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25.穴だらけ

敵の拠点の中で1番防衛能力が高いところまで来たわけだけど、当然のことながら攻勢に出たりはしない。

負けることがあまりにも分かり切っているもの。

今回ついてきてもらった兵士もそれなりの人数いるとはいえ、それでも堅牢な都市を攻め落とすのに適したものではない。恐らく敵は物資の消費のみの損害無しと言う結果で終わるんじゃないかしら?


だからこそ私が選択するのはにらみ合い。

前回街を奪い返して敵を追いかけしたときと同じようなことをしているだけよ。正直絵面は変わらないわ。

実際、兵士にあの時と同じように穴まで掘らせているし。


「少しですが敵に焦りが見えますな」


「そうでしょうね。ここに私たちが来るなんて、向こうにとっても目的の分からない物でしょうし」


目的が分からない。それが1番怖い事。

そして、だからこそ無理矢理そうした場合には理由を見つけようとするものよ。

例えば、


「おっ!敵が出てきましたぞ!」


「では作業を中止させて。しばらく敵の動きを見るわよ」


向こうがわざわざ都市から出て戦わなければならない可能性がある物とか。

こうして敵が出てきたところを見るに、私たちは足止め要因として見られているんじゃないかと思うわ。敵も公国側の本体の動きは分かっているでしょうけど、それでも必ずその情報通りに動くとは限らない。

もしかするとそうした話がブラフで、本当は別の都市を狙っているのではないかなんて考えた可能性もあるわ。


では、その場合私たちにされて嫌なことは何か。

そう。(向こうの予測する)目的通りに足止めをされる、という事よ。


「こちらを蹴散らすつもりでしょうな。近づいてきましたぞ」


「ふむ。では、こちらは手はず通りに掘った穴の近くをぐるぐると回り続けましょうか」


私たちは壁からそれなりに離れた場所で穴掘りを行なっていた。

その理由は敵の射程を恐れたという理由もあるのだけど、もう1つの理由として敵に正確な穴の位置を探られないためと言うものもある。

当然ながら足場が悪い以上掘った穴の場所を通り越してこちらに直進してくることは難しいでしょうし、向こうは迂回を選択しなければならない。

ただ私たちと違って穴の位置がハッキリとは分からないから、その迂回もかなりの無駄が出るものとなってしまう。


逆に、私たちはある程度安全のために距離は明けるけど最低限の距離を保って穴の周りを移動する。

こうすることで、


「くそぉ!こっちに来い卑怯者ぉぉぉ!!!」

「この臆病者共がぁぁ!!!」

「我々に勝てないと分かっているならばすっこんで居れば良いものをぉぉぉ!!!」


穴の周りをお互いぐるぐると回り、向こうはこちらに追いつけないままストレスをためることになる。

向こうはこちらの姿勢を馬鹿にして煽ることでどうにか戦える状況にしようとするけど、こちらはその様子を馬鹿にすることで兵士たちの心を必要以上に熱くさせないようにする。

