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23.へいへいビビってる~

にらみ合う私たち。

だけど、少し時間が経過すると私たちは少しだけ後ろに下がることになる。その理由は、


「掘り終わりました!」

「こっちも作業完了です!」


「よ。ならもう少し範囲を広げつつ増やしていくわよ!できるだけ敵が避けにくいようにしなさい!」


「「「ハッ!!」」」


睨みを聞かせていた戦闘の方の兵士以外、後や真ん中くらいにいるような兵士たちはあまり戦闘のことなど考えずひたすらに作業をしていた。

その作業が何かといえば、穴掘り。


敵兵器は割と大型なものが多いため、ここで悪路を作っておくことでそれらが通りにくいような地形を作ることにしたというわけ。

もちろん迂回されたら終わりと言う風に考えることはできるけど、それをさせないように全体を囲うようにして掘り進めていけば良いだけの事。


「敵はかなりざわついてますね」


「無駄だとは分かっていても、すぐに挽回という風に持っていけない物ね」


これは敵の心に与える負荷をかけるもの。特に、今回こちらから追い返されたことに焦って挽回したいと思う者達を焦らせることにつながる。


ただ逆に、焦らない者達にとっては安心材料にもなる。

こうして攻城兵器を持ってこさせないような処置をするという事は、こちらが攻める気がないという事を示すことになるのだから。


「でも、ここまで頑張っても1日もかからず全部ふさぐことができるんですよね?帝国の技術はものすごいものですな」


「そうね。厄介な相手だと思うわ」


敵はこういう穴を埋めるような道具を持っているらしい。

だから、戦争が始まったことにはこういう穴を大量に掘って守りを固めようと公国側は考えたらしいんだけど、労力に見合わないような効果しか得られなかったのだとか。

ただ、今回私たちが狙うのはそういうものではないからこれがあまり意味がない事でも構わない。


焦るにしろ安心するにしろ、敵は私たちの動きを観察しておく必要がある。

壁の上で難しい顔をして眺めているだけの人達は放っておいて私たちが作業していても、向こうはこちらを最大限に警戒しておくしかない。

全体の動きを見た限り敵の街をまとめる総大将のようなポジションの人は安心している側っぽいから、打って出てくることはあまり考えにくい。もし出てきたとしても、それは焦ってる人たち強行したというだけの形になると思うわ。それならばこちらでいくらでも調理できる。


途中から開門されていつでも向こうが打って出ることができるみたいな威しの姿勢まで見せてきたけど、私からすればそんなことはどうでもいい。

攻められるならば攻めてみろと言わんばかりに作業に集中させてもらう。

もちろん、こんなにせっかく穴を掘らせたんだから、これに敵が引っかかりそうなくらいの距離まで引いて戦うつもりよ。

幾ら敵が穴を埋めるような道具を持っているのだとしても、さすがに戦いながらそれを使うというのは難しいらしいからね。


「さて、そんなことは良いとしていい加減向こうでの動きがあってもいいころ合いだと思うのだけど」


「そうですね…………おっ。丁度良く煙が上がっているのが見えますな。始まったのでは?」


「本当ね。そうかもしれないわ」


ここまで私たちが敵の注意を引いていたのは、目的があったため。私に直接提案をしてきた一般兵の作戦が始まるのを待っていたからよ。

それのためにわざわざこうして穴を掘るなんて少し面倒なことをしてまで注意を引いていたの。


そこまでした結果と言って良いのかは分からないけど、敵の守る街の方から煙が上がる。

やっと動き出してくれたみたいね。


「撤退する敵兵に紛れて向こうの中に入り込むなんて、よくそこまでの命知らずなことができるわよね」


「相当な恨みがあるのでしょうな」


これを引き起こしたのは先ほどから考えている一般兵。

どうやらこの敵がいる街を昔防衛していたことがあるらしく、街の構造にも詳しいのだとか。だから敵の物資などを保管している場所にもおおよその見当がつくとかで中まで入らせてくれないかと私にお願いをしてきたというわけ。


