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22.背中ががら空き

「フハハハッ!大戦果ですぞ!!」


「素晴らしいわね。これで王国も威信を示せたんじゃないかしら?」


再度敵に突撃し穴をあけてきた王国兵。

後ろにいる間に4人、行きと帰りに1人ずつの合計6人くらい敵の指揮官も倒せたみたいで、大戦果と言ってもいい状況よ。

そして何よりもやはり、敵の弓兵を大きく減らせたことが大きい。

いい加減騎馬隊も前に出られず弓体も減りと強みが減ってしまったことで帝国兵も動きがかなり消極的なモノへと変化する。特にその流れは被害が起きた私たちの正面、つまり中央の敵が顕著で、このままいくと敵が中央から撤退していきそう。


後はこちらも圧力をかけ続けるだけでいい。

時間をかけて追い込んで指揮官らしき人間を追い込んでいけば、


「て、撤退する!」

「退けぇぇ!!」


ほんの数人だけど、少し撤退や後退を決める人間が出てくるの。

こうなればそういう流れが出来上がって、中央から左右へと広まっていく。

後はこちらは追いかけて背中から斬りかかり矢の雨を降らせれば戦果を稼げるという簡単なお仕事に早変わり。

やっぱり敵が背中を見せてくれた時が1番被害を与えやすいのよねぇ。


とはいえ被害を大きくはできても全滅は厳しい。

攻略された街に帝国兵は逃げ込んでいき、そこで一時的にではあるものの私たちの攻撃の手を止めることになる。


「戦いもいったん終わったし、いい加減指揮をどうにかしないといけないと思うんだけどこの辺りはどうなるのかしら?」


私もさすがにここで指揮の引継ぎが行なわれるだろうとは思っていた。正直に言えばもう少し早いタイミング、敵が引き始めたくらいで交代になるかと思ったけど結局は私に武功を立てさせてもらえたわ。

一体どうなっているのかと問うてみれば、


「それがですねぇ……本来受け継がれるはずだった方が受け継ごうとしたところで矢を受けて落馬。そのまま首の骨が折れるという大けがを負いまして。もう生き残ることは困難な状況になっているのです」


「では、その次に引き継げそうなものは?」


「そうなりますといい加減階級の問題が出てき始めてですね」


「階級なんてこの状況で気にしてどうするのよ。私にやらせる方がマズいでしょ」


私は報告してくる兵にジト目を向ける。

この兵士が悪いわけではないことは分かってるんだけど、そうもしたくなるくらいには公国側の指揮系統が混乱してるのよね。なんでこんなにも上の方の人間がことごとくいなくなってしまうのかしら。

運が悪いにもほどがあるわ。


ただそうして文句を言っていても対応が遅れるだけなので一旦生き残っている指揮官を集めてもらって対応を協議しようと思ったんだけど、公国側の兵も時間が惜しいことに加えてこんな状況での判断の責任を負いたくないのか、


「子爵にぜひともお願いしたく!」

「上層部から何か言われた際には私どもで全力でとりなしますので、なにとぞこれからもお願いをいたします!」

「エルグ殿も補佐でつかれているのですから、ここまで心強いことはありません」

「エルグ殿がいるのですからな。やはりここは子爵が1番でしょう」


私に押し付けられた。

なんだか最後の方はエルグがいるからと言う理由が強くなってきている気がするけど、なんでこんなにエルグは名前が挙がるのかしら?嫌われてるのか、それとも慕われているのか。

何かよく分からないけど、この雰囲気だと他の候補を探すのも大変そうね。


仕方ないので私が指揮はとるという事にさせてもらって、


「敵の殲滅よりも街から追い出すことを優先するわ。もう一度ここの街を防衛拠点として使えるようにしましょう。誰か、連絡を取ってこの街の市街戦で指揮を執っている人にもそういう風な方針を伝えてもらえるかしら?」


