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【23】魔神第十席



ダンジョン都市は冒険者が大多数とは言え無法地帯では決してない。都市と言う形の国家が運営している以上は、ある程度の治安は維持されている。その治安を脅かすものと言えば……外から紛れ込んだり、まれにダンジョンが吐き出したりして出てくる魔物……あるいは。


「ありゃぁ、盗賊パーティーの一団か」

犯罪を行う一部の冒険者パーティー。それは盗賊パーティーやらマーダーパーティーやら言われ、ギルドを通じて手配されたり、追い出されたりする。

……全部が全部そうと言うわけではないようだが。


「しかし、ギルドに引き渡さなくて良かったのか?ヴァン」

確か、ダンジョン都市で犯罪を働いたらギルドに引き渡すのではなかったか。

それとも、俺がこの世界を留守にしているうちに変わったのか……?


「そう思うならお前さんはオーテオンを止めたらどうだ」

ふむ……。


「……そういやそうだな」


「そこ忘れるなよ」

ヴァンがカッカと嗤う。


そして残党やアンデッドの成れの果てをオーテオンとファウダーに片付けさせていた時だった。

また新たな客が来たのか……?


「これはどういうこと!?わたくしの手下に何をしている!」

現れたのは……藍色の見事なロングヘアーに青い瞳、色白の肌のうら若い女率いる追加の陣営である。しかしまぁ……格好は盗賊と言うよりも宝飾品ジャラジャラでお高い服を身に付け、顔だけはいいメンツだな……?なんだありゃ。


「お前はリオン!お前の仕業か!?」


「ひっ」

リオンが脅える。


「お前こんなことをしておいて、ただで済むと思ってんのかい!?この世界のどこにも居場所のないお前にせっかく食わせてやってんのに、生意気だね!」

その割には腹空かせて倒れていたんだが……?

それにこの世界のどこにも居場所がない……ねぇ。故意に奪ったものが何なのかも忘れ去られてるとは恐ろしいもんだ。

かつてエーデルシュタイン王国に裏切られたファウダーが伝説の勇者となっているのも、魔族が人間の敵と見なされるのも、かつての水龍国の民が言われのない濡れ衣をかぶり、都合のいい(道具)とされるのもだ。

――――一方で。


「あの顔には覚えがある」

と、ファウダーが片付けを終えてこちらに来る。オーテオンはしれっと帰っていったが……。ん?そうなの?お前。


「アクアメイデン・スィーディーネ」

「あ?誰?」

アクアメイデンって……女神が与えたジョブか?

ほんと誰。

お前がまだただの人間だった頃の話か……?いや、コイツは生来、前世から勇者と言うジョブを与えられてからずっと勇者で、ただの人間と見なすには驚異過ぎたが……。

そしてあちらさんも気が付いたらしい。


「貴様……勇者のファウダー!?何故お前があの時の姿のままでここにいる!」

「それはお前もだろう」

ファウダーはな。ファウダーは分かる。俺の眷属になった時から身体の成長が止まっているのだ。しかし……。


「この女……192歳……?」

女神のライブラリーにはギフトを192年前に授けたとある。キナがいるから何とかアクセスできた。


しかしステータス上は……26歳。何歳サバ読んでんだよ。


「お前……っ、何でわたくしの年齢をおぉぉっ!」

「それ、自白ととっていいか?」

「その……それは」

スィーディーネがしどろもどろになる。


「……ところでファウダーはどういう知り合いだ?」

「数十年前に旅をしている時に逆ナンしてきた不死身の魔女だな。人間だったころは知らなかったが、眷属になってから昔の記憶も取り戻した」

「昔……前世の初代勇者だった頃の話か」

つーかまともだった頃のファウダーをナンパしたとはいえ……ファウダーをナンパするとはたいした魔女である。


「そして異様だと分かったから探しだして殴っておいた。あの時本来の水分に戻したはずだが……」

本来の水分……?スキルの水の技巧を悪用して美を保っていたってところか。


「いつからステータスを改変していたんだか」

「あの頃は実年齢で活動していたはずだな」


「実年齢って何よ!私は永遠の26歳よ!」

つまりステータスを弄ったのは最近……あの大聖女と偽勇者のステータス改変の一件にも関わっていそうだな……?


「そしてわたくしの秘密をばらした以上は……水龍の罰を食らいなさい!」

あ゛……?水龍?


