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最強にして記憶喪失。だが神子様は蛮行を許さない!  作者: 死神丸 鍾兵
第三章 〜救いの旅団〜「キャラバン編」
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第64話:カエデちゃん、カルネリア村にて★

〜前回までのあらすじ〜

 記憶を失った最強の男ロアスは、フィン、レオスと共に、自らの記憶を探す旅に出た。

 彼らはウェイシェムを後にし、キャラバンと共に交易都市ノクティアを目指すが、その道中で盗賊団ブラックペリルの奇襲を受ける。

 ロアスとレオスは、攫われたフィンを救うため、ノクティアの関門街でブラックペリルの跡を追うのだった。

 あたしの名前は――

 カエデ・ツジアラシ!

 カエデちゃんって呼んでね!


 え? 自己紹介は二回目だって?

 じゃあ、遠慮しないで。

 減るもんじゃなし、何回でもしてあげるわよ★

 

 可愛くて強い世にも元気なクノイチ!

 武術は苦手。忍術は好き♪


 今日も元気に旅の空♪

 今、あたしはカルネリア村ってところに来てるの。

 店は思った以上に繁盛していて、可愛らしい小物も並んでいる。見ているだけでなんだか癒される〜。

 孤独な砂漠を抜けて、こういう小さな集落にたどり着くと、やっぱりホッとするよね。

 ……とはいえ、暑すぎて喉はカラカラ、汗も止まらなくて、ちょっと匂ってきそう〜。


「どこ行こっかなー」

 雑貨屋に、香辛料に、飲み物の屋台……

 いろいろあって迷っちゃう。

 興味津々に周囲をキョロキョロ見回して歩いていると、元気な声が耳に飛び込んできた。


「安いよ安いよ! バナナ一本、今日だけ銅貨一枚だよ!」

 声の方を見ると、果物を扱う屋台で、恰幅のいいオジさんが威勢よく呼び込みをしている。


「ねぇねぇオジさん、この村って何が有名なの?」


 オジさんは愛想よく答えた。

「お、嬢ちゃん。ちょいと変わった風貌してるな。

 その刀……他の大陸から来た旅人かい?」


「はは、まぁそんなとこ! 旅武芸者って感じ!

 あたし、可愛いけど結構強いんだから!」


「へぇ、若いのに大したもんだ!

 そんな嬢ちゃんに勧めなのは、カルネリアで有名な《剣鎧横丁》だな。

 ノクティアから鉄を仕入れて鍛え直し、武具にして輸出してるんだ。

 あとは果物も名物だ! バナナなら銅貨一枚、マンゴーは四枚、ライチはちょっと高めで七枚だな!」


「ふーん、剣鎧横丁か。行ってみよっかなー」

 ″ハイカラ″な果物を眺めていたらお腹空いちゃったな〜。どんな味か気になる。

 ここ数日、山菜や雑草ばっかで、まともな食べ物を口にしてないし、ちょっと味見したいかも!


「あ、オジさん。果物なんだけど、やっぱお金って必要? あたし、持ち合わせがないんだけどさ〜――」


 その一言に、オジさんの表情は一変。

 さっきまでの愛想笑いが嘘みたいに、露骨に冷え切った目になる。


「あ? 金がねぇのか。じゃあただの冷やかしだ。時間の無駄だ、ほら行った行った!」

 しっし、と追い払われ、別の客を呼び込む声がすぐ後ろで響いた。


「えー、なんなのその変わりよう〜。

 結局金なの。商売人ってみんなこんななの〜!?」

 ちょっと傷つきながら、カエデは肩を落として横丁へ向かう。



 着いたのは剣鎧横丁――

 ……なんか、この通り、ちょっと変?

 昼間なのに、道端で寝転がってる人が何人かいる。

 屋台の兄ちゃんもさっきまで寝てたのか、頭をかきながら準備してる。


「そういう風習の村?」


 あ、思ったことをつい、大きな声で言葉にしちゃった。

 そんな私の疑問を聞いていた武具屋のオジさんが説明してくれた。


「いやぁ、お嬢ちゃん。ついさっき不思議なことがあってよ。村中の人間がいきなり眠りこけちまったのよ。まあほとんどの人はすぐ起きたから大事にはならなかったけど……一体何だったんだろうな」


 ――なんてオジさんは笑ってるけど……。

 うーん、なんか怪しくない? 


「それで、あの人たちが?」


 あたしの視線の先、なんかカッコいい人たち――銀色に輝く甲冑を纏い、馬を引いている。

 寝転がってる人に声を掛けながら事情を聞いて回っていた。


「ああ、あの方々は聖杯騎士団カリクスオルド

 怪しい盗賊団がこの辺に出没してるって聞いて、治安維持のために、通りすがったみたいだよ。

 ほら、あそこにおられるのが聖銀騎士のボリナーク様だ。お目にかかれるなんて、今日は運が良い」


「ふーん。……凄い人なんだ。

 教えてくれてありがとね、オジさん!」

 町奉行所のお偉いさんってところなのかな。

 どこも大変だな〜。


 ……ま、色々気にはなるけど、考えてもお腹は満たされないし。それは一旦置いといて……

 やっぱ武具屋が並ぶ一角はやっぱりわくわくするね〜。剣に盾、胸当てに籠手。あ、忍具はあんまり見かけないなあ、残念。


 すると、マントを羽織った青髪の青年と、店主が口論しているのを見つけた。


「刀身は薄く、片刃でよく斬れる刀ですよ!」


「いやいや、知ってるよ。サムライブレードの話だろ? そんな刀を作れる鍛冶はそうはいねぇ。アルセディアかノクティアくらいだ」


「ノクティアも品切れで、ここまで来たんです! 無駄足じゃないですか!」


 めんどくさそうな店主と食い下がる旅人風青年。なんか熱いな――喧嘩は止めたほうがいいよね。

「まあまあ、お二方共、落ち着いて。

 なにがあったの?

