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初夏の柔らかな風が学園の庭を吹き抜けていた。

ジルとアントニオは再び街の外れにある、魔法具の専門店へと向かっていた。

あの店は静かで古びた佇まいだが、中には様々な魔法具が所狭しと並び、魔法の気配が満ちている。


「前回の腕輪は効果があったが、まだ十分とは言えない」アントニオが静かに話す。

「王子の状況はさらに緊迫している。もっと強力な魔法解除の道具が必要だ」


ジルも頷く。

「チャームの魔法は複雑で強力。完全に解くにはより精密で高度な魔道具を使わなければ」


二人は店の扉を押し開け、中に足を踏み入れた。

店内は薄暗く、棚には古書や小瓶、輝く石や精巧な機械が並んでいる。

店主の老人がゆっくりと二人に近づいてきた。


「おや、またお越しだな。前回の腕輪は役に立ったか?」老人は穏やかに微笑む。


ジルは深く礼をしながら答えた。

「はい。ですが、チャームの魔法は根が深く、まだ完全ではありません。もっと強力な解除道具を探しています」


アントニオも加えた。

「王子や関係者の感情を混乱させる魔法です。精度と威力のある魔道具が必要です」


老人はうなずき、棚の奥へと手招きした。

「ならば、こちらを試してみるといい」


彼が取り出したのは細身の銀製の腕輪で、中央に小さな深青の宝石がはめ込まれている。

宝石は微かに輝き、まるで波打つように揺れていた。


「これは魔法解除に特化した腕輪だ。前回のものより強力で、チャームのような感情を揺さぶる魔法にも対抗できる」


ジルは慎重に腕輪を手に取った。

「使い方は?」


老人は説明を始める。

「装着者の魔力に反応し、チャームの魔法を薄めるだけでなく、時間と共に魔法の影響をほぼ消し去ることができる。ただし、強力な魔法ほど効果を感じるまでに時間がかかることがある」


アントニオは腕輪をじっと見つめながら言った。

「時間がかかるとはいえ、王子やクリスの心を徐々に解放できるなら、価値は大きい」


ジルは微笑みながら答えた。

「この腕輪があれば、チャームの魔法の混乱から抜け出す助けになるはず」


老人はさらに続けた。

「だが、この腕輪は魔力を消耗する。頻繁な使用や強力な魔法の影響下では、効果が薄れることもある。だから装着者は無理をせず、じっくりと魔法の解除を待つことが重要だ」


ジルは頷き、アントニオも真剣な表情で同意した。

「我々も慎重に状況を見守りながら使わせてもらう」


老人は最後に注意を添えた。

「また、効果は個人差がある。強い感情の起伏や魔法の抵抗力によっては解除に時間が必要だ。だが使い続ければ、必ず良い方向に向かうだろう」


ジルは感謝の気持ちを込めて頭を下げた。

「ありがとうございます。これで、王子や関係者の助けになります」


アントニオも丁寧に礼を述べた。

「我々はこの国の未来を担う者だ。必ずや成功させよう」


老人は穏やかに笑い、二人を見送った。

「気をつけて帰るのだよ。また困ったことがあればいつでも来てくれ」


帰路の道すがら、ジルは腕輪をじっと見つめていた。

「これで、もう一歩進めるね」


アントニオは少し先を見据えながら言った。

「王子だけでなく、クリスも、チャームにかかった者たちも。混乱から解放される日が近い」


ジルはふと立ち止まり、ふわりと笑みを浮かべた。

「本当の気持ちを取り戻す日。それが来たら、みんなが自分の人生を選べる」


アントニオも穏やかに笑った。

「その日まで、我々は支え続ける」


春の風に乗って、二人の決意は静かに広がっていった。

新たな魔道具と共に、チャームの魔法という呪縛を解く戦いは続く。

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