表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/32

17

宮廷の大広間を抜けて、夕暮れの庭園に佇む王子ダレンは、深いため息を漏らした。

最近、胸の奥でざわつく感情が静まらない。

婚約者ジュリエットとの約束は重く、未来は明確に見えているはずなのに、心は見えない糸に引き寄せられているようだった。


「クリス……あの少女は、何故あんなにも俺の心を乱すのだろう」


彼は視線を庭園の遠くに向ける。

かつて彼女にかけられていたチャームの魔法が少しずつ弱まっていることに気づいていたが、その変化にクリス自身は気づいていない。


むしろ彼女は、何かが変わったことを自分でも感じながらも、その理由がわからず戸惑っているように見えた。


「自分の意思で変わろうとしているのかもしれない」


庭園の石畳を歩くクリスの姿が見えた。

彼女の目には以前ほどの不安や混乱がなく、少しだけ強さが宿っている。


ダレンの心はそれを見て揺れた。


「彼女は、知らず知らずのうちに自分を守る力を得ているのかもしれない……」


その夜、宮廷の書斎でジュリエットが静かに話しかけた。


「ダレン、あなたの心が揺れているのはわかっているわ。クリスのこと……でも、王子としての務めを忘れないで」


ダレンは静かに頷いた。


「君との約束は大切だ。だが、自分の気持ちに嘘はつけない」


彼は心の中の葛藤を押し殺しながらも、目の前の現実と向き合っていた。


翌日、ふとした機会にクリスと顔を合わせたとき、彼はその変化に改めて気づいた。


「クリス、最近どうだ?何か変わったように見える」


彼の問いにクリスは首をかしげた。


「私……よくわからないけど、なんだか前よりも心が少しだけ楽な気がします。何かが変わっている気がするのに、それが何かはまだ掴めません」


ダレンはその言葉に胸が締めつけられる思いだった。


「知らず知らずのうちに、自分で変わろうとしている君を見ていると、俺も何かを変えなければいけないと思う」


二人の間に沈黙が流れたが、その空気は以前とは違い、穏やかでありながらも新たな始まりの予感を秘めていた。


夕暮れの空が深く紅く染まりゆく中、王子の心はまだ揺れている。

しかし、その揺らぎはやがて強さへと変わっていく予兆でもあった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