16.人がいないなら効率を上げればいいじゃない
・中抜き 91
とても素敵な文字と数字じゃないかしら?
私がやられたらブチギレる自信はあるけど、今の私には非常に魅力的に見える。
国に支払う税金がとんでもない量だから保管とか輸送とか大変になると思っていたけど、それなら抜いてしまえばいいのよね!減らしてしまえば何も問題なく運営できるわ!!
運が良い事にこの単語をぶら下げてきた役人は財政担当らしいから相談役にもうってつけ。早速現状を説明して何かいい改善策がないかと尋ねてみれば、
「でしたら、避難民が切って建築に使った木材など、一度こちらで購入したことにして計算してはいかがですか?」
「そんなことしてないけど、良いの?というか、それを避難民に実態確認されたら発覚するわよ?」
「それの代わりを物資で提供しておいたことにすればいいんです。そうすると使った金額の名目を変えて記載できるので、こちらの利益と言うものを少し減らすことができるかと」
「なるほど。利益率はそこまで高くないってことにしておけば、かかる税の比率も少し変わってくる………」
「はい。さらに、使った物資の一部は今までの備蓄も使ったことにしましょう。確か、実際に一部の報奨として受け取った物資と以前から保管した物資が混ざってしまったという事故があったためそれが利用できるはずです」
「できるかもしれないけど、それで何かメリットがあるの?」
「備蓄を消費した場合は新しく備蓄を購入する場合の税率が一定額ですが軽減されるはずです」
「ああ!そういえば災害の時とかに使う物資のためにそういう決まりがあったわね」
この役人、滅茶苦茶有能。
細かくではあるけど、次々と申告する金額を減らしたりそこにかかる税率を下げたりするための策が出てくる。
そうすると昨年度から2倍近くまで膨れあがるかもしれないという予測すらあった支払金額が、なんと1.3倍程度にまで縮小されていく。
「ふむ。素晴らしいわね」
「お役に立てなら光栄です」
「もしこれが上手くいったなら、そこで浮いた何割かはあなたの給料に上乗せしておくわ」
「でしたら、直接ではなくこちらへ回す金額を多くしていただければ。給料が上がりますと、取られる税金も変わってきますから」
「図太いわねアンタ」
実に欲深い。でも、嫌いじゃない。
これがどこまでうまくいくかは分からにけど、通用したらそのぶんのお返しは必ずしてあげましょう。我が家にとってもこれは一大事だからね。
ついでに、どうせ来年度も避難民の事とかでごたごたがあることも予想されるし、
「ではあなたを、正式に税理の相談役に任命するわ。給料もアップするし、成果もあなたが言うような形で上乗せするから頑張りなさい」
「ありがたき幸せ」
「結構収入は増えるはずだからやらないとは思うけど………こんな感じで変に申告する数字を縮小することは私の家に対してはやめてね?」
「…………もちろんでございます」
この見えてるものでこの役人が中抜きの才能を示しているからと言って、それを信じる理由なんて1つもない。ただ、今回の事で余計な考えを刺激してしまった可能性はあるし釘を刺しておくに越したことはないと思うのよ。
我が家でまかせてる部分を中抜きするより、まじめに私が新しく任せた部分で活躍する方が得られる収益は多いだろうから変なことは考えずに頑張ってほしいわね。
「見つかった時はどうなるかと思ったけど、まさかこの才能を利用しようとするとは…………あれが本物の貴族の器、か」
新しく税金に関しても対策が立てられたうえに兄弟が領地運営を一部肩代わりしてくれるようになったからかなり私の領内でする仕事量は減った。
それでももちろん避難民の街の方から届く報告には頭を抱えることにはなるわけだけど、それでも対策をせずにいた場合よりは十分マシになっているはず。
ただそうはいっても私の仕事量全体で言えば減少したというほどでもなく、
「子爵、ご迷惑をおかけ申し訳ありません」
