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深い夜の帳が宮廷を包み込む中、王子ダレンは広間の窓辺に立っていた。

冷たい夜風がカーテンを揺らし、月明かりが彼の顔を淡く照らす。


「俺は一体、何をしているのだろうか……」


心の中で繰り返すその問いは、いまの自分を最もよく表していた。

先日、ついにジュリエットに婚約破棄を申し出たが、それは自分の真意からなのか、それとも魔法のせいなのか。


ダレンは腕を組み、唇を噛み締める。

「クリスに惹かれている――それは間違いない。だが、それはチャームの魔法のせいかもしれない」


彼が感じる「愛情」は本物なのか、それとも魔法が見せる幻なのか。

その境目がわからず、気持ちは揺れ動いていた。


日中、宮廷の廊下を歩きながらも、頭の中は混乱した思考でいっぱいだ。

家臣や侍女たちが通り過ぎるが、ダレンの心は遠く隔たった場所にいるかのように感じられた。


「俺は王子としての責務を全うしなければならない。だが……」


彼は何度も自分に言い聞かせるように繰り返した。


「本当にジュリエットを傷つけていいのか? それとも、ただ魔法のせいで勝手に感情が動いているだけか?」


夜が深まると、彼はジルとの短い面会を持った。

「ジル、教えてくれ……俺の心は本物なのか、偽りなのか?」


ジルは静かに見つめ返す。

「王子様、それは私にもはっきりとは言えません。ただ、魔法の影響が薄れた今、あなたの心が迷っていることだけは確かです」


「迷い……か」


ダレンの目はしばし暗く沈み、やがて決意の色が垣間見えた。


「ならば、自分の気持ちを見極めるしかない。真実の愛が何か、俺自身が知るために」


だが、その決意の裏には強い孤独があった。

彼は王子であるがゆえに、自分の感情を自由に語れず、常に国や民の目に晒される立場にあった。


「誰にも弱音は吐けない……俺はただ、どうすればいいのかわからないだけなのに」


窓の外に目を向けると、満天の星空が広がっていた。

その無数の光は、王子の迷いを静かに見守っているかのようだった。


そんな彼の姿は、周囲の者たちにも微妙な影響を及ぼし始めていた。

スティーブ・パンジョンは、王子の不安定な様子を察知しつつも、自分の婚約問題に重ね合わせて考えていた。


ミシュリーヌ夫人は、夫ユベールの不在を利用しながら、この不穏な空気を自分の思惑に生かそうと策略を練っている。


そしてジルは、王子の真意が少しずつ明らかになるのを待ちながらも、自身の役割に思いを馳せていた。


揺れる心はまだ霧の中。

しかし、その先にある答えを探すべく、王子は孤独な戦いを続けるのだった。

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