 喧嘩は良くないですよ〜」


 青年の目が突然、カエデの腰の刀に釘付けになった。

 そして、大きな声を上げた。

「あー、これだ! ″サムライブレード″!」


「うわ〜、ビックリした〜! なになに?」


「貴方、これ、どこで手に入れたんですか!?

 教えてください!」


「あー……あたし、この辺の人間じゃないんだよね〜。

 なんていうか、とても遠いところ。だから、この辺でこういう刀どこに売っているかわかんないの。ごめんね!」


 だが、青年は負けじと食らいつき、真剣な眼差しを向けてくる。

「で、では、それをお譲りいただくことはできないでしょうか!? もちろん、タダでとは言いません!」


 うわ〜。この人すごい熱意だ〜。グイグイくる〜。

 これは父上からもらった代々の刀で、なんだか上等なモンらしいけど、正直あたしはよく知らない。


「いやー、でもぉ、これは売るつもりなくって〜」


「金貨十二枚! どうですか!」


 青年の声が響いた瞬間、武具屋の空気がぴりりと張り詰めた。


「な、なんだと!? 正気か兄ちゃん!」

 店主が思わず身を乗り出す。

「サムライブレードが珍しいのは確かだが、その娘の刀がそこまでの価値かどうかは――」


「いいえ、見ればわかります!」

 青年は食い気味に遮った。

「その鞘の造り……細工の精巧さ。間違いなく業物です! どうか、その刀身を一目、拝見させていただけないでしょうか!」


 ――見せるだけなら、まぁいいか。


「え? あ、はい。どうぞ」

 カエデは軽い調子で刀を差し出した。


「おおっ……!」

 青年は息を呑み、瞳を輝かせる。

「やはり! この反り、この鍛え、刃文の冴え……まさに匠の技! これほどの出来、滅多にお目にかかれるものではない!」


「あー、ははは。そりゃどうも〜」

 カエデは肩をすくめる。

 一応、名刀とは呼ばれてる刀らしいけど……。

 父上からもらったときも、正直よくわかんなかったんだよねー。


「無理を承知でお願いします!」

 青年の声は熱に浮かされたように強くなる。

「金貨十四、いや、十五枚で! お譲りいただけないでしょうか!」


 その瞬間、周囲がざわめきに包まれた。

「すごい! こんな高額取引が目の前で……!」

「おい見ろよ、金貨十五枚だってよ!」

「姉ちゃん、どうするんだ!? そんな大金――」


「え? それってどれくらいの価値なの?」

 カエデが首をかしげると、群衆のざわめきはさらに膨れ上がった。


「金貨十五枚あれば、まともな家が買えるぞ!」

「十年以上は食えるだろ」


 ……父上からもらった大事な刀だけど……。

 うう、食べ物には勝てないな!


「じゃあ……売ります! この刀、売ります!」


 ま、あたしにはもう一振り、忍者刀もあるし、そもそも剣術苦手だったし。

 父上には悪いけど、生きるためには仕方ないよね!

 即決に周囲はどよめき、青年は深々と頭を下げた。


「ありがとうございます。私はトルナディス・リオ。

 兄を探す旅をしている者です」


「えー、奇遇だね!

 あたしもお兄さんを探して旅してるの〜!

 あたし、カエデ・ツジアラシ! よろしくね!」

 金貨の重みを感じて、思わず背伸び。お腹もグゥと鳴った。

「よーし! これでしばらく食べ放題だ〜!」


「この刀は、間違いなく名刀です。必ず大切にしますよ」


「そっか。ならよかった!

 お互い、お兄さん見つかるといいね!

 んじゃ、またどっかで逢ったら声かけてな!

 さらばさらば〜★」


 カエデはぱっと手を振り、羽のように軽い笑みを残した。

 その胸には、ほんの少しだけ、誇らしい気持ちが灯っていた。


「ええ、カエデさん。兄を探す者同士、また機会があれば会いましょう! それでは!」


 ――旅は人と人を結び、新しい物語を紡いでいくんだな、なーんて、あたしらしくもなく詩的なこと、ちょっと思っちゃった。



「よーし! まずは果物だー!」

 金貨を高々と掲げ、あたしはさっきの果物屋に突っ込んでいった。

「オジさーん、金持って来たよ〜。

 さぁ、さっきのやたら黄色い果物、一本くださいな!

 金貨で!」


「金貨だと!?

 そんな高価な金、こんなとこで使うな……!」

 あまりに場違いな硬貨を出され、周囲のざわめきが、一気に悲鳴に変わり騒然となった――。


 ……けれど、それはまた別のお話である。

ここまでお読みいただき、ありがとうございます!

少しでも楽しんでいただけたならいいねやフォロー、コメントをいただけると、とても励みになります。

皆様の応援が次のお話を書く力になりますので、よろしくお願いいたします。

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