たとえ失敗しても行ってしまえばそれに参加した兵士数人が処分されるだけだからこちらとしてはそこまでの痛手でもなく、悪い提案ではない。

という事でまかせてみたら、やっとその所為からしきものが視えてきたというわけ。

恐らく保管庫にある物資に火をつけたんでしょうね。ここから逃げられるかは分からないけど、しばらく様子は見てあげることにしましょう。


「それじゃあ、伝えていた通り一部部隊を前進させて」


「はい。すぐに」


私たちはこの敵の内部での問題が起きたことに合わせて、一部の部隊を少しだけ前進させる。

もちろんそれだけではなく、


「ううおおおおおおぉぉぉぉ!!!!!」

「破壊しろぉぉぉ!!!!」

「ぶっ潰せぇぇぇ!!!」


あちこちから響き渡る公国兵の叫び声。そして、まるで全軍が移動しているかのように思える足踏みの音。

これで当然ながら敵は焦る。

内部で問題が発生したかと思えばそれに合わせるようにしてこっちが攻めてくれるように見えるのだから、焦らないわけがない。

ついに門が開き、数はそこまで多くない物の敵の部隊が街から出てくる。もちろんそれだけでなく壁の上に配置された兵器は次々と作動され、こちらに矢の雨が降り注ぎ石が大量に飛んでくる。


「射程の測定は間違えずにできていたみたいね」


「そうですね。ここまで届くものはありませんか」


敵は焦るけど、所詮こちらが攻め込もうとするのは見せかけの物でしかない。

たいして前にも進んでいないから、充分敵の射程を測ったうえで作業していた私たちに届く攻撃はほとんどないわ。

たまに地面にぶつかった石がはじけて来るなんてことはあるけど、その程度は問題にもならない。


逆に問題が起きているのは相手側。

門から出てこちらを抑え討ちに行こうにも、上から振る攻撃の量が多すぎて誰も迂闊にこちらへ近づいてこられない。

いるだけ無駄と言うような状態になってしまっているわ。

上と下で連携がうまくいってないんでしょうね。

出てきた兵士たちが予想以上に前に進めなくて陣形を組むのに苦労してるわ。


「とりあえず、これでしばらくは向こうも内側に向けられる兵士の数は減るわよね?」


「でしょうな。これが少しでも助けになればいいのですが」


ここまでの事をした目的は、中で暴れている公国の兵士を支援するため。できるだけこの警戒に帝国側の兵士の割合を増加させることで、捜索する敵兵の数を減らすつもりなのよ。

公国側の兵士の人数を考えると正直に言ってこれでも焼け石に水と言う程度にしかならないのではないかと思うけど、やらないよりはマシでしょう。

実際、最初に煙が見えてからさらにいくつかの地点で煙が上がっているようにも見えるわ。


「結構広い範囲で活動しているみたいね。それぞれ分かれて行動しているのかしら?」


「そうでしょうな。追手の人数の事も考えれば、別れて行動したほうが起こせる問題の数は増えるでしょうし」


行くと見せかけて襲わない、おちょくるようにギリギリのラインの上で踊っている私たちに敵側もストレスを増していそうな様子。

後方で上がる煙と火の手に焦られないはずがないわ。そのうえでこうして私たちにバカにされるようなことになっているのだから、思考も少し短絡的になるのも仕方がない。


「おや。門の近くにいる兵士たちがもめていそうですね」


「打って出るかどうかという話かしら?もめてるのでしょうね」


目の前の敵は、目に見えてもめていると分かる箇所がいくつかある。

それぞれもめている個所では部隊が違うように見えるから、きっと指揮官の方針がぶつかっているんだろうという予測ができる。


一応ここまでされると私たちもある程度迎え撃つなり逃げるなりできるようにはしておく必要はあるけど、それでも基本的にやることは変わらない。

ただただひたすらに嫌がらせのための穴掘りを続けて敵の動きを待つ。

そうしていると少ししびれを切らしたような敵が現れて、


「おっ。馬を走らせてきましたね。ただまとまりはないですし、一部の暴走と言ったところでしょうか?」


「おそらくそうね…………防衛体制を取りなさい!打ち合わせ通り再起できないくらいに叩くわよ!」


敵の動きを今まで観察して、こうした事態になることも想定していた。だから、戦うつもりはないと言っておいてこういうことになるのは悪いんだけど、少し応戦させてもらう。

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