【31】正義の目
――――そんなわけでだ。まず訪れたのがここ、魔女協会本部!今日はキナとソウ、ファウダーも連れてきた。
俺たちを出迎えたのはフローナとリックである。
「つかここってお前らの魔神神殿なんだが?」
邪神の主神殿を中心に設置されたそれぞれの魔神神殿のひとつ。
「魔神神殿は立地以外はアレンジ自由がコンセプトですわ」
「そらぁそうだけどな、ローナ」
因みにこのふたりは付かず離れず。神殿ふたつ分の大きさだが繋がっており行き来も容易らしい。
「片方が姉弟のプライベートホーム、片方を魔女協会にしておりますわ」
「そのようだな」
ここを行き交うものたちも魔女の装いをしている。一方で邪神のエンブレムを身に付けながらも女神のお祈りのアクセサリーを着けたものが混在しているのが興味深い。
「ここでは女神信仰も邪神信仰も自由か」
「女神信仰はタツキさまの姉君を崇めているだけですわ」
「まーな。でも信仰する神が違うと時に揉めるもんだが」
「我々はそれよりも『魔女』として結託しております。そしてこの邪神のエンブレムは我々魔女が何よりも大切にする『信念』ですわ。その傍ら女神さまとタツキさまの心暖まるエピソードを愛読しているだけですの」
「え……何それ初耳」
俺と女神のエピソード?心暖まるって何かあったろうか。アイツよくうちに茶菓子摘まみに来るけども。
「それ知りたい!」
キナが目を輝かせる。
「では今度主神殿にお持ちしますわね」
「うん、フローナ」
何かいつの間にか仲良くなってない?女子たちがはしゃぐ中、しれっと腕に抱き付いてきたリックを見やる。
「タツキさま」
「どうした?リック」
「久々にお会いできたのにこうしてスキンシップが出来なかったので」
「お前は相変わらず人懐こいな」
猫か犬みたいに昔から付いてくる。
「リックさんって甘えん坊?意外」
ソウが驚いている。
「だが結構な猛獣だ」
お前ほどじゃねえよ、ファウダー。
「さて、早速だがここに来たのは情報収集もあるんだが?」
「そうでした。早速あれを」
リックが途端にキリッとすれば補佐と見られる魔女がリストを持ってくる。へぇ、珍しい。リックと同じ男の魔女の上にどこか東洋風の顔立ちだ。
しかし髪は淡い灰色で瞳は青い。
「リック、お前の眷属か」
「ええ、イチヤと言います」
「召喚者か」
「その通りです。素質があったので魔女に迎えました」
「ふぅん?」
これも何かの縁かねえ。
「ま、今はその書類か」
「ええ、タツキさま。これが拐われたとおぼしき魔女のリストです。その他にも魔女と見られる女性が誘拐されたと言う話も出ている。あの国は魔女とする娘がいればなりふり構わなくなっているようです」
「まさに魔窟と化しているか。罪を捏造するなら何が正義かも分からなくなる」
「ですが我々の正義はタツキさまです」
「裁神を見失わないものにとってはな」
このエンブレムの目は悪を見落とさない正義の目だから。
「ええ。だからこそ止めねばなるまい。魔女は裁神の目を見失うことのないからこそ魔女なんです」
その首から下げたエンブレムは魔女の証と混ざりあっている。女神の信徒の魔女もこの証を首から下げるのはそう言うことだ。
この目を失った時、スィーディーネのように除名されるのだ。
「早速行くか」
「ええ、あちらにも協力者がおりますので座標はお任せを」
魔女たちも黙って見ているわけではない。そんなことは胸元のエンブレムが許さないのだ。この世界の魔女とは単なる魔法集団じゃない。魔法や魔法薬の他にも失われた呪術の解呪の継承も担う世界で唯一の集団だからこそ裁神の目を何よりも重視する。
「では早速探湯沼で乗り込んでやらぁっ!」
『おーっ!!!』




