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第11話 高津柊奈は泥棒さんを捕まえたい

泥棒さんが本屋に現れて

その事を仁ちゃんと幽霊さんにも話した


「ほーう、それはまた変な泥棒じゃな」


『うん……なんか泥棒してるのも理由がある気がして』


「ふむぅ、財宝目当てならわざわざ返しに来んからな。確かに裏がありそうな話じゃ」


『また会ってみたいけど、どうすればいいかな』


【ならばいい案がある】


『いい案?』


【この家が事故物件で、死んだ人間が財宝を残したという噂を本屋で話せばいい。泥棒なら一目散に現れるだろう】


『そんなことしたらまた変な人達が来ちゃうよ?』


【お前とその友しかいない時に話せばいい、恐らくどこかで盗み聞きするだろう】


たしかに、それだったら泥棒さんが来てくれるかも……

『やってみる!』



次の日、本屋で楓花ちゃんにお願いした

盗んだ品を返す理由が知りたいから

私の家に金庫があるという話を人がいない時に大袈裟に会話したい

というお願いだ


「なんそれ、おもろそーだけど怖くない?襲われたりしたらどーすんの」


『大丈夫!この前相談した恋人達と協力するから!』


「あぁ……恋人ね…………分かった、やってみよっか」


恋人、てワードに少し落ち込んだような表情を見せたけど

すぐに作戦にとりかかった

客があまりいない時に

私が実は家に金庫があるんだーと楓花ちゃんにみせる


楓花は「あーね、昔の金庫があるとか、絶対お金えぐそーよね〜」と

やや大げさに囁く

すると、外からゴソッとなにか物音がして逃げたような足音が少し聞こえた

予想どおりだなと私は息を飲む


その後、家に戻り

暗闇が深まるのを待ち、やがて窓の向こうに

白い影がふわりと浮かんだ

もちろん正体は幽霊さん

深夜専門のはずだけど

今日は特別に少し早めに出てもらうようお願いした

仁ちゃんが合図を送り、幽霊さんは静かに動いた。



泥棒さんが音も立てずに中を覗き込んだのが見えたその瞬間

幽霊さんがふっと現れる。顔はいつもの白装束

髪はボブがふわりと揺れて、目は真っ直ぐ琴音を見つめている。


「ぎゃあああああああ!!!!」


瞬時に転げ飛ぶほどに悲鳴を上げ

裸足のまま走り出した。フードが後ろに翻り

逃げる姿は獣のように俊敏だが

同時にすごく滑稽で、私の頬が緩む。


泥棒が焦って逃げた瞬間、私は素早く出口に飛び出し

一直線に逃げていた泥棒さんを腕で受け止める

彼女は一瞬、顔の真近で私と目が合い、驚きの色が引きつる。


「うわっ、捕まった……」と泥棒さんは今日声は震えている

しかし、すぐに表情を戻して、にやりと笑った


「ま、まさかアンタらに騙されるとはね〜」って言いながら

その声にはどこか誇らしさが滲んでいる


私は手話で「痛くない?」と訊く。

思いっきり腕で掴んでしまったので心配したけど

泥棒さんは首を振って「平気だよ」とやや照れた様子で答える

彼女の手は震えていたが、目は私を臨むように輝いていた


【観念したか泥棒】


「ほぎゃぁぁあ!!?ほ、ほんもののゆーれー!!!」


『幽霊さん、まだ出てきちゃダメでしょ!?』


【今ここで逃げ出すと呪うぞ?】


「逃げません!逃げませんから許してぇ!!!」


ビビり散らかしてる泥棒さんを見てると

なんだか可愛くて笑ってしまう

幽霊さんも、久々にいいリアクションが見れて満足そうだ



しばらくして、幽霊さんは一旦部屋の外に行き

落ち着いた所で会話をしてもらうことができた

フードも脱げて、美人で狐のような口が特徴的だ


「君、騙し討ち上手いね〜泥棒向いてるよ?」


『流石に嬉しくないです……』


「あはは、だろうね!大丈夫〜あたしは正義の泥棒だかんね!」


そういえば、前回も逃げる気ないとか言ってたけど

あれ結局嘘じゃないのかな


「昨日言ってたこと自体はホントだよ、現に今警察にたたき出してもすぐ釈放されるしね」


何が嘘で何がホントなのかは分からなかったけど

『凄いですね!悪役ヒーローみたい!』と伝えると

すごくギョッとした顔をする


「え、この前騙されたのに信じるの?」


『言葉って、真実にしかなりませんから』


私の文章に

泥棒さんは「そっ……か」と何か考えた素振りを見せてから


「ごめん、嘘ついて。あんたにはホントのことしか言わないよ。約束する」


『気にしなくていいですよ。私、高津柊奈って言います、あなたは?』


「……葉山琴音、よろしくね柊奈っち」

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