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第5話 後悔の先

一月ぶりに会った同級生未来を不意に拒絶してしまい、後悔する目黒。だが後悔の先に明るい未来が待っていた。

自由なんて、この社会にはない。家だけが、僕の自由だ。なんで縛られなければならないんだろう?どうして勉強を?なぜ仕事を?

ニュースでよくやる「仕事が大変なんです」なら辞めればいい。なのに辞めないのはなぜ?家の外なんか人と傷つけ合うことばっかりだ。

だから、僕は外が嫌いだ。


夕刻———

扉を閉めた。

先が見通せない暗い廊下が見え、玄関ドアに背中を預け、そのまま崩れ落ちるように座り込んだ。

(やってしまった…)

もうダメだ。さっきまで気持ちよく歌っていたのに、長く待っていたのに突然帰れと言ってしまったんだ。未来との関係もこれでおしまいだ。

「うっ…うっ…」

背中のドアが冷たい。自然と目から涙があふれる。あぁ、悲しいんだな。胸の奥がきゅっと締め付ける。つらい、悲しい。

玄関の床を叩いた。掃除をしてないせいか、細かい砂利が右手につく。

(はぁ、こんなんだから、僕はダメなんだ)

大好きな人はこのドアの向こうにいる。いや、もういないかもしれない。いきなり「帰って」なんて言葉はきついはずだ。

「なのに…」

ぽつりぽつりと呟いていく。感情を抑えられず、声になる。

「好きなのに、どうして、ぼくは…!」

もうどうでもいい。外で音がしたが僕は、玄関をあとにした。さっきまで足元を気にして歩いていたが、床に散らかるゴミを気にせず、おぼつかない足取りで部屋へ戻る。


1人で使うには大きいテーブルとベッドの間に座る。テーブルにはゲーム機のコントローラーやソフトが置いてあるが、どけて塞ぎ込む。テーブル端にった空の菓子袋がずれ落ち、床のゴミ達に重なる。

「今日はやる気が起きない…」

好きなゲームもできやしない。なんなんだろうか、これは失恋か?いや、今までに告白したことなどない。だからこれは失恋じゃない。


ピンポーン


インターホンが鳴る。

「未来!?…いや…」

スマホを見ると、18:00の表示。

これはいつものピザ配達だ。さっきの出来事から1時間も経っている。流石にいない。

いつも通り、返事もせずドアを開ける。

玄関は蛍光灯に照らされ、黒基調のユニフォームに赤い帽子の男性が、玄関外で黒い袋から白いピザ箱を取り出していた。

「お待たせしました!マルゲリータSサイズのチーズトッピングになります!」

いつものメニュー名を言われる。そろそろ「いつものピザ!お届けに参りました!」でいいんだけど。

何食わぬ顔で、ぼくはピザ箱を受け取り、部屋に戻ろうとする。

「あのぉ…」ピザ屋の男性が声をかける。

「代金がまだなのですがー」

(あ…まずい…)

1ヶ月分の食事代が底をついているのを忘れていた。前日に予約注文をしていたものだから、キャンセルをしていなかった。

「ちょ、ちょっと待ってください」

慌てふためきドアを閉め、下駄箱上にある財布のポケットをくまなく探るが、500円しかなく、100円足りない。明日にしてもらおうか。左手に500円を握り、ドアを開ける。

「あの…100円足りなくて」

左手の500円を見せつけるように左手を広げ、玄関から身を乗り出し、左を見る。

すると、意外な人物が待っていた。

ピザ屋の男性が腰の小銭入れをジャラジャラ、チェックしている後ろで、未来が立っているではないか。え?

未来は当然、こちらに気づき、口を閉じているものの少しニンマリとした顔で、軽く手をあげる。

(なんで、いるの?…)

さっきの出来事から1時間は経っている。あれからずっと待っていた?いやいやそんなことは…

未来はこちらに近づきポケットから100円を取り出し、眼帯の前へ持つ。

「ちょどひゃっくえっん!きれいでしょ?」

眼帯の前で輝く100円。まるで新品のようにマンションの蛍光灯で輝く。

その100円を僕の左手に手渡してきた。

「さっきはごめんね。突然押しかけちゃって」

手渡された100円は500円と重なり合うが音がしなかった。ピンク色の小さいメモ用紙が見え、未来は一言。

「行く時は、リネで連絡するから。またね」

そう言い残し、未来は廊下をスキップして行った。

(またね…好きな人の電話番号)

背中越しでもわかる、ウキウキした様子。緑髪のツインテールは、うねるように跳ね、スカートも上下に揺れる。姿が見えなくなるまで、僕はその後ろ姿を見ていた。


ピザ屋の男性に耳元で「600円頂きますよ!」と勝手に取られるまで、気がつかないぐらい見とれてしまっていた。


部屋へ戻る。

テーブルの上を綺麗にする。

先ほどのピザ箱とメモ用紙を隣り合うように置いた。好きなものが2つ、並ぶ。

可愛らしい文字で電話番号だけが書かれたメモ用紙をじっと見る。スマホを取り出し、SNSアプリ「リネ」を開く。

友達リストには親や数名の友達のアイコンが並ぶ。

(ここに…未来の…)

なんてことはない、ただ番号を入力するだけだ。緊張することはない。ないんだけど、番号を押す指が震える。

登録し終えた頃には、息を止めてたせいか一呼吸し、ため息を吐いていた。


(いい事、あったな)


家の外は嫌いだ。だけど、こういうことがあるから、外が好きなのかもしれない。ぼくは冷め切ったピザを口に頬張る。今日のピザはいつもより味がして、美味しかった。

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