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【19】ダンジョン都市



――――その日の邪神神殿には思わぬ客が舞い込んだ。

「う~~ん……」

「おい女神、しっかりしろ!」

女神は割りとよく来るものの様子がおかしい。そして女神を連れてきた女性の眷属神が涙を流しながら心配している。


「あぁ……どうしましょう女神さま。もうわたくしたちも創世神さまをお頼りするべきかと迷ったのですが。女神さまはこの頃邪神さまの元へ赴かれていらっしゃったので……っ」

「それで俺の元に来たのか」

ふぅ……と、息を付いたところでキナがこちらにやって来る。女神の加護を受ける聖女なりに引き寄せられたのか。


「タツ、そのひとは……?」

キナが俺の隣にいる女性に目を向ける。


「あぁ、キナ。女神の眷属神で花の女神アリーシャ。元聖女……お前の先輩だよ」

「えっ!?」

「ご挨拶が遅れましたね、当代聖女キナ」

「あ……いえ」


「けどその、タツ。何か女神さまに起こったような気がして……」

「ああ、少し魘されていてな」

ベッドに横たわる女神の姿を見せれば、キナが慌てて寄り添う。


「女神さま!一体どうして……」

「今朝からこのように熱に魘されておいでです」


「聖女の力でなんとかできないの?」

「残念ながら、キナ。神に人間の力はほぼ効きません。ファウダーとて神になる前は邪神さまがお遊戯に付き合うくらいしなくては傷もつけられなかったはずです」

あー……わざと負けてやった時のアレか?あん時は色々と飽いていたんだ、しょうがない。


「ファウダーって……神さまなの?」

あれ、キナには話してなかったか?しかしキナはすぐに女神に視線を戻す。やっぱファウダーだもんな。


「もしかしたらまたどこかで女神の力や信仰を阻害する動きが出ているのかもしれない」


「そんな……!またなのですね。さきのタルティオス司法国やエーデルシュタイン王国のことも聞き及んでおりますが……」

「しかも今回は比べ物にならないくらい苦しんでいる」


「ですが今度は一体……」

「うーん……」


「邪神さま?」

「お前らの神殿の中で変わったことはないか?」

女神の眷属神も魔神と同じように神殿を持っているのだ。


「私たちの……ですか?」

「そう……例えばダンジョン都市」


「ダンジョン都市……今、皆に聞いてみます」

アリーシャがそっと目を閉じる。アリーシャもヴォレルのように伝達業務などができるのだ。だからこそ女神の変調にもすぐに気が付いたのかもしれない。

――――そして、数分。


「戦神、武神より回答が。どうやらダンジョン都市で妙なものを感じると。魔神第四席に確認して欲しいと申しております」

「やっぱりか……っ」


「タツ、ダンジョン都市ってよくある……」

「そうだな。だが想像以上に特殊かもしれん。種族も国籍も関係ない。いくつものダンジョンが集まり共和国のようなものを形成している」

「共和国……?」

「比喩だがな。実際まとめるのは冒険者ギルドと都市議会だ」


「それらには種族も国も関係ない。だからあそこには女神の神殿、邪神の神殿を始め、私たちの眷属神の神殿もあります」

「そしてあそこには珍しいことに司法国にすらなかった裁きの神の神殿まである」

「それってタツの?」

「ああ、規模は小さく知らんやつも多いがな」


「でも……何故アタリをつけられたのですか?」

「最近は古代や神代の大罪に触れるようなもんが頻出してんだ。ダンジョンと聞いてお前たちもピンと来るだろ?」

「……ダンジョンコアですね。惨い記憶です。アレばかりはわたくしにもどうにもできませんでした」


「聖女だからって救える類いのもんじゃねぇ」

「えぇ……そして邪神さまの力が必要でした」


「タツの……?」

「まーな」


「そしてまたコアが大罪に染まっているのなら」

「俺のテリトリーってわけ」


「よく分からないけど……それをどうにかすれば女神さまは助かるってこと?」

「そうなる。だが……今回はキナとソウは……」


「お連れください、邪神さま」

「アリーシャ……?」


「聖女として目を背けてはならないのです。そして何よりも籠の鳥でいては何も救えず、知ることもできません」

アリーシャもかつてそうだったのだろうか。

「タツ、私も行くよ。連れていって。ソウもきっと同じ気持ちだから」

アリーシャは籠の鳥では我慢できない行動派の聖女だった。平民であろうが奴隷であろうが、歴代どの聖女よりも人々の目に触れたとされる彼女は崇められた。そしてキナもまたアリーシャと同じ行動派か。


「分かった。キナとソウを連れていく」


「そうなさってください。女神さまはわたくしに任せて。何かあればヴォレルさまやフローナさまを通じて連絡を取ります」

そういやヴォレルとフローナとは眷属神の中でももとは同じく女性の神として仲が良かったな。

「ふたりのうちどちらかはこちらに来られるよう連絡しよう」

「助かりますわ」


「あとはファウダーと……そうだ、ちょうどヴァッサーラーエがこちらに来ているから連れていくか」


「……っ、ふ、ファウダー……」

やっぱりファウダーアレルギーはまだ治ってないか、アリーシャ?聖女と勇者でありながら相性は最悪である。こいつ、ファウダーに何度泣かされてヴォレルやフローナに泣きついていたことか。そもそもファウダーは相手にするなって。


「でも実力は髄一ですから」

アリーシャなりに認めてはいるわけね。


「ねぇ、タツ。ヴァ、サー……ラーエ……って……」

「魔神第四席。なに、この間久々に魔帝代理してもらったから今帝都にいるんだ。早速合流するぞ」

「……サンの……父親?」

最近は仲がいいからな。キナもサングイオスに色々と教えてもらっているようだ。

「まぁ……本当の父子ではないな。養父」

「ヴォレルは……義理の祖母になるんだよね。ヴォレルに聞いた」


「まぁ、あいつはみんなの姉みたいな存在だが……サングイオスにとっちゃぁ先々代魔帝だからばあちゃんってわけだ」


「色々と複雑だけど覚えてきた」

「そうか。そりゃぁ、よく勉強しているな」

サングイオスは単に俺のことをペラペラと話したいだけだが、キナはキナで俺のことを知りたいって、めっちゃ真剣に聞いてるんだよな。

ヴォレルにも教わってるみたいだし……あぁ俺のキナがかっわえぇっ。


「お、そうこうしていれば。第四席……ん、こっちに来る。ファウダーがソウを連れてくるから早速……」

行こうと思えば、俺の祭服を女神がピッと引っ張っていた。


「……女神?」

「うぅ……苦しい」

「なら大人しく寝てろって」

「ちがう……大事な、こと」

「何だ!?」

何か重要なことでも……。

「……行く前に…………キナちゃん、吸わせて」

「……」

本気で言ってんのか……?このエロ女神。


「邪神さま、ここは……っ」

お前も本気にしてんのか、アリーシャ。


「タツ、女神さまのためだからやらせて!」

キナの純粋さよおおぉぉっ!しかし女神の身に想像以上の何かが降りかかっているようだし。


「いいか、10秒だけだぞ!?それ以外は認めぇんっ!!」

「す――――――――っ、すぅ――――――――――っ!!」

女神は10秒たっぷりキナを吸っていた。ほんとキナの手の甲引き寄せて鼻に擦り当てていた。あそこ、あとで消毒しておこう。だが女神の頬の赤みは引いたようである。


「……マジなのか」

「……悪い?」

大真面目な顔で女神が俺を見つめてきた。



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