「いえいえ。かまいませんよ。私としても、派閥内で問題が出てしまうことは避けたいものですので。事が大きくなる前に信頼してご相談いただけたこと、こちらとしてもうれしく思います」
私に頭を下げる男爵と、その側近数名。
現在は中立派になると当主でない血縁者が宣言してしまったことでその人と当主との間で問題が起きてしまった家にとりなしに来ていた。
予想はしてたけど、本当にこういう問題が起きると頭が痛いわ。
今回は男爵家だったからまだいいけど、これが子爵家や伯爵家になるとさらに面倒。
同程度、もしくは下の立場の子爵である私がそう簡単に家の内情にまで手を入れて良いわけもなく、結構地道な作業になることも多い。
代わりに問題を解決した後には向こうから感謝もされるし恩も大きく売れるというメリットはあるんだけど、いい加減忙しくて倒れそう。
「内政以外も任せられる人間が欲しいわ」
私はもっと代理で動いてくれる人間が欲しいとため息とともに願望を告げる。
ただ、私はそんな人間だけが今足りないと思っていたんだけど、
「人材で言いますと、屋敷の使用人も現在不足しておりますね。こちらの改善も必要かと」
「…………は?何それ。聞いてないんだけど?」
「そこまで深刻な問題でもありませんので今まではご報告しておりませんでした。今は早急な解決の必要はございませんが、そういった問題も起きているという事は頭の片隅に入れておいてもらえますと」
初めて聞いたけど、理由は想像できる。
ほぼ間違いなく、理由は兄弟たち。恐らく3人が自分の世話を任せるって溜に引っ張って行ったんでしょうね。使用人たちも私のとの交流はあまり多くないしどこまで子爵としてやっていけるから不安だから、教育は受けている3人について行く者が多かったんでしょう。
私が今まで屋敷内で認められるようなことをしてこなかったから仕方のない事ではあるんだけど、要は舐められているってことなのよね。
むかつくけど、今は対策を立てることを優先した方が良い。
「雇えそうな使用人はいないの?最近は戦争の影響で貴族とかその血縁者も数人減ってるし、そこで解雇される使用人もいるでしょ。特に、裏切っていた伯爵家とか代官が来たとは言え全員は抱えきれなかったはずでしょ?」
「あの家ですか…………誰が息のかかった人間か分かったものではないですが、構わないので?」
「構わないわよ。使用人にはそこまで深く立ち入らせたりはしないわ」
裏切者である可能性なんて考えるのは良いけど、今の間に人を雇おうとすればそのリスクはたとえどんな相手であったとしてもセットでついて来るもの。
警戒しておかなければならないことに変わりはないし、できる人間がいるのなら雇ってしまいたいわ。
そうして決断をしたところ、やっぱり裏切りが響いていたのかそれなりの人数裏切った伯爵に使えていた使用人を集めることに成功して、
「新人が18人ね。勝手は違うと思うけど、そこまで大変な仕事はないはずだから伯爵家でやって来れたあなたたちならどうとでもできると思うわ」
「かしこまりました。当主様のご期待に沿えるよう力を尽くします」
伯爵家ではそれなりに目使用人としては高い地位にいたらしい人たちが新人として入ってきた。
さすがに伯爵家で活躍していただけは合ってその仕事ぶりはすさまじく、減った人数の方がそれでも多いはずだというのに仕事の効率が爆発的に上昇した。
気付いたらお茶が入ってるしそれはおいしいし、食事なども豪華になっているような気がする。
しかもそれで使う金額は変わったりしていないから、驚愕せざるを得ない。
「あの人たちの影響で前からいた使用人も動きが良くなってるわね」
「はい。私も非常に驚いております。まさかここまで変わるとは」
ローレンと私は2人で結果に呆然としている。
私たちの使用人もそれなりの水準に達していると思っていたんだけど、上ははるかに遠かったのね。
「とりあえず、使用人の問題は解決したってことでいいかしら?」
「はい。そう考えてよろしいかと」




