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【21】ダンジョンへ



――――それから暫くしてファウダーとヴァンが戻って来たところで晩飯の時間となった。


「ダンジョン都市の食事なら……魔物の肉とかもあるのかな……?」

ソウの率直な疑問。テーブルの上には肉料理も並んでいる。


「普通に食べてきただろ?獣の肉もあるが魔物の肉もある」

「マジ?どれ?」

「これと……それと……」

ソウに教えてやれば早速食べ比べを始める。

魔族は魔物の遺伝子も遠い祖先に持つが人間と同じようにこの世界の【住民】の括りに入った魔族は魔物も獣も食らう。


共食いではと言う心配もあるだろうが、魔族は自分たちを魔物と同じとは思わない。そして弱肉強食はこの世界の全ての生物に該当するってことだ。


「そんなにたくさん魔物肉が……」

一方でキナの手が止まっている。やっぱりキナもかよわき女子だったか?


「こんなに美味しいんだ……っ」

違った。やっぱりキナは異世界の魔物肉も楽しむ逞しいグルメ女子だった。


「昔は不味いものもあったが……」

「余計なことは言うな、ファウダー」

こんなにうまい料理が並んでんのに……!ここの眷属たちが俺たちのために気合いいれて調理してくれたんだから。


「いいんじゃねーの、冒険者たちは時には食うに困った時は今もその肉は食べる」

とヴァン。それもそうだ。冒険するにしても飯がなきゃぁやっていけないだろ……?まぁ、キナたちに不味い肉は絶対食わせねぇがな!?


「あー……それから女神の眷属神たちから情報をもらってきたぞ」

料理に箸を伸ばしつつ、ヴァンが切り出す。


「どうだった?」


「あぁ。戦神、武神たちが言うには急激に女神の加護の力が弱まったみたいでな。それに呼応するようにダンジョン都市に新たなダンジョンが相次いで目覚めた。今まで幼体でくすぶっていたもんもあるようだ」

そうか……それでやつらはヴァンを呼んだんだ。魔帝を引退したヴァンの今の役目はこのダンジョン都市や世界各地のダンジョンを監視することだ。


ほとんどの人造ダンジョンは神代や古代に潰したとは言えまだ目覚めていない人造ダンジョンや、感知できていないもんが眠っていたら困る。

しかも最近は相次いで神代や古代に利用された大罪が乱用されているのだ。


あの頃の技術は失われたはず。ひっそりと受け継がれていたか、あるいはその技術を復元してしまったか。こう言うのは地球でもあったことだ。


「新たなダンジョンの場所ならギルドから仕入れた」

ファウダーも抜け目がないな。よく残念狂気勇者化するが邪神の眷属神としての役目も忘れていない。まあ忘れてたら解体の刑であるがそれすら喜びそうでどうしたものかと悩むが。


