことをしてくれるわね。そんなに追いこんでもいいことないでしょうに」


しかし、さらにこちらが戦うと問題が起きそうなことは続いていく。

なんと、また敵が補充されたの。

まだ壁の近くに展開しているだけではあるんだけど、数百人規模で人員が追加されたようにも見えるわ。このままぶつかれば、間違いなくこちらが押しつぶされる。

本格的に逃げる算段を立てておいた方がよさそう。


穴掘りは続けるけど、少し距離を開けながらになる。

こっちも警戒はしているけど向こうが上手く隠しながら接近してくる可能性もあるから、やはり距離を開けておくのは大事だと思うの。戦いたくはないし、距離感を大事にするのは大切なことだと思うわ。


「さて。そろそろ何か動きが起こってもおかしくはなさそうですな」


「そうね。いい加減何か起きてくれないとこちらも全体の意志をまとめきれないわ」


敵は兵士を吐き出していた門を閉じた。

これで完全に兵士は出し切ったということみたい。こうなったら街の側が扉を開かないと中には入れないし、出てきた兵士も相当な覚悟を背負うことになるでしょう。

まじめに戦おうと思えば最悪にも近い状況だと思うわ。


でも、私たちが待っている展開はそんなものではない。

丁度良い事にその少し後のタイミングで待っていたことが起きることを確認できて、


「あの時と同じ、ですか」


「どうにか上手く言ったみたいね。被害をどれだけ大きくできたかは分からないけど、迂闊に向こうも兵を今後出せなくなるんじゃないかしら」


立ち上る煙。

それがハッキリと確認できた。

もしかしたら向こうの焚火なんて可能性もあるんだけど、こちらはタイミングから考えて前回と同じことが成功したのだろうと期待してしまう。

つまり、敵の物資の焼却が成功したんじゃないかと思ってしまうの。


「よし。全体に作業の中止をさせなさい」


このあとやることも前回の焼き増し。

襲う振りだけして敵の攻撃を誘発。壁の近くで待機している敵が上からの攻撃に巻き込まれないようにするため泣く泣く陣形を崩す様子を見つつ、敵とにらみ合いながら時間を稼ぐ。

そうしている間に立ち上る煙の数は増えて良き、確実に敵の動揺が大きくなっている様子を確認する。


なお、敵の内部に侵入している味方は敵の撤退する中に紛れ込んだ兵士などでは当然ながらない。

どうやら隠し通路のようなものがいくつかあるらしく、その中の1つが敵に発見されていない可能性が高いという事で使ってもらった。

放課後の闘争にも残っていそうな隠し通路を使うんでしょうけど、目論見通り全て残っているとは思えないからどこまで続けられるのかは正直謎。


「長く煙が続かないところが残念な部分ではあるわね」


「そうですな。あの煙の消える速さから考えると、あまり火が広まる前に消火をされているという事でしょう」


私たちが誘い出した敵兵は多いけど、それでもまだまだ対応できる人間はいる様子。対応が早いわ。

だから結局のところある程度煙を出すことはできたけど、それでも1時間もしないうちに完全に煙はなくなってしまう。


「終わってしまったかしら?」


「捕えられたか活動が無理な状況になったか。何にしても、もう我こちらが気を引いている意味はあまりなくなってしまったかも知れませんな」


「そう。では、撤退しましょうか」


私たちは結局最初に野戦でとった首という戦果を持ち帰ることになった。それ以外は戦果と言うには少し足りないかもしれないわね。

作戦通りではあるけど、これだけだと敵も侵入経路である隠し通路を念入りに調べるようになるだけであまり警戒度は高くしてもらえないでしょうね。

でも、


「さすがは子爵!」

「まさか敵将の首まで取ってしまわれるとは!」

「今頃奴らは一体どんな顔をしていることやら!」


公国の人たちからの反応は上々。私たちは十分仕事をしたという事になっている。

どちらかと言うと、敵将の首がおまけとすら言われるほどの認められ具合。

その理由としては、


「まさか敵の兵器を作ることができる職人を狙うとは!あまり考えたことがありませんでしたなぁ!」

「それを成し遂げて見せる子爵の腕前も見事な物」

「これでこちらも奪われた街を取り返せるようになるかもしれない。このご恩、決して忘れませんぞ」


「いえいえ。私など所詮は考えを述べただけの人間です。1番の功績者は何よりも作戦の実行をした兵士の皆さんでしょう。潜入し職人を誘拐して見せた者達の腕前は見事と言うほかありません」


私が敵の気を引き内部に兵士を侵入させた1番の理由。

それは、相手の物資を燃やして処分するためではない。それ以上にやりたかったことが、この帝国と公国の技術力の差を作っている職人を誘拐してその技術力の差を埋める事。

ついでに、王国でもできればその技術を取り入れられるようにすること。


本当は物資の燃やすことなんてやらなくてもいい程の事だったんだけど、それは職人に向けられる目を少なくするためにやらせてもらった。

ある種のブラフと言っても良い物でしかないの。

消火や下手人の捜索に敵兵が動いている間に誘拐を成功させることこそが何よりも重要なことだったというわけ。


「しかし、子爵の読みが見事であることも間違いないではないですか。こちらからの攻撃を予想して敵が1番防衛能力が高い場所に職人を映しているなど、全く考えてもみませんでした」

「然り。帝国が攻撃を予想して防御を固めることは予想出来ても、特定の職業の人間の動きなど目が行きませんでしたな」

「我々が目を向けていなかった意外なところに戦況を変えられる力が隠れていたという事ですか。脱帽です」


装備ができたから勝てるようになるというわけではない。

でも、確実に影響は大きく出るはず。

帝国側は話によると技術が漏れ出ないようにかなり限定して知る職人は絞っているらしいけど、公国としてはそんなこと気にせず広めていくだろうから生産できる人間の数などでは上に行けるんじゃないかしら?


「問題は職人の口が予想以上に固い事ですが」

「やはり選ばれた人間なだけはあるという事なのでしょうが、それにしても面倒なことに変わりはありません」


「なるほど。恐らく家族を人質に取られているか、そもそも国への忠誠心が高かったりするんでしょうね」


確保したは良いけど、今直面している問題が職人の口の堅さ。

口で語らせて技術を見せてもらう関係上あまり過酷な拷問などもできないし、口を開かせるのは難しいように思うわけ。

となるとこちらができることは、


「敵から奪ったものを戦場で使って、職人たちが裏切ったと勘違いさせると脅してみるのはどうでしょう?もし裏切ったと帝国が判断すれば、人質などは処分されるでしょうし」


「なるほど。人質が処分されないためにもこちらの要求をのまざるを得ないというわけですか」


「はい。その後首を落として、あまりにも口が堅いから見せしめとして処分したとして帝国側に遺体を返還すると約束すれば人質の安全も確保できる可能性が高まるでしょうし協力する者はいるでしょう」


「ふむ。子爵もなかなか悪いことを考えられますな」


「ふふっ。それほどでも…………ついでに職人たちをそれぞればらばらにして裏切った職人の名前と技術の内容でも少し語って見せれば後は勝手に自分から話をする人間は増えるはずです」


「ふむふむ。確かに結束力で保っている部分もあるでしょうから、悪くないかもしれませんな」

「やってみましょう」

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― 新着の感想 ―
あくまだ、あくまがいる⋯⋯ かなしいけどこれって戦争なのよね() というか、優位性である技術を掠め取られたどころか大衆化、一般化されてばら撒かれ始めるとか、帝国にとっては悪夢でしか無いのでは。 少な…
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