たまに向こうが焦ってたまに穴に落ちたり引っかかったりすることがあるから、それをみんなで笑ってあげれば簡単に精神的な優位は取れる。


追いつけず、焦ればミスをしてこちらから笑われ。向こうとしてはかなり厳しい状況。

指揮官がどう思っていようと、兵士たちの心情にはかなり影響が出ている様子。

拠点の近くで出そうと思えばまだまだ増援だって出せるだろう状況だというのに、向こうの熱気はかなり静まってしまっているように見えるわ。

そして、結果として追いかけっこを続けていると、


「あら。挟み撃ちのつもりなのかしら?」


「どうやらそのようですな。さすがにいつまでもぐるぐる回っていてはこちらの思うつぼだと気づかれてしまいましたか」


敵がついに二手に分かれ始めた。

とは言ってもそう難しいことをしようとしているのではなく、単純に私たちを挟み撃ちのような形で攻撃しようとしているというだけ。

私たちは穴を掘った場所を中心にお互い回り続けているから、敵が今までとは逆方向にもう1つ部隊を向かわせることでその行動ができなくなってしまったという事。


こうなったら私たちは単純に穴から離れて後退すればいいだけの話ではあるんだけど、絶妙な位置取りのところで相手は仕掛けてきたためすぐにその選択はできない。

私たちがこのまま敵から離れるように動くと、丁度敵の拠点の方向に向かうことになるのよね。

そうなると弓矢で一方的に攻撃されることになったりするから、下手に逃げる道筋は決められない。


「このくらいはさすがにやれるだけの頭を持っていたのね。ちょっとなめすぎてたわ」


「今までが今まででしたからな。あの部隊をそういう風に思ってしまうのも仕方ありますまい」


ある程度敵が近づいてきて分かったけど、敵はそれなりに安全策をとったみたい。

近接で戦おうとはせず、こちらより射程の長い弓を両側から撃ってこちらの兵を削ってこようとしている。実際こちらはそうされると逃げるかそれを打つ兵を倒しに行くしかないわけだけど、前には穴があるし後ろには敵の拠点がある。左右は敵に挟まれてるから、逃げ場なんていない。

となると私たちにできるのは敵に向かって走ることだけで、


「予想通りの位置取りね。立てていた作戦が上手くハマりそうで助かったわ」


私たちはその敵の思惑通り、敵に向かって駆けだしていくことになる。

ただし、行く先は両側を挟み込むようにしている弓兵たちのいる場所ではない。穴のあるはずの前方に向かって多くの兵が駆けだしていった。

しかも敵が驚くのは、それをしても一切こちら側が穴にはまったりする様子がない事。


弓兵は私たちを攻撃するために多くを使ってしまっているから公国側の兵士が向かうところに対して遠距離攻撃手段はなく、そのまま突撃を正面から受け止めることになった。

ただ、左右に広く陣形を展開していたからその守りは非常に弱い。


「そもそも、穴だらけだと思っている場所の中央から敵が来るなど想定せずに陣形を組んでおるでしょうからなぁ。突撃を受け止められるような力はあるはずもないでしょう」


「そうね。あったらこちらとしては困ったけど、ないならこちらの想定通りになるわね」


最初からこうして敵が追い込んで来ようとする展開は予想していたため、あえて特定の部分には穴を掘らないようにしておいた。

もちろん細かい穴の位置などを知らない帝国側は調べてる暇もなかったためにそれを知らず、私たちが穴をすべて掘っていると思い込んで動いてくれた。

そうして見逃された穴の掘られていない道を使い、私たちは突撃を仕掛けることに成功した、と言うわけ。


当然演習場から敵が来ることを想定していた敵は中央を突っ切ってこちらが来るなんて想定しておらず、受け止めきれずに崩壊。

丁度敵の中央の方を食い破ったからそれなりにいい立場の人間もいたようで、


「敵将、討ち取ったぁぁ!!!」

「首を置いてけぇぇぇ!!!!」

「「「「「ウオオオオオオォォォォォ!!!!!」」」」


あちこちで帝国の指揮官の首を取ったという声が聞こえてくる。

敵も応戦しようとはするけど想定していないところからの攻撃だから結局それが終わる前に次々と打倒すことに成功して、上々と言って良いほどの戦火が上がる。

今度は逆に敵が逃げるような状況になるわけで、


「よし。そこまででストップさせなさい。また穴を掘る位置取りに行くわよ」


「追わなくてもよろしいので?」


「いいわ。敵の弓の制度は高いと言う話だし、拠点の方向に逃げて行く敵を追えば逆に私たちが射抜かれて被害を増やしてしまうことになるわ」


戦果は挙げても調子には乗らない。

今軽く敵の部隊は倒したけど、まだまだ敵は拠点内部にいる。

壁の上に待機しているだけでもかなりの数のようだし、ここで調子に乗るのはどう考えても危険。


追撃の代わりにまた私たちは少しずつ穴掘りを始めて、敵とのにらみ合いを続ける。

その中で見た光景に恐ろしい物があって、


「あれ?敵兵、逃げて帰った兵を処分してないかしら??」


「本当ですね。貴重な弓兵だというのにもったいない」


負けて逃げた兵が、壁の上から降った矢によって倒れた。

この拠点ではどうやら、負けた兵には容赦をしてくれないらしい。

もしかすると前回私が一般兵の提案でやらせた内部への侵入が情報として出回った影響なのかもしれないけど、それでもえぐいわね。もうちょっと何かやり方がなかったのかしら?

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