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最強にして記憶喪失。だが神子様は蛮行を許さない!  作者: 死神丸 鍾兵
第二章 〜無法のスラム〜「ウェイシェム編」
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第22話:ゾディの最後

〜前回までのあらすじ〜

記憶を失った最強の男・ロアス。

少女フィンと戦士レオスと共に、記憶の手がかりを求め旅立つ。

辿り着いたのは、法なき犯罪都市ウェイシェム。

そこで出逢った妖しき女性ゼラにゾディ討伐の誘いを受けた。そして、遂にウェイシェムの支配者ゾディ・アークと衝突!ゾディの″最強の生命体″が目覚める…!!

 爆風と共に、ドラコ・オムニアの巨体が地面に墜ちた。


 街全体が揺れたかのような衝撃。荒れ果てた石畳が砕け、黒煙が空へと昇っていく。


 その中心に、黒き鎌を携えた男――ロアスが立っていた。


 彼がその手をゆっくりと下ろすと、闇の鎌もまた霧のように掻き消えた。


 静寂の訪れ――そして。


「す……すごい……これが……ロアス……」


 しばし沈黙の後、フィンが小さく呟いた。震える声は、畏怖と安堵、そしてどこか切なさを含んでいた。


 ロアスを見つめるその瞳には、“何か”得体の知れぬ存在を見ているような光が宿っていた。


「勝った……いや、あいつが……“圧倒した”……化け物を……!」


 レオスは呆然と立ち尽くしていた。拳を握る手が、微かに震えている。


 その言葉にロアスは応えない。ただ、真っ直ぐに立っていた。血と硝煙に塗れ、焦げた大地の上で。


「……はっ……は……」


 地面に膝をついたままの男がいた。ゾディ・アーク。その表情は、敗北ではなく、茫然自失に近かった。


 愛した者を喰らい、研究を重ね、街ごとを実験場に変えて創り上げた、世界に一つしかない生命体。


「俺の……全てが……あいつに、たった一振りで……」

 その視線はロアスを捉えたまま、震えるように呟く。


 呻くように、血を吐きながら笑った。

「ククッ……あはは……そうか……これが、最強か……!」


 ゾディの肩が震えた。笑っているのか、泣いているのか、それすらも定かではない。


 だがその瞬間だった――


ブシューーー!


 ドラコ・オムニアの死骸から、突如として漆黒の瘴気が噴き上がった。地響きを伴い、大気を焼くような衝撃が広がる。


 それは、爆発的な毒の波動。濃密な死の気配。


「ッ……!」


 ロアスが身構えた瞬間、瘴気は魔竜の死体が堕ちた街の中心から風のように四方へと広がっていく。見る間に、崩れた建物が霞み、飛んでいた蝙蝠が空中で痙攣し、再び地へと堕ちた。


 その瘴気は、生命を溶かすものではない。


 だが、深く肺に入り込めば、やがて心臓を止め、呼吸を奪い、全身の機能を静かに蝕む。


 それは、“最強の生命体”の最期が生んだ、自然の摂理すら越えた毒――。


 そして、最もその中心にいた男、ゾディの身体が徐々に蝕まれていく。


「ク……くく……なるほどな……そういうことか……この瘴気こそが……人造魔竜アイツの…″副産物″…」


 皮膚が青白く変色し、目の焦点が定まらなくなってきた中、ロアスを見た瞬間、ゾディは突如として息を呑み、何かに気づいたように言葉を放った。


「ああ……その容貌……この強さ……禍々しき漆黒の大鎌……まさか……」


 声が震え、血混じりの唾液が唇から落ちる。


「《メツレンノツカイ》…………」


 言い終わると同時に、その目は見開かれたまま動かなくなった。驚愕の表情を残したまま、呼吸が止まり、心音が失われる。


 だが、肉体はまだ生きているようにすら見えた。死んだとは信じがたいほどに、輪郭も、肌の質感もそのままだ。


 それが、この瘴気の正体――死と隣り合わせの、形を留めたままの死。


 その時、瘴気により、レオスの腕が痺れ、震え出す。


「ロアス……これ……俺にも来てる……身体の中が……焼けるみたいだ……」


 レオスが自らの腕を押さえて呻いた。肌も青白くなり、汗が噴き出している。

 フィンもまた、口元を押さえて膝をついていた。


 ロアスもまた、喉の奥に重苦しさを覚え、視界がわずかに歪む。


 瘴気は、既に彼らの体内を蝕み始めていた。


(まずい……このままでは……)


 それでも、ロアスが一歩を踏み出そうとした、その時――


 「……いや……やめて……死なないで……!」


 フィンの悲鳴のような叫びが響いた。


 その手が震えながら、レオスに伸びた――否、祈るように掲げられた。


 その瞬間だった。


 ――ふわり、と。


 まるで空から降り注ぐように、淡い光が彼女を中心に広がった。


 それは、ただ、清らかな光だった。

 大地を包み、瘴気を祓い、命を抱くように、優しく――。


「な、んだ……これ……」


 レオスの顔色が徐々に戻り、身体から毒が抜けていく感覚が走る。


 ロアスの呼吸も落ち着き、濁っていた視界が澄んでいく。


 フィンの眼は虚ろだったが、それでも意識は失っていない。


「フィン……おまえ……」


 レオスが呟くように言った。


「わからない……私、ただ、怖くて……でも、助けたくて……」


 フィンは震える声でそう答えた。力の正体も、なぜ自分にそれが宿ったのかもわからない。だが今は――そんなことはどうでもよかった。


「ロアス、レオス……行こう。この力、多分長くは持たない!このままじゃ、また……!」


 彼女の言葉に、二人はうなずいた。


地下室は崩れ、灰と化していた。通ってきた通路も瓦礫で塞がれている。

3人は崩れ落ちた天井の瓦礫をよじ登り、静まり返った吹きさらしの外へと這い出た。

ちょっとしたお知らせです!

実は今回2025/7/24、プロローグをあとから投稿しました。

ロアスが記憶を失った瞬間を描いてます。

もし「最初から追いたい!」という方がいたら、ぜひ読んでみてくださいね!


ここまでお読みいただき、ありがとうございます!

少しでも楽しんでいただけたならいいねやフォロー、コメントをいただけると、とても励みになります。

皆様の応援が次のお話を書く力になりますので、よろしくお願いいたします

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