第5話 人形さんは柊奈の力になりたい
「……ろ……きろ……」
なにかに呼びかけられてる気がして
重たいまぶたをあける
んー……だれ……?
「はやくおきろー!」
唐突に仁ちゃんのドロップキックが私の顔に炸裂し
おでこがジンジンと痛む
いったぁーー!!何するの!?
「貴様、ここに来てからぐーたらしすぎじゃ!もう9時を回っとるぞ!」
9時……?
確かに、朝の9時だ
……ん????
『仁ちゃん、朝でも活動出来るの?』
「む?心霊に朝も夜も関係ないぞ」
『え、でも幽霊さんは朝いないよ?』
「貴様が寝た後に軽く話したが、あやつは朝が弱くて寝てるだけって言っておったぞ」
そ、そうなんだ
じゃあもしかして、お昼一緒に過ごすこともできるのかな
今度お願いしてみよう……
でも、昼夜問わず仁ちゃんと一緒に過ごせるなんて!
思ってもみなかった!嬉しい!
「うげー!抱きつくなゆーとろーに!早く顔を洗ってこんか!」
なんか新しいお母さんが出来た気分で
顔を洗って朝ごはんの用意を……
ん?なんかいい匂い……
「ほれ、食パンの上にチーズと目玉焼きという簡単なものだが、出来たぞ」
え……料理作ってくれてる……
感動…お母さん……奥さん……!!
「何を考えているのか知らんが、失礼なこと考えてそうなアホ面じゃな」
『ママァ(´;ω;`)』
「誰がママじゃ!」
仁ちゃんが動けるようになって
一気に部屋の雰囲気が明るくなった
ぐーたらしてると怒られちゃうけど
お昼ご飯の時も一緒に手伝いをしてくれた
「貴様の母の料理はいつも見ていたからな!包丁さばきはお手の物じゃ!」
すごい、勉強熱心!
味付けまでちゃんと覚えてくれてて
久しぶりの母の味を噛み締めて感動する
『仁ちゃんしゅきぃ……♡』
「ふふん、わらわの女子力に恐れおののいただろう?」
【イチャついてるところ悪いが、人形、お前この子のこと好きすぎないか?】
ヒヤッとした空気が流れて
突然後ろから声がして
私も仁ちゃんもビクッ!と身体を震わせる
お昼の幽霊さん!本当に出てきた!
「す、好きではないと言っておるじゃろ!」
【……本当に素直じゃない奴だ。一気に騒がしくなって寝れなかったではないか】
『幽霊さんこんにちは!せっかくですし、お昼に起きましょうよ!』
【それは出来ん。まだこの家を心霊スポットとして来ている輩が結構来る。それを追い払うには深夜に起きてかないといけない】
そ、そうなんだ
肝試し感覚でここに来る人、結構いるんだな
幽霊さん、話せば他の人とも仲良くなりそうだけど…
「貴様、その言い方だと、脅かすというより追い払うが目的なんだな」
【普通に住もうとしてるこの子が、私のせいで深夜に起こされるのも不服だろう】
え……私のため……?
『しゅきぃぃぃ♡♡♡』
「おい貴様!わらわよりハートが多いとはどういう事だ!!」
『あー違うの!!2人とも好きだから〜!!』
【そういう事だ、私はまた寝るぞ】
真っ白な顔の幽霊さんの耳が少し赤く見えた気もするけど
すぐに消えてしまって確認することが出来なかった
んー……どうすれば、深夜に肝試し来なくなるのかな
「昼に、ここに住んでいる柊奈が改善するしかなかろう。こればっかりは時間が解決するじゃろうて」
そうだといいけど……
「そんなことよりも、じゃ。貴様、これからどうするつもりじゃ?まさかこのままぐーたらして過ごすつもりか?」
『まさか!アルバイト始めるよ!』
「喋れない貴様ができるとも思えんが……」
『まっっっかせて!』