「あと気になる噂を聞いたのだが、ヴァン」

「何だ?」


「盗賊パーティーと言うのを聞いた」

「あ――――……、それか」

ヴァンがため息をつく。


「最近また台頭してきたらしい。ダンジョン都市っつー宝の山のような地だ。どうしてもそう言うやからは湧く」

「ああ、命懸けでダンジョンに潜るよりも、探索や踏破で疲れはてた冒険者たちから奪う方がいいと言う考えだな」

ファウダーが頷く。さすがにクズのファウダーでもそれはしない。だって自分でダンジョンに潜った方が速いから。


「都市議会やギルドも手配書を回しているが、いつも黒幕とおぼしきやつは雲隠れ。ほとぼりが冷めたらまた湧く」

「噂では都市議会との癒着だとか、冒険者ギルドに盗品を横流しする変わりに完全壊滅しないと言う噂もあるくらいだ」

ま、そう言うのは昔からある。


「俺の範疇には紛れ込まねぇしそこまで肩入れしてやる義理もねぇ。裁きの神を見つけて復讐を目論むものもいるが願いを叶える対価に覚悟がない」


「ま、みなその身を差し出すことに躊躇するな」

「ああ、ヴァン。その通りだ。時には代わりの贄や魔物を差し出してくる者もいる。叶えるならばその身を差し出す覚悟のあるやつだけだ」

そう……ダンジョンコアのようにな。


※※※


――――翌朝。


「さて、今日から新しく発生したダンジョン巡りだ……!」

因みにキナとソウはファウダーとヴァンに手頃な冒険者装を見繕ってもらっていた。もっと高いいい素材とかあるのに……っ。


「お前の守護があればどっちにしろ最強だろ?」

――――と、ヴァンが俺の考えを見透かしたように言う。く……っ。


「でも新しいのは全部調べるのか」

「そうさな。中にはまともなのもあるだろうがそう言うダンジョンですら人造コアで上書きした例もある」

「そういやそうだった。それに……それなら早く見つけてやらねぇとな」

ヴァンが一瞬寂しそうな目をする。


「思い出してんの?」

神代は人種も出身もバラバラだったが、古代魔族たちが産み出されるとあるひとつの民が徹底的に利用されたのだ。


「そうだなぁ……俺の中にはかつての水龍の民の記憶もあるし感覚もある。だが同時に怒りを覚える水龍もいるからな」

「確かにな」

自らの国の守護龍の力を手にしようとした亡国の民。水龍の怒りを買い、滅びた民。守護龍を犠牲にした上に自滅した民は他の人間たちからの差別と迫害の対象となった。そして狩られコアとなった。どこまでが真実でどこまでが造られたものかも知らずに利用された。そんな悲しみをまた生むわけにはいかないんだ。


「さて、ここが最初のダンジョンだ」

おっと……着いたらしい。ファウダーが手招きをしていた。


「振興ダンジョンだから最初に踏破してやろうってやからもいるんだ。俺なら同族の腹の中かもしれないってのに喜んで入りはしないがな」

「仕方ねぇよ、ヴァン。水龍国の真実が塗り替えられたように、人造ダンジョンコアの真実も人造であることすら消え失せている」

水龍を材料に魔族を造ったのは魔族を造った人間である。そしてその国の民もまた素材となった。そして被害者である彼らに……その大罪を押し付けた。


「そうだったな。明らかにしたところで人間をコアにすれば人間にも造れると見なすやからも出てくる。そしてまれに古代や神代の技術を復元しちまうのさ」

「ああ、それを防ぐためにも調査してやらねぇと」

もしも現代にまだ残っている……もしくは目覚めたのならば。


「おーい、タツ、ヴァンさん!」

おっと、ソウたちが呼んでる。


「じゃぁ行くかね」

「だな」

意気揚々と初踏破を狙ってる冒険者諸君には悪ぃが……こちとら合わせてやる義理はないんでね。


探湯沼(くがえ)で全部呑み込みながら行くぞー!もちろんキナとソウには経験値付与効果つけっからっ!」

「俺は?」


「ファウダーは自分で狩れ!」

しれっと混ざろうとすんな!お前は充分すぎるわっ!


「まぁいいだろう。もとよりそちらの方が楽しいが……狩ったやつとアイテムは探湯沼(くがえ)に放り込む」

探湯沼(くがえ)探湯沼(くがえ)で便利なマジックホールにもなるからな。保管は可能である。


「自分の使ってもいいんだぞ?」

色々とチートなこの勇者はクズで狂気の沙汰で暴れまくるが普通のチート勇者のさらに上を行くのだ。


「仕分けが面倒だ」

そうだ、コイツそもそも脳筋勇者でもあったな。


「全体的にすごくチートな気がするんだけど……それっぽいことはしないの?」

とソウ。やはり冒険に憧れるんだろうか。異世界ファンタジーものの漫画や小説も好きだからな。

「トドメくらいは刺してみるか?ファウダー」


「まぁいいだろう。実戦だ」

ソウとファウダーが先を行き、俺とキナ、ヴァンが後方を行くが……。

「でも適宜間引くから」

「ほんと過保護だな」

「そうなんだよ」

ヴァンの言葉にキナが呆れ顔で答える。いいじゃんっ!邪神の寵愛付き安心ダンジョン攻略コースなんざそうそうないぞ?




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