第8話 幽霊さんと人形さんは独り占めしたい
バイトが終わって帰宅し
夜ご飯を食べていると
ひんやりとした空気が流れ込む
このゾクッとする感覚、幽霊さんが来たかな?
と呑気に構えていると
首筋を氷でなぞられたような感覚がして
次の瞬間、包丁の冷たい刃が喉元に
驚きのあまり、飲み込もうとしてた食べ物でむせそうになる
【今からする問いに、はいかいいえで答えろ】
な、なに!?私何かした!?
【問い。外の人間を口説いたというのは真実か?】
口説いた!?してないしてない!!!
「真実じゃぞ。見境もなく美人!可愛い!とか言っておった」
仁ちゃんが呆れた様子で答えてしまい
【そうか、ならば死ね】と包丁を近づけようとする
ひぃぃぃ!?誤解ですぅ〜!
言ったのは本当だけど…誤解なんですぅ〜!
【問2……今日は私の好きにする。お前に拒否権はない。いいな?】
ゆ、幽霊さんの好きに……?
「おい幽霊、こやつ喜んでおるぞ」
【……やはりやめておくか】
『ぜひお願いします!!!』
2人からドン引きした目で見られ
ようやく幽霊さんは包丁をしまってくれた
『可愛いとか言ったのは事実ですけど、口説いたつもりないんです!本当です!』
【……お前が初対面の人間にとりあえず可愛いという爆弾魔なのは理解した。おかげで勘違いする所だったぞ】
勘違い?
『まさか!全然!幽霊さんのことは大好きですよ!?』
【ハイハイ、ソウデスネー】
『美人で優しくて、結婚したいくらいなんです!』
【なっ!?お、お前!いい加減にしろ!わ、私は死んでいるんだぞ!?】
『かーんけーないですね!死んでも奥さんのこと忘れられずにって人は沢山います!』
【なっ、なっ…!じゃあ私が本格的に恋人として付き合えと言ったら付き合うのか!?】
『え!?願ったり叶ったりですよ!?』
ただでさえ顔が赤かった幽霊さんが
どんどん真っ赤になる
決まった!と私は得意げに
プロポーズをするように片膝をついて手を差し伸べる
あとは幽霊さんが手を握ってくれれば……!
幽霊さんは少しモジモジと何か呟いてたけど
恐る恐る、幽霊さんの手が伸びた
「ちょ、待て貴様ら!わらわをおいていくな!」
『あ、ごめん仁ちゃん』
「ごめんじゃないわ!というか柊奈!わらわとそんな変わらん身長の時からずっとわらわと結婚するって言ってたではないか!あれは嘘だったのか!?」
…………そんなこと言った気もする
やっっばい、どうしよう
あ、まって、幽霊さん、また包丁浮かさないで
『分かりました!責任取って、2人とお付き合いします!』
「【はぁ???】」
『私の考えのない言葉で、2人を狂わせたのなら責任取るよ!』
【待て、何故私がお前を好きみたいな話で進んでいる?】
「待て、何故わらわが貴様を好きみたいな話で進んでいる?」
『え、違うの!?』
「【違う!】わ!」
うぇぇーん!どうすればいいの!?
と私は半泣きになってると
2人ともお互いを見つめて、ため息をつく
【……じゃあいい、それで】
え?
「責任取って、わらわとこいつと付き合え。よいな?」
『え、本当にいいの?』
「良いと言っている」
『分かった!2人とも、幸せにするね!!』
まさか、ひとり暮らししてからこんなことになるなんて
こんなの、誰にも言えないなぁ
信頼できる友達がいれば……
あ、1人いるな。
今度相談してみようかなぁ……
[おまけ]
楓花ちゃんとのメッセージ
{こんばんは!}(送ってから5秒で)既読
{明日もバイト一緒だったよね?}既読
〈おつ〉
〈そだよ〉
{あのね、相談したいことがあって。。}既読
〈おー〉
〈貸し8ね〉
{多くない!?!?}既読
〈www〉
〈しゃーねーなー、無料だぞー?〉
{やった!(*´ω`*)}既読
{じゃあまた明日ね!}既読
〈うい〉
〈明日は早く来んでよ〉
〈鍵開けんのてそいから〉
{もう!それくらいは頑張ってよ!}既読
おやすみスタンプを送りました 既読
〈気が向いたらね〉
〈おやすー〉




