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深い夜の帳が降りる頃、私は図書室の奥、ほとんど人が来ない一角でアントニオと顔を合わせていた。

扉の向こうからは学園長の足音が遠ざかり、やっと静けさが戻る。


「ジル、君に話したいことがある」


アントニオの声は低く、真剣そのものだった。


「チャームの魔法についてだ。普通の恋の魔法とは違う。無意識に周囲の感情を歪め、強力に人の心を惹きつける力を持っている」


私は黙って頷いた。

彼の話は、これまで聞いたどんな噂よりも具体的でリアルだった。


「昔から知られていた魔法だが、使い手が無自覚の場合、その影響はコントロールできない。まるで心の中に見えない糸を張り巡らせるように」


「チャームにかかった者は、自分の意志とは別の感情に翻弄される……」


私の言葉にアントニオは静かに頷いた。


「だがもっと厄介なのは、魔法の中心にいる者自身がその力に気づいていないことだ。自分が他人の心を操っているなんて、想像もしていない」


彼はゆっくりとした口調で続ける。


「例えば、クリス・ビッジのケースだ。彼女は貧しい家の出身だが、無自覚のまま強烈なチャームを放っている。周囲の男たちは皆、彼女に惹かれてしまっている」


私は苦い溜息をついた。


「その影響は、家族や婚約者たちの関係にも及んでいる。スティーブの婚約の揺らぎも、その一端だろう」


アントニオは目を細めた。


「だからこそ、慎重に事を進めなければならない。ミシュリーヌ夫人も事態を重く見ている。彼女は表面上は平静だが、内心は不安でいっぱいだ」


私は静かに決意を語った。


「このまま放置すれば、多くの人が傷つく。私たちは何とかして、この魔法の影響を緩和しなければならない」


アントニオは微笑み、握手を差し出した。


「共に行動しよう。ジル」


私はその手を固く握り返した。

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