「スィーディーネさまは……その、水龍さまの加護を受けていて……だから罪深い俺たちを許さない」

リオンたちが苛まれている水龍への自責の念を利用して水龍の名を騙っているのか。


「勇者だろうが何だって構わないわ!今の私には水龍の加護がある!」

「水龍自体は神ではないから守護することはあっても加護を与えることはないぞ」

魔神なら俺と女神よりは範囲が狭まるが与えられる。しかしコイツからはヴァンの加護など感じないし、与えるはずもないが。


「なら見させてもらおうか。その水龍の加護とやら」

「……ん?ファウダーがやるのか?」

「俺も立候補しようか?」

ヴァンも勝手に名前を出されてイラついているようであるが。


「面白い遊びを思い付いた」

ファウダーは……めちゃくちゃ強烈な恐怖の笑みを浮かべていた。ほんとお前それな。


「あのひと……その、味方?味方なんですよね!?」

後ろではリオンがめちゃくちゃビビっている。


「うん、味方。ただ頭がかなりおかしいだけで」

キナの見解はどこまでも正しいな……?


「食らいなさい!水龍の力を!」

スィーディーネが掌の上にありったけの水を生じさせようとする。


「ヴァン、どうする?俺が対処してもいいが」

「タツキの腕を煩わせるまでもねぇ」

ヴァンがニィと嗤えば次の瞬間……っ。


「ひぃぃ……すぃ……でぃねさま……」

「カワく……」

「皮膚が、カワイ……テ」

スィーディーネの陣営の男たちの皮膚が一瞬にして干からびた。


「きゃあぁぁぁっ!わたくしのイケメンんんんんっ」

そういやスィーディーネが連れてきた連中は見た目だけはいいやつが多かったな?


「な……なんでよおぉぉっ!お前の仲間から水分を吸収するはずがっ」


「え……っ、こわ……っ」

キナがドン引きする。

「それがスィーディーネさまの力で……あれ、どうして俺たちには効いてないんですか……?」

リオンが驚く。


「俺の前で水を操るなんて100年早ぇよ」

ヴァンが嗤う。


「さて、どうする?」

ファウダーがニヤリと笑む。

「そうだなぁ……さすがに寿命まで弄った例は初めてだが、俺に見付かった以上は逃れられまい……?」


「お……おのれ……っ、食らえ……っ!」

スィーディーネは悪あがきを続ける。己の身体に群がる干からびたメンズたちを蹴りとばし、奪った水分で練った水の矢を放つが……。


――――次の瞬間、ファウダーの纏う魔力が神気を帯びるとその頭から2本の黒い魔族角が生える。


「なん……っ、アンタ……人間じゃ……っ」

スィーディーネがカッと目を見開く。


「人間など当の昔にやめている」

ニィとファウダーの口角が上がる。


「俺は邪神の眷属の中でも魔神第十席だからなァ……?」

あのファウダーをただの眷属にしておくのは何となく不穏に感じたもんでな。あとは神代からの縁ゆえの気まぐれ。

因みにあの黒い角は組み立て直した時にお遊びで着けたアンテナなのだが。


「久々にそっちの姿を見たがよく似合ってんじゃねぇか。俺もギフトをやった甲斐がある」

「角が生えたのもびっくりだけどファウダーが受け取ったギフトって何?」

「ソウには話していなかったか?ファウダーにやったギフトはジョブが魔王、そしてスキルは魔力無限、魔力・物理攻撃無効化……そして反射」

そして次の瞬間、スィーディーネに向かいカッと光が放たれる。


一見するとスィーディーネに水が跳ね返っただけだが……。


「ずいぶんなもん上乗せしてんじゃん」

「あの女の業だろう?それが俺の本分だ」

しれっとクール顔に戻ってやがる。

「確かに」

ファウダーの奥底にあるのは前世も今生も【憎悪】である。その神通力をたらふく浴びたもんを反射させられたらあの女に水分を奪われ既に骸と成り果てたメンズの怨みも甚だしい。

その水は猛毒となってスィーディーネに降りかかる。


「チートすぎない?」

ソウが呟く。

「元々女神が与えた無効化スキルにオマケしてやっただけだよ」


「水だけろ過してくれ。細かい調整は面倒くさい」

ファウダーがヴァンを呼ぶ。魔神化するとレベルが666に固定される……いや、今は人間の姿で1000を突破したから6666に固定されていて微調整が難しいだけだが。


「もう飽きたのか?」

ヴァンは困ったような表情を浮かべる。

うーん、確かにな?いつもならそれでも徹底的に遊ぶクズなのだが。


「味付けは済んだからこの後……燻製にするんだっ」

ニタァッとほくそ笑むファウダー。やっぱコイツ、クズだな……?





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