「かしこまりました!私が行ってまいります!!」


方針は、これ以上私たちの被害を増やさないためにも敵の殲滅から追い出しに変えさせてもらう。

これには当然市街戦のために残っている兵士との連携も必要だからそこと連携を取ってもらい、徹底的に脅して逃げていくように誘導する。

向こうもそう長くはとどまっていられないと判断してくれると思うんだけど、


「追い出した後にも手は打ちたいけど、あまりにも手が足りないわね。いったん追い出すだけで満足しておきましょうか」


私の指揮権もそうだし、戦力の理解もあやふや。あまりにも集まっていないものもまとまっていないものも多すぎて、今は下手に動けないわ。

こちら側の打てる手が下手したら自分の首を絞めるものにもなりかねないし、おとなしくしているしかないという結論に達したわ。

戦果としては十分だし、欲はかき過ぎず満足しておくことにしましょう。

そう思っていたのだけど、


「あ、あの!子爵様!大きな作戦を立てていないならお願いしたいことが!」


「お、おい。お前!やめろ!」

「一般兵が何を言ってるんだ」


私に声をかけてくる兵士が1人。

周囲から止められていることから分かるように一般兵みたいで、指揮官に何か言えるほど、それこそ今の私のような全体を預かっているような人間に何か言えるほどの力はない。どちらかと言えば軍としてはそんなことをすれば処罰しないといけないわね。


でも、今は決して通常と同じと考えて良い状況ではない。

他国の人間が全体の兵を預かっている状況なんて、常時と言って良いはずがないんだから。だからこそ私は通常の軍規などに従う必要もなく、


「良いわよ。聞くだけ聞くわ」


「っ!ありがとうございます!」


まずは聞いてみるだけではあるけど、お願いと言うものを語ってもらうことにする。

その内容としてはそこまで全体的な動きに関わるようなものではない。せいぜい提案した兵士とその周囲に影響があるかもしれないという程度のもの。

特に何もできないと考えていた現状なのだから、その程度であれば受け入れることもさして問題はない。


ということで、私はその提案を了承。

そしてそれの補助のため、軍を動かすことにする。


「悪いけど仕事を追加するわ。特に本格的な戦いはしないから安心してもらって構わないわ…………戦場に絶対はないから、油断されると困るけどね」


「ハハハッ!帝国に痛い目を見させてやれるというのならばいくらでも働きますとも!」

「敵の首を並べてやりましょう!!」


大きな戦いの後だからさすがに疲労は溜まっていると思うんだけど、それでも返事は元気いっぱい。

これならそこまで心配する必要はなさそうと判断を下せる。


とは言っても私たちの動きはそう難しい物ではない。

まずは単純に街に残っている敵兵を追い出す作業を手伝い、たまに可能であれば間引いたりしながら逃がしていく。

そしてだいたい逃がし終わったとなったら後のことは市街戦の指揮をとっていた兵士にまた街の事は任せて、


「よぉし。追い立てるわよ!」


「その首置いてけぇぇ!!!」

「逃がすかぁぁぁ!!!」

「背中ががら空きだぞぉぉぉ!!」


逃げていく敵を更に追いかけていく。

そこまで敵に被害を出すつもりはないけど、張り切っている味方のお陰で帝国兵も必死。

追いつかれてなる物かと速度を上げ、我先にと逃げていく。


たまに無理のし過ぎで体力に限界が来る兵もいるけど、そうしたものは簡単にサクッと処理できるからボーナスみたいなものね。

あえてこちらから狙われないようにまっすぐには帰らず横にそれて行ったりしている兵士は優秀と言えるかもしれないわね。


「おお。見えてきましたよ。あれが敵の拠点ですな」


「なら、このくらいから速度を落としましょうか。全体に矢の警戒をさせておいて」


「かしこまりました」


ただいつまでもそうした追立ができるわけもなく、敵が拠点にしている元公国領の街に到着することになる。

そこの壁はやはり高く、そのうえでは逃げてきた兵から事情を聞いて慌てて配備されたらしい帝国兵がずらりと並んでいる。

もちろん、弓などの遠距離武器を装備した状態で。


こうなると私たちも迂闊に近づくこともできず、じりじりと距離を詰めていくことになる。

ただ、向こうも味方の兵士が負けて逃げ込んできた以上あまり戦いたくないという判断をしたようで、被害の優先よりも牽制を優先して。精度よりも射程を優先したような弓の放ち方をしてくることになる。


「だいたいこれくらいが向こうの最高射程ね。これ以上近づくのはリスクがあると考えた方が良いかしら?」


地上の私たちと壁の上の帝国兵がにらみ合う形で膠着状態となる。

その間にさらに防衛のための兵士と兵器が壁の上には増えていき、より防衛能力は強固なものと代わって行った。

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数話前を読んでる自分「公国兵死に過ぎでは?脆すぎる、弱いのかな⋯⋯?」 今の自分「あかんこの公国民、薩摩狂戦士魂がインストールされておる⋯⋯防御投げ捨てて脆いのか⋯⋯()」
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