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静かな学園の午後、庭の片隅。


クリスはベンチに座り込み、遠くをぼんやりと見つめていた。

彼女の細い指先には、前回ジルからもらった銀の腕輪がはめられている。

チャームの魔法を薄める効果を持つその腕輪は、クリスにとって特別なものだったが、同時に重い責任感の象徴でもあった。


「クリス」

ジルの声がそっと近づく。

振り返ると、ジルが手にもう一つ、似たような銀の腕輪を持って立っていた。


クリスの胸がざわついた。

「また…これ?」


ジルは静かに頷きながら、柔らかく微笑んだ。

「うん。前の腕輪も効果はあった。でも、まだ完全じゃない。魔法の影響は根深いから、これを重ねてつけることでより強く効くかもしれない」


クリスは視線をそらした。

「もう十分だと思ってた。私、これだけで頑張ろうって…」

その声にはどこか寂しさと戸惑いが混じっていた。


ジルは彼女の目をじっと見つめ、誠実に言った。

「君はよく頑張っているよ。でも、まだ心の奥に残る違和感や混乱がある。無理に変わろうとしなくていい。でも、これが助けになるなら、受け取ってほしい」


クリスは腕輪を見つめたまま、深く息を吐いた。

「また同じものをつけるのって、なんだか怖い。前の腕輪が無駄になるみたいで」


ジルはゆっくりと腕を伸ばし、もう一つの腕輪を優しく差し出す。

「決して無駄じゃない。むしろ、君の気持ちを取り戻すための大切な手助けなんだ」


アントニオも静かに隣に立ち、静謐な声で付け加えた。

「魔法は強いが、君の意志も強い。僕たちは君の味方だ。ゆっくりでいい」


クリスはその言葉に少しだけ頷き、差し出された腕輪に手を伸ばした。

「分かった。もう一度だけ、信じてみる」


ジルは微笑みながら、クリスの手首にそっと腕輪をはめた。

「ありがとう。これからもずっと、君の側にいる」


クリスの胸に、わずかな希望の灯がともる。

それはまだ揺れ動く不安と、確かな前進の証だった。


学園の静かな午後に、小さな決意が積み重なっていく。

クリスの心の変化は、誰にも見えないけれど確かに進んでいるのだった。

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