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【22】魔神乱舞



――――さてと。ダンジョン巡りは順調だが。


「ん――――、ここも違ぇ。普通のダンジョン!」

残党を探湯沼(くがえ)で呑み込みつつ、先を行くファウダーとソウを追う。ソウはファウダーの指示で順調に戦闘スキルを上げている。


「ちょっと魔物のレベルが高いがな。アイテムもレア度が高い」

と、ヴァンも魔物たちやアイテムを見ながら呟く。

「そうそう、だからこそ欲を出すもんもいる」


「えっと……それ、無謀な挑戦をしようとするってこと?」

と、キナ。


「それだけならいいんだがな」

むしろそこら辺は冒険者ギルドの教育次第で何とかして欲しい。


「自分たちの都合のいいように改変し出したやからが過去にいた」

「ひょっとして人造ダンジョン?」

「その通りだ。レベルを都合のいいように操作したり、欲しいアイテムを量産できるようにしたり……」

それに苦しむ声などお構い無し。自分たちが何を媒介にしてるかもそれを人間ではないものにして悲鳴ごと搔き消した。

時には蠱毒のように強い魔物を量産し、刑場とした。実験に失敗した奴隷たちの処分場なんかにもしていたな。


「……ないといいんだがな」

呟きは創世神が生成した正真正銘のダンジョンの奥底へとすぅっと溶けていく。



※※※


――――その後俺たちは他3つのダンジョンを踏破した。


「全部ハズレ……と言うか正真正銘のダンジョン!」

むしろ創世神が地上に撒いた(たね)から芽吹いたダンジョンである。

改変された形跡もない。


「まぁソウは89に、キナはレベル75に上がったな」


「ほんと、すごい上がった。魔力量も増えた」

キナが頷く。


「でも……女神さまのは治せないんだよね」

「そんな顔すんな、キナ。女神を苦しめる杭を抜いてやればよくなるし、キナがいてくれるお陰で俺も調子がいい」

創世神の撒いた種の中にいたってのもあるが……女神の加護が行き届かない土地ではある意味キナは俺の目印だ。俺も()()も、見失わずに済む。


「それなら良かった。ソウもレベル上がって、スキルレベルも上がったんじゃない?」

「うん、何だか魔力が(みなぎ)ってる気がする」

元々スキルのひとつは魔力循環で、身体の中を魔力が常に巡るようにできているはずだが。その備蓄枠が更に増えたのか。


「そんじゃ、あとひとつだが……それが例の人造ダンジョンの可能性もある」

むしろその前にレベル上げできてラッキーだったか……?


「そうだね……」

キナが暗い表情を浮かべる。ソウもだ。ま……無理もない。


「大丈夫だ。キナ、ソウ」

ヴァンが笑う。こんな時にも底抜けに明るいわぁー。


「今まで破壊してきた人造コアは全部解放してきたからな」


「全部?」

キナが驚いたように顔を上げる。


「そ、全部だ」

これからもそうかは知らんがコアになったものたちはみな……望んだからな。


「だから安心して着いて来な」

キナとソウの頭を撫でてやれば、シンクロしたようにこくんと頷く。


「……やっぱ今から帰って猫可愛がりしたい」

「こらっ」

……キナに怒られた。


※※※


ズキリ……。

神代の大罪の匂いがする。


それは最後のダンジョンに向かっていた時のことである。


「あの、大丈夫?」

道の途中に誰かが倒れているのをソウが発見し、ファウダーも側に跪く。


「回復しようか?」

キナがとたとたと駆け寄っていく。特に危険はないようだが……。


突如その場に空腹の音が響き渡る。


『え……?』

ソウもキナも目をぱちくりとさせる。


「水龍の民か」

その髪の青さと褐色の肌にヴァンが眼差しに哀愁を宿しつつも駆け寄る。ま、そりゃそうなるな。まだ……生き残りがいたのか。しかしその首に刻んだもんはいけすかねぇな。


「キナ、生命力を上げてやれ」

「分かった」

キナが倒れていた青年の手を握ってやればやがて淡い光が彼を包み込み、光が収まるのと同時に青年が鮮やかな水色の目を開く。まさかとは思ったが……目もかよ。


「……っ」

そしてヴァンの顔を見て固まった。本人も自分が何であるかを悟っているか。

ヴァンの頭には魔族角があるとはいえ……あの見た目は水龍の民そのものである。


「気がついたのか」

「……」

青年がこくんと頷く。


「まさかこんなところで同胞を見付けるとはな」


「ヴァンの……同胞?」

キナはふたりを交互に見て、そして納得したらしい。


「親戚?」


「いや……親戚だなんて畏れ多い。俺は魔族だし……ただの平民だ」

人間だった時はな……?でもお前、水龍混ざってんじゃん。本来は水龍人みなの守護龍だかんな?

