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王都の夜は静まり返り、宮殿の華やかな灯りも遠く霞んでいた。
だが、その一角にひっそりと佇む古い石造りの建物があった。
ここは国の魔導士が密かに研究と治療を行う施設――その中に、クリスは案内されていた。
「ここが、調整のための特別な部屋です」
魔導士のリーダーである白髪の男は、穏やかだが厳しい目をクリスに向けた。
クリスは鈍色の髪を揺らしながら、深く息を吸い込む。
「私は、普通に戻りたいだけなんです…」
魔導士は静かに頷き、装置のスイッチを入れる。
柔らかな青い光が部屋を包み、魔法のエネルギーが緩やかに満ちていった。
「チャームの影響を薄める腕輪だけでは足りない場合、こちらの調整が必要です」
男の声には、長年の知識と自信がにじんでいた。
クリスは緊張で手が震えそうになったが、覚悟を決めて言った。
「お願いします…」
魔導士は彼女の腕に触れ、優しく呪文を唱える。
青白い光が腕輪を通じてクリスの体内へと広がり、冷たくも心地よい感覚が波のように押し寄せた。
「魔法の影響が徐々に薄れていくはずだ」
魔導士の声が静かに響く。
クリスは目を閉じ、自分の中の感覚に集中した。
混乱していた心が少しずつ澄みわたり、まるで霧が晴れるような感覚があった。
「戻れるんだ…私の本当の気持ちに」
調整は時間がかかるという説明を受けたが、クリスの瞳には確かな希望が宿っていた。
部屋の外では、ジルとアントニオが待っていた。
彼らの心配そうな表情を思い浮かべ、クリスは小さく微笑んだ。
「きっと、これからが新しい私の始まりになる」
闇夜に包まれた王都の片隅で、静かな戦いは続いていた。




