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最強にして記憶喪失。だが神子様は蛮行を許さない!  作者: 死神丸 鍾兵
第三章 〜救いの旅団〜「キャラバン編」
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第43話:レオスの全快、フィンの好奇心

〜前回までのあらすじ〜

 記憶を失った最強の男ロアスは、フィン、レオスと共に、記憶の手がかりを求め旅に出る。

 ウェイシェムが死の街と化し、命からがら脱出。

 放浪中、キャラバンのメンバーとして向かい入れられ、苦手だった人と交流をすること学びながらノクティアへと向かう―

 キャラバンはゆっくりと砂漠の道を進んでいた。

 カルネリアの街を離れてから四日目。暑い日差しが容赦なく照りつける中、荷車の車輪が砂を掻き分けて進む。


 道の両脇には乾いた砂とまばらな岩が続き、風が巻き上げた砂埃が時折視界を遮る。隊列の中では、エレカの手厚い治療で完治したレオスの姿があった。


「ずいぶんよくなったようだな、レオス」


 マルバスは軽く肩をすくめ、にやりと笑みを浮かべながら声をかける。

 その瞳には、ほんの少しだけ安心感と期待が混じっていた。


「おかげさまで、もう全快です!」


 レオスは胸を張りながら応え、ウェイシェムでの激闘を思い返す。

 目元が少し和らぎ、唇の端がほんのり上がった。


(あの時の自分の弱さ……今はもう逃げられない。もっと強くなるしかないんだ)


 意識を新たにした決意が彼の動きにも表れていた。


「マルバスさん、アンタ、強いだろ? 俺に稽古つけてくれねぇか?」


 レオスは真っ直ぐにマルバスの目を見据え、拳を軽く握る。

 熱意が込められたその声に、マルバスは一瞬だけ目を細めた。


「見てわからねぇか?」


 マルバスは腕組みを崩さず、少し息を吐く。


「キャラバンの管理に大忙しだ。こう見えて寝る時間も削ってんだぜ」


 肩を竦め、斧を担いだ手を軽く振る。


「それに、俺は必要以上に斧は振らねぇよ」


「……ああ、そうか。悪かったな」


 レオスは少し肩を落とし、苦笑いを浮かべる。


「じゃあ、ちょっと他のやつを探してみるわ」


 二人の間に短い沈黙が流れた後、マルバスは軽く肩を叩き、からかうように笑みを深める。



 朝早くから動き出したフィンは、ネロやアテネと軽く挨拶を交わしていた。

 みんなの起床パターンも少しずつ見えてきて、興味深い日常の一面が顔を覗かせる。


 早寝早起き組のフィン、ネロ、エレカ、アテネは太陽が昇ると共に活動を始める。

 一方、フィンも最近気付いたのだが、ロアスはウェイシェムのような命に関わる状況下でない限り、寝るのも早いが起きるのは遅い。平均10時間〜12時間もの睡眠時間を確保している。

 それに対し、マルバスやダラスは夜遅くまで作業をしているのに、朝は早起き。

 レオスは療養中だったからなのか、遅寝遅起きの不規則な生活だ。


「ロアスさんって、ほんとによく寝ますよね」


 フィンが小声でつぶやく。


「そうね。ああ見えて実は成長期……なんてことあるのかしらね?」


 エレカがからかうように笑うと、フィンがすかさず、

「でも、健康にはいいことですよ。ちゃんと休むのは大事ですし」と庇う。


「ちょっと、様子見てきますね?」とフィンは立ち上がり、エレカに手を振られながらロアスの元へ向かった。


 その頃、ロアスはまだテントの中でぐっすりと眠っていた。


 フィンはそっとテントの入り口から覗き込み、静かに息をのんだ。


「こんなにぐっすり……」


 しばらく眺めた後、フィンの視線はロアスの切れ長の目や高い鼻筋、整った顔立ちに引き寄せられる。


(なぜだか、彼から目が離せない。よく見ると……これが世間で言うイケメンってやつ……かな?)


 頬をそっと撫でてみたい衝動に駆られる。

 次に目が向いたのは、頭から伸びている大きな角だった。


(これ、どんな質感なんだろう……角くらいなら、触ってもいいかな?)


 心臓がドキドキと高鳴るその時、背後から軽快な声が響いた。


「おい、そいつまだ寝てんのかよ?」


 振り返ると、レオスが腕を組み、すぐ後ろに立っていた。


「ひゃっ!? な、なんでそんなところにいるんですか!?」


 びっくりしたフィンは慌てて身を翻し、顔を真っ赤にして怒り気味に言った。


「いや、いたっていいだろ。身体もだいぶ良くなったしな。そろそろ修行をつけてもらおうとお願いしに来たところだ」


「へ、へぇ、そうなんですね……」


 話題が変わりそうでホッとしたのもつかの間、


「でさ、フィン、お前なにロアスの顔ぼーっと見つめてんだよ」


 と、急に視線が刺さる。


 途端に視線が泳ぎ、明らかに戸惑いの表情で早口になるフィン。


「べ、別に! ただ……あの、その……ちょっと覗いただけで! この角は何なんでしょう? どんな材質かなー? って、科学的観点から気になって!」


 レオスは首をかしげ、感心したように言った。


「ふーん。お前、科学に興味あったのか?」


 言葉に詰まりつつもフィンは答える。


「そ、そうなんですよ! 本当はこの角を削って材質を調査してみたい……なんて。そ、そんなことより、そろそろ調理班の手伝いをしないと!」


 フィンはいそいそとテントを出ようとする。


「フィン!」


 レオスはフィンを呼び止めた。

 振り返ると、レオスが薄ら笑いを浮かべていた。


「神子様といえど、思春期だもんな。わかるぜ。にしても、嘘下手すぎ」


「――――っ!!」


 フィンは耳の先まで真っ赤になり、


「レオスさん!私は――」


「あー、はいはい、科学的観点で見つめてたんだろ? だよな?」


 気持ち悪い笑みを浮かべて言葉を被せるレオスに、


「知りません! 酷いです!」


 ぷんぷんと頬を膨らませながら部屋を出るフィン。


「はは……あー、ガキ相手にからかいすぎたか」


 レオスは少し反省しながらつぶやいた。

ここまでお読みいただき、ありがとうございます!

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