まぁ今は水龍はヴァンの一部になってしまったが。


「でも……その瞳」

「偶然だ」

必然の間違いだろうに。


「俺が魔族で怖いならファウダーたちだけにするが」

「……いえ」

それは賢明だ。ファウダーのような頭おかしい勇者を信用したら大変なことになる。何せ俺があいつにやったギフトはとんでもねぇ代物だ。あの頃は面白いかもと思い気まぐれを発動させただけで。


「お前、名前は?」

「……リオン、です」


「俺はヴァンだ」

そしてヴァンが俺たちを紹介すると、ソウがポケットからごそごそと何かを取り出した。


あれは携帯用に持たせておいたドライフルーツか?


「ほら、これ食べて。お腹減ってるんでしょ?」


「ダメだ……、そんな……っ」


「空腹が辛いのは俺もよく知ってるもん」

ま、あんな細いくせにどこに入るんだってくらい大食いだかんな。

地球にいた頃も夜中にお腹減ったと俺のところに来たことが何度あったか。


「あのひとたちに見付かったら、何をされるか……っ」

あのひとたち……?


「いーんだよ、そんなのどうでも。俺たちは負けねぇよ」

ソウからのせっかくの施しを無駄にするなぁ――――っ!と、叫びたいところだが。


ヴァンなんて魔神だし、ファウダーもレベル1000、俺はレベル限界9999。飽くまでもそこまでしか量れないだけで、神の力はそれ以上だ。

キナもソウも強くなったしなぁ……?


――――だから。


「ファウダー、あれを片付けられるか?」

「片付けられぬはずもない」

ファウダーがさも当たり前とばかりに頷く。


そして堰を切ったように雪崩れ込んできた、いかにも柄の悪そうな連中。


「ひ……っ、来た!?」

ふぅん?恐れていたのはやはりコイツらか。


「怪我したくなけりゃ大人しくしてな」

むしろ楽しみだすとブレーキが効かねぇから、ファウダー(アイツ)


「この程度か……っ!?面白くない!」

ならず者たちを容赦なく剣でなぎ払いながらファウダーが嗤う。ここまではまぁ、いい。本番はここからだ。


「骨が無さすぎる!アンデッドにして文字通り骨が砕けちるまで遊んでやるのはどうだァ……っ!?ギャハハハハハハッ!!」

ほら、クズだろ?さすがのならず者たちもファウダーは危険なやからだと本能で感じ取ったのか後退しようとするが。


その逃げ道を塞いだのは湧き出た大量の……ゾンビ、スケルトン、ヴァンパイアその他多数アンデッド。


「アハハハハッ!!それは楽しそうではないか!貴様にしては良い余興だナァ……?ファウダ――――っ!!!」

余計なもんまで湧いて出たかぁ――――。


「タツ、あのひと確か……シュランガルより弱い魔神」

「ソウや、シュランガルが本気出せばオーテオンなんざ尻尾の先っぽで遊んでペッするが、その表現はやめてやれ」

まぁ当のほんにん……魔神第三席オーテオンはファウダーと盛り上がってアンデッドを使役し狩りまくっているが。


「あの……アレ……っ」

あー……リオンが完全に脅えてんなぁ。驚異の混乱耐性恐怖耐性順応性持ちのソウや精神が鋼鉄のキナは俺のクガタチ見ても動じねぇけど普通は恐怖するもんか。魔神が暴れてりゃぁな?


「大丈夫、だぁいじょうぶ~。受け流しとけばいいから~~。……な?」

とリオンの肩を叩き、明るく笑うヴァン。それでうん、と頷くのはお前の養子(むすこ)とソウくらいだよ。





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