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第十章 文化災

文化祭の時は迫った。

西が丘高校の文化祭は毎年死人や怪我人が出ており、文化災と呼ばれている。

各部活の出し物としては基本的にノールールのデスマッチが行われる。

そんな中で槍部だけは平和な演武で乗り切ろうとしていた。

そして、今日も部室で演武の練習に励んでいた。


ガラガラピシャーンッ!!!

そこに突如として勢いよく部室のドアが開け放たれた。

廊下に立つ男は木島雄基である。

「西が丘で演武をするなら槍を直接相手に当てろ!」

ピシャンッ!

そう一言だけ言って木島は去っていった。


「え、あ、、え?」

槍部一同は困惑する。

「無理だよオアシス先輩!私は2人を刺せないよ!」

そういって南は声をあげる。

「あの、私もちょっと、、、」

水もそれに同意する。

「でもやらないと何されるか、、、」

桜彩は困った顔をする。


3人が意気消沈していると時間は無情にも過ぎ去っていく。

そんな中、ドアをノックする音が鳴り響く。

「はい、どうぞ」

桜彩がそう返事をする。

「失礼します」

そう言って入った3人組は神崎 杏奈とその取り巻きであった。

そう、水をいじめた3人組である。


「何しに来た!!!」

南が声を荒げて槍を杏奈に向ける。

「その、謝りに、、」

バツが悪そうにそう言った。

「刺すぞ!」

南は容赦なくそう返す。

「ちょっと待って南ちゃん、話聞いてあげて」

水がそう言って南を制止する。


「ごめんなさい!」

3人はそう言ってその場で全員土下座した。

「明ちゃんの件も水ちゃんの件も本当にごめんなさい」

杏奈は頭を床に擦り付けてそう言った。

「、、、うん」

水は小さな声でそう呟いた。


「金子の件もホントにごめん!アイツに脅されて彼女やってただけなの!」

杏奈はひたすら謝罪と弁明をする。

なんと彼女の神崎すら金子の死を悲しんでいないのである。

ちなみに木島は「俺のATMが壊れた!」と嘆いていた。


「へえ、言いたいことはそれだけ?」

親友を車椅子と不登校にさせられた桜彩はゴミを見る目で睨みつける。

「ひっ、、ごめんなさい」

3人がそれに怯える。


「あの、神崎さんたちその怪我どうしたの?」

水が3人の怪我に気づいて優しく声をかける。

「これはその、3対1なのに水ちゃんに負けたことが部の恥さらしだとかでリンチに遭って退部させられまして、、」

これはかなり悲惨な状況である。

もう行ける部活がパワハラ柔道部か槍部しかないのである。


「もし、よかったらその、槍部に入りませんか?」

それを察した水がすごく優しい言葉をかける。

「え?」

一同が全員驚愕する。

「い、いいんですか?ウチは水ちゃんに酷いことをしたのに」

杏奈が泣きそうになりながらそう言った。

「あ、なるほど!演武で刺す用の敵か!」

桜彩はポンと手を打って納得の顔を浮かべた。

「なるほど!」

それで南も理解した。


「え、私そんなつもりじゃなかったんだけど、、」

水がちょっと困惑する。

ただ仲の良い二人を刺すより杏奈たち3人を刺す方がマシだと気付く。

「あ、ウチら刺されるんだ、、、」

そう、万事解決である。



ーーーー文化祭当日。

西が丘の文化災は出店が酒とつまみを売っているところがほとんどである。

そう、未成年だから飲酒してはならないという概念が西が丘にはないのである。

また、文化災は一般開放しているが、怖すぎて誰も来校する者はいない。


そして、文化災のメインイベントは体育館(通称コロッセオ)で行われるデスマッチである。

ペンタゴンと呼ばれる有刺鉄線で囲われた五角形のリングが体育館中央に位置する。

そこで行われるデスマッチを見て誰が勝つか掛けながら酒を飲むのが文化災の醍醐味である。


水たち槍部はそのデスマッチの前座として演武をすることとなっている。

つまり、それさえ乗り切れば文化災は生き抜くことが出来るのだ。

まず、最初は長崎南VS神崎の取り巻きその1である。


演武とは言え木島の命令により実際に相手に槍(箒の柄)を当てるため、実戦に近くなる。

また、決まった動きをしないため実質的な模擬試合である。

開始のゴングと同時に南は相手の槍を外側に払い、踏み込みと同時にみぞおちに刺した。


容赦がない。

相手は一撃でダウンし、歓声が湧きたった。

「いいぞもっとやれ!」「追い打ちをかけろ!」「殺せ殺せ」


「何これ、怖い、、」

部長の南はその空気感にちょっと引いていた。

続いて八住桜彩VS神崎の取り巻きその2である。


試合開始前から桜彩はゴミを見るような怖い目をしている。

親友を車椅子と不登校にさせられた恨みが凄いのだ。

開始のゴングと同時に相手の小手に思いっきり槍を当てる。


あまりの痛さに相手は槍を落としてしまう。

そこへすかさず槍で滅多打ちにする。

相手は頭を抑え、その場に蹲る。


再び会場が歓声で沸き立つ。

「もっとやれもっとやれ!」「頭カチ割れ!」「殺せオラ!」

怖すぎる、水は結構引いていた。


最期は結城水VS神崎杏奈である。

水は槍を持つ手が震えている。

ゴングが鳴ったが2人ともすぐには動かない。


・・・。

「こっちには後ろめたさがるけど、やらないならこっちから行くよ!」

そういって杏奈は槍を振って攻撃を仕掛ける。

それを水は槍でガードする。


杏奈が猛攻を仕掛けるが全部防いで見せた。

そう、西が丘を生き抜くために独学とは言え本気で槍の稽古をしていたため水も強いのである。

「水ちゃんやっちゃえー!」

南がそう声をかける。


「おい何してんだ殺せー!」

木島が叫ぶ。

それに応じて水は突きで一気に攻める。

杏奈は受けが間に合わずに喉に思いっきり食らって有刺鉄線まで吹き飛んだ。


これには木島も大喜びで拍手をする。

木島の拍手に釣られて会場が拍手に包まれる。

そう、水たち槍部3人は何とか文化災を乗り越えたのである。


「やったね!」

嬉し涙をながして3人は抱き合った。

西が丘に入学した時は絶望していた水も南も今は立派な西が丘の生徒である。

これからも3人を数々の困難が襲い掛かると思うが、きっと乗り越えていけるだろう。

ご愛読ありがとうございました。

これにて『内気な少女が不良校でサバイバル生活を送る話』は一先ず完結です。

そのうち他の作品も投稿していくつもりなので次回作にご期待ください。

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