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召喚されたら最強の邪神だったんだが  作者: 夕凪 瓊紗.com
エーデルシュタイン王国
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【4】勇者の特性



クガタチと言うのは便利なものだ。まさに俺の手足に等しい。


クガタチの伸びた先でソウの身体を苛むものを見る。さらにクガタチは俺の目でもある。全ての感覚を共有し、さらには邪神の寵愛を授ける。


ソウに襲いかかろうとするものを全てはね除け、沸き上がる探湯沼(くがえ)と共に罪人どもを引きずり込み、一気に遡上する……っ!


「ソウ……っ!」

「ソウっ!」

ほぼキナと同時に飛び付いた。


「え……っ、キナ!?それに……タツ……本物?生きてる!?」

キナと顔はそっくりだが、髪は黒、目は黒である。


「……ったりめぇだ。俺は死なねぇよ。神、だからな」

「神……さま?これも……」

ソウが身体に巻き付くクガタチを見る。


「俺の手足。まぁ、詳しい事情は後だ」

まぁ地球にいた頃から順応性が異常に高いことは知ってる。女神からもソウにピッタリのいいスキルをもらったな。


そして俺はキナとソウを背後に庇いながら冷たく見据える。


震えながら尻餅を着く男を……。

一応コイツだけは引きずり込むのは待ってやった。


何せソウに手を出した張本人だからな……?

一緒に嗤って見てたやつはとっくに探湯沼(くがえ)の底だが。


「しかし……お前も召喚者ね。いたっけか。いたのだろうな」

俺はキナとソウしか見てなかったが……ステータスは確かに召喚者である。


【召喚者:タケル・トウミヤ】


【ジョブ:ゆ(勇Us者ャ】

「ステータスすらも弄ったか」

共犯が裁かれたからこそボロが出ている。


「やはり勇者を騙った偽物か」

「に……偽物だと!?この化け物め、ぼくは勇者だ!貴様こそ誰……いや、見覚えがある」

「ほう?そうなのか?褒めてやってもいいが……俺のソウに手を出した以上、帳消しどころかマイナスだ」


「意味の分からないことを……それにお前は死んだはずじゃ!?」

「化け物と言ったのはお前だろう?ただ死なない化け物だっただけだ」

「そんなもの、いるはずが」

「目の前にいるだろう?この俺が」


「な、何者なんだ!」

「何者って、神さまだよ」

お前らだって知ってるだろ?神は不老不死である。


「嘘だ!召喚された時に聞いたのは女の声だった!」

「神は1柱(ひとり)だけじゃない。お前が聞いたのは女神の声だろう?」

召喚されたのなら通例通り女神が役目を果たすだろう。しかし何故この男は召喚されたのだろう……?あれは俺を呼び戻し、聖女のキナと半身のソウを喚ぶものだ。疑問が付き添うが、探湯沼(くがえ)に囚われている以上それを認識することは簡単だ。


「ふぅん?召喚陣が発生したことをいいことに、流行りの異世界召喚だと目を輝かせ、欲を出し滑り込んだか」

「何故それを……」

「神さまだからって言ってんだろーが」

普通は女神が弾くだろうができなかった。女神の力が阻害され、信仰を奪われたからだ。


「さぁて任意聴取はここまでだ。俺のソウを傷付けた報いはたっぷりと払ってもらうぞ」

お前の罪は既に見抜いている。それが俺と言う神である。そしてその罪を探湯沼(くがえ)に引きずり込んで右ケ左を問う。


「んー……もう探湯沼(くがえ)に引きずり込んでもいいんだけどな……」

ふとファウダーを見やる。そういやコイツは本物の勇者だったな。


「いい余興を思い付いた。ファウダー、お前勇者なんだから、後輩の相手をしてやれ」

因みにファウダーは探湯沼(くがえ)の闇をその身体に擦り付けていた。そろそろやめろ、お前だけ放り出すぞ。


「ん……?まぁ、いいが」

ファウダーが気持ち悪いにやけ面から仏頂面になると、さくっとタケルの前に立ち黒い刀身の剣を抜く。


「何、あの黒い刀身」

キナがその恐ろしげな雰囲気を纏う刀身を見てふと漏らす。


「ほんっと勇者らしくねぇやつだよなぁ。まぁ、あれは問題ない。俺の色だ」

クガタチや探湯沼(くがえ)と同じく。そう告げればキナが「確かに」と頷く。

そう言うところもかわい……いやそれよりも今は余興である。


「勇者だと言い張るのならかかってくるがいい。レベル10」

レベル……?あ、本当だ。アイツ、レベル10か。ファウダーも鑑定は使えるはずだ。あれでもチートな勇者だからな。

しかしレベル10とはいえ短期間でどうしてレベルが上がったか。その理由は明らかだ。ソウの力を奪い、痛め付けて得たもの。だからこそその程度だ。


「な……何なんだ……っ!貴様ら!」

タケルは叫ぶがファウダーは容赦なく魔法を乗せた剣戟を放つ。


「アハハハハハッ!どうした!勇者なのだろう?」

ファウダーの攻撃にさすがに命の危険を感じ取ったのか、タケルが必死で逃げ纏う。


「アイツ、躱してはいるけれど……」

「いや、キナ。アレはファウダーがわざと外してんの。じゃなきゃレベル10が己の100倍レベルが上の勇者になんて敵うはずないだろ」


「え……っ、ファウダーってレベルは……」

「1000だ」


「うそ……神レベルじゃん」

キナが完全に絶句している。いや、神のレベルは9999なのだが。


「さて……そろそろ追いかけっこも飽きてきたァ。勇者相手の戦いの唯一の楽しみを知っているか……?」

ファウダーが愉悦に満ちた笑みを浮かべる。あの顔は絶対健全なヒーローモノには出してはいけないだろうな。

「はぁ……?」

タケルはファウダーの遊びがやんだことでヒィヒィと息を切らしながらファウダーを見る。


「勇者ってのはどんな強大な技をぶちこんでも……必ずHPが1残るんだァ」

ニタァ……っと嗤うファウダー。ほんと……コイツが悪役じゃないのが不思議なほどだわ。


「つまりお前が本当の勇者なら受け止めても瀕死で受け止められるよナァ……っ!?」

そしてファウダーが剣に膨大な魔力を纏い突進する……っ!


「こ……こっちには聖剣がっ」

タケルがいっちょまえに聖剣を抜き構える。

しかし……。


「だから……?」

ファウダーが突如感情を消して真顔になる。

ファウダーが持っていた聖剣は既に粉々に砕けている。そして新たに手にした闇色の刀身は闇の触手を纏う神の色だから。


「弱い……っ!」

ファウダーがタケルの聖剣を容赦なく砕く。


それは聖剣だけひっさげただけ。ジョブの名前をすげ替えただけの怠惰の塊。本物の修羅と憎悪に身を沈めたファウダーにかなうはずもない。


「弱い弱いっ!」

「がはぁっ」

そして闇の刀身に神気を纏い、なぎ払う。端から見るとクズなのに強敵な悪党だ。


タケルが足元に広がった探湯沼(くがえ)に呑み込まれていく……。


「みねうちか、らしくない」

あんなに渋っていたやつが。


「ハァ……ハァ……っ。より苦しむさまを見る方が……堪らなく興奮するだろう……?」

ファウダーがこちらを振り向き、凄惨な笑みを還してくる。


――――やっぱ、コイツはクズな悪党だ。



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