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15.手が足りない!!

私の提案したことを実行して戦争を止めて見せた(とはいっても物資が戻ればまた襲ってくる可能性は十分ある)伯爵。

しかしそれが最善の行動だったかどうかというのは今の段階だと何とも言えないところであり、もしここで決着をつける予定だったから敵を無駄に引き下がらせたことは害となる行為だと言われるとこちらとしてはかなりマズい。

提案者という名で実行側に深くかかっていることになってしまっている私としては反論が難しく、


「伯爵。確かに提案はしましたけど、実行するというお話は聞いていなかったのですが?」


全力で私は自己弁護に走る。

提案はしたけどやるって言われてないもん!と関与が薄いという事をアピールするの!

そしてさらに、自己保身だけでなく周囲も勝手に使わせてもらって、


「それに、私はまだいいですが公爵様や代官の方、更には国軍の方に伝えたのですか?全体として指揮を執る方々からすれば間違いなく聞いておかなければならない情報、伯爵としても作戦の一部として伝えておかなければならないことだと思うのですが?」


「ハハハッ!確かにそうだねぇ!いや~申し訳ない!うまくいくかどうかは怪しかったから、あまり重要視してなくてね!」


伯爵を糾弾、と言うほどではないにしろ、今回担う役割上の責任を問うことで伯爵が完全に悪いという状況を仕立て上げる。

悪いのは伯爵であって私じゃないんだよ!と全力でアピールするのよ!

こうして常識的な発言をすると将来伯爵のストッパー、つまりお目付け役みたいな立ち位置にされてしまう可能性もあるけど、ここで責任を問われるよりはマシだわ!


ただ、幸いなことにと言うべきかこの状況を作った伯爵を責めるような人間は表立っては出て来ず、


「気にしなくてもいいとも。敵が引いたのだから、こちらの勝利と言ってもいい状況にはできたのだ」

「敵の物資を減らせたというのであれば、今後の事を考えても悪い事ではありません」

「報告をしていただけなかったのは少々困るところではありますが、結果としては悪い事にはならなかったのです。不問といたしましょう。ただし、次回何かされる際は情報共有をお願いいたします」


「ハハハッ。悪いね。気をつけるよ」


伯爵の好意は許され、少し感謝されるというものになった。

伯爵に全部押し付けるような形にしたとはいえ、問題が起きなくてよかったわ。私に飛び火する可能性も十分あったわけだしね。

特に、伯爵とか私を巻き込んで何をやらかすか分かったものではないんだし。


とりあえずこうして敵が引いてその原因が分かったという事で、私たちは戦場から帰還することになる。

なお、伯爵はと言うとまだ目立ちたいようで、


「今回は迷惑をかけたし、1月ほどは警戒のために我が領で国軍が滞在していつでも出られるようにすることを許可するよ」


「それはありがたい申し出ですね。敵の物資がどれほど残っていてどれほどの早さで再度の侵攻に踏み切るのかもわかりませんし、お言葉に甘えさせていただきます」


「うんうん。そうしてくれていい。私の方で必要な費用はある程度持つから安心してくれたまえ」


「重ね重ねご厚意に感謝いたします」


自分の領地に国軍が留まることを許可していた。

国軍の人間とも縁を結びたい人間は多くいるでしょうし、そうした人たちを自分の領地に集めたいんでしょうね。

そうすれば、領主である伯爵にもそういう人は挨拶に来るだろうし、自分に挨拶する貴族も増えて株が上がったように見せられるというわけ。

ついでに自分のところの兵士と国軍の兵士の共同訓練なんかもさせれば自分の兵の実力も伸ばせるだろうし、出費にさえ目をつぶれば良い事ばかりと言ったところなのでしょうね。

目立ちたがりの伯爵にすれば財政状況なんて二の次でしょうし、悪いことは何もないと言ってもいいくらいじゃないかしら?


