【29】【番外編】女の子同士
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ここは邪神の主神殿の一郭。心地よい日和に穏やかな時間が流れる花の園。
「たまにはこう言うのもいいわねぇ」
「ええ、フローナ。これも誘ってくれたキナのお陰です」
「私の方こそ、ヴォレルとフローナが来てくれて嬉しい」
「ふふっ。では早速お菓子を摘まみながら語らいましょうか」
「ええ」
「このお菓子、女の子同士でお茶会するって言ったらタツが街で調達してくれたんだ。女性に人気の菓子屋の焼き菓子なんだって」
「まあ、タツキさまが!」
「身に余る光栄です。それを私たちだけで……ふふっ。シュランガルたちにちょっと悪いですね」
「うーん……それじゃぁお土産にリックにひとつ持っていってあげようかしら」
「リックなら喜びそうですね。シュランガルは……毒物劇物が大好物なので無駄にしそうな気が」
「でもタツもおやつをつまむことはあるよ」
「それを聞けば味わって食べるかしら」
「ふふっ。試してみる価値ありね」
フローナがくすりと微笑む。そして噂をすればなんとやら。乙女たちのお茶会が催されるバルコニーに男性陣がやって来た。
「姉さん?お茶してんの?」
「最近はうちの姉さんもはまってるけど」
リックの言葉にシュランガルが苦笑する。
「女子会ってやつ?」
「それな」
キナとソウは相変わらずの息ぴったりで周囲から和やかな微笑みが漏れる。
「女の子同士でお茶会をしていたのよ、リック」
「たまにはいいでしょう?シュランガル」
『女の子?』
その時シュランガルとリックの言葉が見事にハモった。
「あら、どういう意味かしら。リック」
「ビクッ」
「そうですよ、シュランガル。せっかく弟たちにもタツキさまが買ってきてくれた焼き菓子をお裾分けしようと話していましたのに」
「ええっ、タツキさまが自ら!?」
「ふんっ、もうあげないわ」
「ええ~~、姉さん~~」
焼き菓子をまたひとつ摘まんで口に頬張るフローナにリックが泣き付く。
因みにソウは妹から焼き菓子で餌付けされながら、姉に項垂れる弟連中を興味深そうに見ていた。
「バカッ!お前ら俺の眷属神のくせに姉への対処が未熟だぞ!」
その時、菓子折袋を持ったタツキが現れる。さらにその後ろから目映い金髪の女神が現れたことに周囲の目線が集中する。
「この子がキナの女子会用に菓子を購入したと聞いて私も混ざろうと思って」
「女神さまも!?嬉しい!」
ちゃっかりソウに焼き菓子をあーんしていたキナが顔を輝かせ、女神がふわりと笑む。
「もちろんよ。今度はいつでも呼んでくれていいわ」
「うん。でもどうすればいいの?」
「コレに言えばいいのよ」
女神がタツキをコレ扱いするがタツキは何も言わずヴォレルたちに菓子折り袋を手渡す。
「さすがはタツ。プロじゃん」
ソウが焼き菓子をもぐもぐしながら告げる。
「ふ……っ。だてに長年弟はしてねぇよ」
むしろ神代の頃からなのでこの世の誰よりも姉扱いに長けていると言えよう。
「あと、お前らにも」
タツキがリックとシュランガルにも渡せば2人は泣いて喜んでいた。
「全く男子って」
「そうですそうです」
フローナとヴォレルが意味深に頷く。
「そこも面白いよ」
そんなふたりにキナがにこりと微笑む。
「あら、キナは大物になるわよ」
女子たちがきゃっきゃと語らうのを弟たちは静かに見守る。
「いいか?これが作法だ」
『はい』
リックとシュランガルが菓子袋を抱き締めながら項垂れていた。
「あ、それと……。ソウにはほら。たくさんいるだろ?」
「わーい!タツ大好き!」
ソウは紙袋いっぱいの焼き菓子に腹の虫を鳴かせる。
「ぐふ……っ」
姉のお使いついでに推し双子に貢げて邪神は今日も上機嫌なのであった。




