第六章 夜の学校へ侵入
ここは放課後の音楽室、槍部の部室だ。
そこで南と桜彩は悶々とした日々を送っていた。
部長の結城水が上級生3人をブロックで殴って停学になったからである。
「ヤバいよオアシス先輩!どうしよう?水ちゃんの停学明けを待っていたらすぐ文化祭が来ちゃう!」
南はそわそわと体を動かしながら焦ってそう言う。
桜彩は少し考えるも良いアイデアが何も浮かばない。
2人で槍の演武を練習したところで部長の水がダメダメではおそらく廃部が確定してしまう。
土日に公園などで練習をやろうにも槍を校外に持ち出すことは校則違反となる。
そして、河川敷で拾った枝で代用しても強度的にほとんど役に立たない。
また、金もないためホームセンターなどで木材を購入することも出来ない。
ーーそう、詰みの状態である。
そうこうしているうちに武活動終了のチャイムが学校中に響き渡る。
「うっ、、もう時間だ、、どうしよう?」
桜彩がそういって焦りを見せる。
何も良いアイデアが浮かばないまま帰りたくはなく、2人とも帰り支度をなかなかせずにもたついている。
そうこうしているうちに窓の外を見るとちらほらと下校する生徒たちが見える。
「ヤバいよオアシス先輩!みんな帰っちゃう!」
「、、、みんな帰る?そうだ!」
桜彩が何かを閃いた。
「みんないなくなった夜の学校に忍び込んで練習するとかどう?」
一見真面目そうに見える桜彩の口から思いがけない提案をされ、南は少し驚くも嬉々として提案に乗った。
かくして槍部の夜の学校侵入が確定した。
決行は今夜10時、誰もいなくなる時間である。
ーーー夜10時
3人は上手く家を抜け出して近くの公園に集合していた。
「夜の学校に忍び込むってわくわくするね!」
「私、停学中に夜間侵入がバレたら退学になりそう、、」
「2人とも準備はいい?」
水と南はこくりと頷く。
西が丘高校は高い塀に囲われており、その上には有刺鉄線が張り巡らされている。
また、正門も厳重に閉ざされているため一見すると侵入は不可能である。
「オアシス先輩、どっから入ればいいの?」
南は西が丘高校を見渡してそう桜彩に問いかける。
「2人も生徒会室で聞いたでしょ?木島先輩の武勇伝、木島先輩が飛び蹴りで壊した塀がこの辺にあるハズだから」
そう言って校舎の周りを歩いていくと大人でも簡単に通れるサイズに塀が壊れていた。
校庭に侵入すると昇降口の前で南が付けていたヘアピン2本を取り出す。
「ピッキングなら任せてよ」
しかし、一階の窓を見ると大半が割られており、即座にピッキングが必要ないことに気付く。
「あ、やっぱりなんでもないっす」
3人は窓からあっさりと侵入に成功した。
西が丘高校の警備体制は非常に杜撰である。
3人はスマホのライトで廊下を照らしながら音楽へと向かった。
普通の女子高生であれば幽霊などに怯えるのかもしれないが、西が丘生徒にとっては昼間にいる不良の方が圧倒的に怖く、幽霊などは二の次である。
そうこうしているうちに無事に部室である音楽室へ到着した。
夜の学校に忍び込むワクワク感と不良がいない安心感からか3人は楽しく遅くまで練習に没頭する事が出来た。
そして、そんな日がしばらく続く事となる。