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第二章 砂漠にオアシス

日に日に結城水の絶望は深まっていた。

そう、入学からもう2週間が経過しているのに入部先を見つけられずにいるのだ。

それどころか体験入部も部活見学さえも出来ていなかった。


「もうだめだ、死のう、、」

そんな心の声が漏れていた。

授業終わりの放課後、今日もどこの部活にも顔を出すことなくトボトボと下を向きながら廊下を歩いていた。

そんな中、廊下の掲示板の前に一人の少女が立っていた。


「もうどこに入部すればいいんだよぉぉぉ!!!」

青紫色の癖のあるショートヘアを搔きむしる彼女の名は長崎(ながさき) (みなみ)

彼女もまた、勉強が出来ないだけの一般生徒である。

そんな中、水と南はふと目が合った。


「もしかしてアンタも部活決まってないの?」

南がそう問いかける。

「うん、もう怖くて部活見学もできてなくて、、」

「だよね、もう退学するしかないかな、、」

そうして二人の絶望的な会話が続く。


「もう何なんだよこの部活勧誘ポスターはぁぁぁ!!!」

掲示板には空手部、柔道部、少林寺拳法部の3つのポスターが掲示されている。

それぞれには部長と思われるいかつい男の顔写真がデカデカと印刷されている。

そのどれもが街であっても絶対に関わり合いになりたくない風体をしている。


しかも、文芸部が廃部になった今はもうその3つの部活しか選択肢がないのだ。

詰まる所、死ぬか死ぬかそれとも死ぬかの3択である。

そのような追い詰められた状況下で彼女たちは意気投合し、時折発狂しながら愚痴り合いを続ける。

それが数分続いた後に階段から一人の少女が降りてきた。


ピンク色の癖のあるセミロングヘアに前髪ぱっつんの彼女は緑色のリボンを付けている。

西が丘高校では青が1年生、緑が2年生、赤が3年生の色を表している。

そう、彼女は西が丘高校2年、元文芸部の八住(やすみ) 桜彩(さや)である。

「もしかして、あなた達も部活決まっていないのかしら?」


桜彩はそう2人に問いかける。

「そうです」と返す水と南。

「あはは、まともな新入生たちに出会えて良かった。この3択じゃ普通はどこにも入りたくないもんね」

桜彩はそう言って苦笑いを浮かべる。

「先輩、私たち文芸部に入りたかったんですけど、どうしたらいいですか、、?」

南が泣きそうな顔で先輩にそう告げる。


「ねぇ、良かったら私たち3人で新しい部活を作らない?3人いれば部活の新規申請ができるから」

桜彩は2人にとっては願ってもいない砂漠にオアシスのような返答をする。

「え、じゃあ私たちで文芸部を再建できるって事ですか!?」

「助かった、、」

南は歓喜、水は安堵の表情を浮かべる。


しかし、桜彩はこう続ける。

「多分、文芸部はダメだと思う。あなた達も部活紹介を見たでしょう?」

そう、空手部主将兼生徒会長の木島雄基が女々しいという理由で文芸部を潰してしまったのだ。

部活の新規申請には当然生徒会長である木島の承認が必要であるため、一度潰された文芸部を再建させるのは無理であろう。


「じゃあ、手芸部とかどうですか?」

「茶道部とかいいかも、、」

南と水がそれぞれやりたい部活を口に出す。

「ごめんね、多分その2つはダメだと思う。木島先輩が女々しいと言ったのは文芸部じゃなくて文化部だから」

そう、つまり文化部設立不可である。


2人はやや落胆しながらやりたい運動部をそれぞれ口にする。

「バドミントン部とかどうですか?」

「卓球部とかどうでしょうか?」

しかし、それらも桜彩は多分ダメだと口にする。

そして、その理由を指差す。


なんと、部活紹介のポスターを見ると部活動の部が全て武に変えられているのだ。

そう、つまりは武道系の部活以外設立不可である。

3人が必至で話し合いを続けるも武道系の良い部活は思いつかない。

「そもそも私たち誰も武道経験者がいないし、、」

南が落胆しながらそう言う。


「通信空手部とかどうかな?私たちで空手の通信教育に申し込んで部室でやるとか」

水がそのような提案をする。

「多分、空手部主将の木島先輩に殺されると思う、、」

桜彩は苦笑いをしながらそう答える。

「うーん、通信剣道とか通信弓道とかあればいいのに!」

南がそう発言する。


それに対して桜彩は閃いたような表情を浮かべる。

「そうか、武道って何も素手じゃなくても良いんだ!」

桜彩はそう言い放ち、水は「私たちでも出来る武器術ってあるかな?」と考え込む。

「先輩、チャカ部とかどうですか!チャカがあればどんな不良でも倒せます」

南がさらっとめちゃくちゃな提案をする。


「拳銃は日本じゃ簡単に入手できないわ、それにあなたって拳銃の事をチャカと呼ぶのね、、」

そういって桜彩はまた苦笑いを浮かべる。

「素人でも簡単に使える武器って何かないですか?」

水がそう質問する。


桜彩はまた閃いたような表情を浮かべてこう答える。

「戦で戦力になる兵士を育成するには素手なら3年、剣なら3か月、槍なら3日と聞いた事があるわ」

水と南はそれだという表情で目を輝かせる。

そう、槍部結成である。

南は安堵からか桜彩に抱き着き「私たちのオアシス的存在、オアシス先輩~」と割と失礼な事を言う。


桜彩は南の頭を優しく撫でながらこういった。

「ところで部長と副部長は誰がやるの?」

2人は特に考えてなくて唖然とする。

結局誰もやりたがらなかったので醜い押し付け合いの末にじゃんけんで負けた順で水が部長で南が副部長になった。

「さて、部長と副部長が決まったことだしそろそろ行きましょうか」


生徒会室(ほぼ暴力団事務所)へ。

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