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王宮の広間に、柔らかな朝の光が差し込んでいた。
ロナルド・メイソンは剣の手入れをしながらも、頭の中は混乱と決意に満ちていた。
「チャーム……あれは、俺の意思を奪っただけの魔法だった」
かつては不意に胸を焦がされた、見知らぬ女性への想い。
しかし今、ロナルドははっきりと気づいていた。
「俺が本当に愛しているのは、幼なじみのリディアだけだ」
幼い頃から共に剣を交わし、互いを支え合ったリディアの姿が脳裏に鮮明に浮かぶ。
彼女こそが、心から大切にすべき存在だった。
文官長の息子サム・プリスコットもまた、書庫で書類を整理しながら自問自答を繰り返していた。
「心があれほど騒いだのは魔法のせいだった……。だが、今の俺には確かな想いがある」
彼の婚約者は、穏やかで知性的なエリーナ。彼女と過ごす日々の中で、深い信頼と愛情が育まれていた。
「俺はエリーナを裏切らない。どんな魔法があろうと、俺の心はここにある」
サムは胸に手を当て、静かに決意を固めた。
一方、宰相の息子デビッド・フォックスは宮廷の中庭で独り佇んでいた。
チャームの影響で一時は別の女性に惹かれたが、その感情は次第に色褪せていった。
「俺の未来は、婚約者のセリーナと共にある」
セリーナの優しさと誠実さに触れ、デビッドは心の奥底からそう確信していた。
「魔法が何をしても、俺たちの絆を壊すことはできない」
その日の夕刻、三人はそれぞれの婚約者のもとへと足を運んだ。
ロナルドはリディアの前で膝をつき、真摯な言葉を紡ぐ。
「リディア、俺は戻った。ずっと君を愛していたんだ」
彼女は涙をこぼしながらも、彼の手をしっかり握った。
「私もずっと待ってたわ」
サムとエリーナの再会は静かで温かかった。
彼は真剣な眼差しで言う。
「エリーナ、俺は君だけを愛している。魔法に惑わされて申し訳ない」
エリーナは微笑み、彼の頬に手を添えた。
「それがあなたの本当の気持ちなら、私は信じるわ」
デビッドとセリーナは庭園のベンチに座り、互いを見つめ合う。
デビッドは少し照れくさそうに笑いながら言った。
「セリーナ、戻ってきたよ。これからもずっと一緒に」
セリーナはその手を握り返し、静かに頷いた。
三人の青年たちは、魔法の幻想から覚め、本来の愛情と絆に気づいたのだった。
それぞれの未来に、確かな光が差し込んでいる。
ただひとり、王子を除いて。




