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名札警察チェイスチェイス-名札無き疾走-  作者: あきら810%
第一章 名札、嘲笑、そして酩酊
5/12

#5 歪曲、又は異変

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 教室の空気が、妙に張りつめていた。その原因が何なのかは、誰の目にも明らかだった。


 仇岡。


 いつものように席に座ってはいる。だが、その姿勢が少しおかしい。背筋が真っすぐすぎるのだ。板のように。そして、顔。無表情、と言うよりも、「表情の作り方」を忘れたような顔をしていた。

 直木は授業中、ちらりと横目で見た。仇岡はノートを開いている。だが、ページの端に鉛筆の先を当てたまま、微動だにしない。黒板のチョークの音が鳴るたび、仇岡の指がわずかに反応する。まるでその音が脳のどこかを直接叩いているかのように。

 「……おい、仇岡」

 休み時間、直木は思わず声をかけた。

 反応がない。仇岡は、ゆっくりと視線だけをこちらに向けた。目の焦点が合っていない。黒目が、すこし揺れている。


 「お前、昨日の……あれ、覚えてるか?」

 言ってから、直木は後悔した。"昨日"。あの一件を、迂闊に口に出すべきではなかった。

 次の瞬間、仇岡は立ち上がった。椅子がガタン、と音を立て、クラス中の視線が集まる。仇岡の手が机の端を掴み、白くなるほど力がこもっていた。その目が、真っ直ぐ直木を射抜いている。

 「……あのことは、()()()

 声はかすれていた。狂ったような響きがあった。


 「いや、別に詮索はしないけどな……」

 言いかけた直木の言葉を遮るように、仇岡の手がピクリと震える。

 そして、次の瞬間。教室の空気が破裂した。


 バンッッ!!


 仇岡が机を叩いたのだ。チョークの粉が宙を舞い、誰かの悲鳴が上がった。


 「……なんで、言うんだよ……!!」

 その声は、怒りではなかった。恐怖。いや、“何かに怯える者”のそれだった。直木は慌てて駆け寄る。「仇岡、落ち着け!!」

 だが、仇岡は一瞬で静まった。何事もなかったかのように席へ戻り、再びノートを開く。

 その横顔に、もう感情の影はなかった。

 直木は、その瞬間、気づいてしまった。

 仇岡の首筋。うっすらと、そこに何か、黒い痣のような模様が浮かんでいることに。

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