では私の方は伯爵と違って落ち着いて過ごせそうかと言うとそんなこともなく、


「子爵、今度茶会があるのだがぜひとも参加をしてもらえないだろうか」

「家の息子がちょうどいい年齢でな?」

「そういえば最近、避難民の受け入れをされているのだとか?実は私の領地も避難民に困っておりまして」


いろんな貴族から話しかけられ、先の予定が埋まっていく。

本当なら自分の領地の事も兼ねて考えて予定は立てなければならないのにこうして外の予定ばかりきめてしまっているのはかなりマズいわ。ローレンに怒られそう。


でも中立派の常識人みたいな位置づけで観られてしまった以上、派閥のためにも頑張るしかない。頭が痛いわね。

という事で私は帰宅後、ローレンに怒られる前に謝っておき、新しく領地のための手を打つ。

それこそが、


「集まったわね。お兄様に弟ズ」


「うん。何か用かな?」

「姉上~。いい加減俺の婚約者決めてくれたのか~?」

「ついに俺たちの誰かに家督を譲ることを決めたのか!もちろん俺だよな!俺だよな!!」


「はいはい。どうにもいいこと言わないの。仕事を持ってきてあげたから感謝しなさい」


「「「え~」」」


「文句言わないの!これが上手くいけば領地経営能力も問題ないってことで次の当主の有力候補になるんだからね?」


「「「いえ~い!!!」」」


「喜べとも言ってないわよ」


「姉上は細かいな」

「もうちょっと何が言いたいのかはっきりさせてよ。役目でしょ?」


「初めて聞いたわ、そんな役目」


集めたのは我が兄と弟たち合わせて3人。

全員私とは違って本来の当主候補として教育を受けており、それなりの領地経営の知識はある。

だからこそ、私が手を付けられない分を3人に負担してもらう。


「それぞれ男爵家が持ってそうな領土よりちょっと小さいくらいの範囲を治めてもらうわ。詳細は紙面で渡すから、まあほどほどに頑張って」


「「「え~」」」


「不満そうにしないの!我が家もそこまで広い領地を持ってないんだから我慢しなさい!」


「「「は~い」」」


3人とも問題がありそうに見えるけど、これでも一応時期子爵を狙っていたらしい。

そして今もあきらめたわけではないようで、態度とは裏腹にその目にはやる気の炎が見える。相当気合が入ってるわね。


ここでいい結果を出せたら子爵を譲るかどうかはまだ決めてないけど、それでもそれなりに良いポストは用意して私に何かあった時に次を任せるようにはしておくつもり。

せいぜい頑張って私の負担を減らしてもらいたいところね。


「ローレンはどう思う?あの3人なら誰が1番才能がありそう?」


「一応教育時の様子も拝見させていただいておりますので、その時のことを考えますと皆様同程度と言ったところです。それぞれ人間関係をまとめることが上手かったり治安の改善が上手かったり、経済の活性化が上手かったりと言った個性はありますが大まかな能力に関しては同程度と考えて良いかと…………ただ」


「ただ?」


「あのお三方には申し訳ないですが、中立派と言う派閥の中核をやっていけるほどの才覚は見受けられませんでした。何の変哲もない子爵としてやっていくにはぎりぎり足りているという程度のように思えます」


「なるほど。家督を譲ることはだいぶ厳しそうね」


「おそらく、お嬢様が今回任された物より少し広いくらい、男爵家が待つ領地の中で大きい方と言う程度の土地がちょうどいい程度ではないかと言うのが私の見立てとなります」


ローレンから聞く限りそこまで期待はしちゃダメみたいだけどね。

でも、そうなるとやはり私が頑張るしかない。

戦場に出る前はまだ半分冗談みたいに思っていたけど、本格的に例の避難民の作った街が出す利益が頭を抱えるものになってきている。

扱う金額が増えて、我が家で使う資金だと問題が起きそう。特に、資金をためておく場所とか運び方とかでいろんな問題が起きることが予想できる。


「この金額が入るような保管場所が存在しない。それに、馬車もこれだけ運べるような量と強さはないわよね」


「ですね。新しく買うとなりますとそれはそれで出費は大きくなりますし、そもそも馬車は納入が間に合わない可能性が高いでしょう」


「うえぇぇ。どうしよう」


他の貴族に借りる。

これはお金で解決できそうな気がするから、悪い事ではないように思える。

でも、それをすると我が家の弱みを見つけられることになる。こちらに恩を売ろうと手を尽くしてくれるならまだいいけど、もしあの目立ちたがりの伯爵なんかに利用されたら録なことになる気がしない。


どうすれば良いのかしらと本気で悩んでいたところで、私の部屋に1人の役人が入ってきて、


「ローレンツ様。書類の方をまとめ終わりましたので提出に参りました」


「ああ。ありがとうございます。そこに置いておいてもらえますか?」


その手に持つのは書類。

どうやら何かの報告書をまとめてきたみたい。

だけど私はその報告書よりも先に気になる物があって、


「あなた、どこの部署の人間かしら?」


「わ、私ですか?私は財務の方を担当させていただいております!」


「そう…………少しお話を伺ってもいいかしら?」


「は、はい?」


本気で困惑した様子を見せる役人。

でも、仕方ないわよね。私、見つけてしまったんだもの。

その目の前にいる人から突破口と言うものを。

その役人と一緒に見えるものは、



・中抜き 91

新作の短編「殿下に婚約破棄をされましたけど、おそらく婚約者を間違えてます」を投稿しました。

実験的な要素も含んでおりまして、今後の作者の各作品の参考にもしようと思っているのでぜひともご意見ご感想いただけると幸いです


なお、数日前に今作が短くなってしまったのはこの短編の設定がこちらと被らないように調整していたからだったりします

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― 新着の感想 ―
この子、某ガチ勢かロキさんの並行世界の同一人物かなって思い始めてしまった(遠い目)
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